ユーラの気持ち
病院から帰宅してレナートとマルクと四人で食事をした。
「サマーキャンプ?」
「うん、色々な年齢のこどもたちが集まるから楽しいんじゃないかってアキムが教えてくれたんだ。」
「へえ…。確かにそれは面白そうだけど。マルクとレナートは行きたいの?」
「うん、今まで友達がいなかったから行ってみたいと思ってる。」
「僕も、兄上以外の人とあまり話したことがないから行ってみたい。」
「ユーラ、どう思う?」
「…二人が行きたいのなら。」
「危なくない?」
「君と行くよりは安全だと思うよ。少なくとも野生の兎やキノコをとって食べたりはしないだろうしね。」
「…よし、じゃあ許可をだそう。いつからいつまで?」
「明後日から一週間なんだ。」
「ちょうど私が出かけている間だね。うん、じゃあさっそく明日用意をしないと。自分の服や荷物はある程度用意できるよね?」
「うん、ただ、足りないものもあるんだ。」
「そしたらそれは兄上に頼んで用意をしてもらおうね。」
「うん。」
キャンプの話をしてから、二人は寝る前に一緒にいたいと僕とユーラにせがんだ。ユーラが枕元で冒険小説を読んでくれた。
ユーラの声が心地よくて僕もあやうく寝てしまうところだった。
「…リネア、明日の準備をしないと。」
ユーラが僕の頭を撫でて起こした。
「ありがとう。」
「コーヒーでも入れようか。」
「うん…。」
「ユーラが病院で言った話さ、びっくりしたよ。セルも…。あんなふうに、いつから思っていたの?」
「ランク王国に集まった時にセルゲイに言われたんだ。君をうちの家族の問題に巻き込むべきじゃないって。…それからこんな状況を利用した婚約は私が望むものじゃないだろう?って…。」
「頭をガツンと殴られた気分と言うか…。まさかセルゲイにそんな事を言われると思ってなかったんだよ。あまりに彼の言葉が正論すぎて何も言い返せなかった。以前の私ならそんな言葉も気にしなかったかもしれないけど、君といて私たち兄弟はだいぶ変わってしまったらしい。」
ユーラが優しく笑った。
「…だからって君との婚約や結婚を諦めた訳じゃないから。ただ、ちゃんとフリッツと戦って勝ちたいって思っただけ。」
「…ユーラ…ありがとう、私の事をそんなふうに思ってくれて。」
「…セルゲイにも言ってあげて。彼が一番変わったと思うよ。」
「うん…。」
「ユーラ、ニコちゃんを治すのが最優先課題だというのが家族の共通認識だと思っていいよね?」
「もちろん」
「その為なら信頼できる人間なら守秘義務を破ることを許してもらえる?」
「…いずれ分かることだから。ただ本当に限られた人にしてほしい。」
「うん。」
「私は治ると信じたい。そしてもし治らなかった場合はユーラの側にいたいと思ってる。私を利用してくれたらいい。」
「リネア…。」
「ただしまともな皇太子妃にも王妃にもなれないことは諦めて欲しい。」
「それはいいけど、フリッツは?君は彼を諦められるの?」
「…諦められなくても、許してくれる?」
「…浮気するとか?」
「…それはないと思うけど…。フリッツを好きなままユーラの側にいるかもしれない。」
「…君が側にいてくれたら他に何も望まないよ。…君はどんな契約内容でサインをするつもり?」
「…まだ決めかねてる。だけど最善をつくすつもりだよ。」
「…ありがとうリネア。」
ユーラが僕を抱き締めた。
「ユーラ、一緒に頑張ろうね。」
「そうだね…。私も頑張るよ…。」




