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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
エンゲル王国編
211/350

家族会議

各国から飛行機をチャーターして全員があつまるのがこちらの夜になるのが分かった。


僕とマルクとレナートとニコちゃんの四人で近所の森へ散歩に出かける事にした。

「…体調は?」

「いいとは言えないけど大丈夫だよ。」

「無理しないでよ?」

「老人じゃないんだから。」

「病人でしょ。」


「リネア、父上とも恋人なの?」

レナートが僕に質問をする。

「…とも?」

「リネアは兄上さまと恋人になる予定なんだよ。」


「…リネア、そうなの?」

「…恋人ではないよ。」

「…ふうん?まあミハイルが来たらわかるな。」

「…。」


「レナート、父上はリネアのお父さんになったんだよ。だからリネアはレナートとマルクのお姉さんだよ。」

「聞いたよ。でも…ね。」

「うん、なんか変な感じ。リネアは友達だもん。」


「そう。リネアと何をして遊んだの?」

「山奥に連れていかれてね、外で寝たり、食事ももらえなくて…。」

すごい表現だ。まるで僕が罰を与えたように聞こえる。


「それはとても楽しそうだね。」

「楽しかったんだよ、また行きたい!」

「また行くよね?!」

「うん、行こうね。」



別荘から三十分ほど歩くとさらに郊外の景観に変わってきた。

ランク王国の初夏の森が気持ちいい。たくさんの花がさいて、空の色も古い石積の建物も美しかった。


僕たちは広い公園にブランケットを敷いて遅めのランチを食べる事にした。

バケットにハムやチーズ、サラダを挟んだものと色々なフルーツとカフェオレ、ジュース。それから焼き菓子をつけてもらった。


「パンがおいしいっ!」

「ちょっと硬い…。」


「うん、でも美味しいね。ピクニックはリネア達とエンゲル王国で旅行して以来だね。」

「うん。ニコちゃん、これからも二人を連れてってあげてよ。」

「…そうだね。」


レナートが僕の隣に座って僕の手を握った。

「リネアも一緒に来てくれる?」

「…そうだね。しばらくは一緒にいようと思う。」

「本当に?夏休みだけじゃなくて?」

「うん。半年くらいはいようかな?…父上が良いっていったら。」

「…リネア?」


「…ニコちゃん、こっちに留学先変えてくれる?心配だからこっちにいたいんだ。」

「…だけど…。」

「回復したらメルア大陸に行くから。お願い。」


「…いいの?」

「うん。」

「…ありがとう。なんか、…ごめん。」


「謝らなくていいから早く元気になってよ。そんなニコちゃんじゃ楽しくないよ?」

「分かった。努力する。」





夜、子どもたちが寝静まった頃、アリーナがまず最初に、それからセルとユーラがほぼ同時に到着した。


「リネア…。迷惑をかけたね。」

「ユーラ、いいからとにかく中へ。みんな待ってる。」

「ああ。」


僕はみんながダイニングに座る間、お茶の準備をしていた。僕のいないこの4人ではまるで通夜のようだ。

「リネア、間がもたないから早く戻ってきて!」

「ニコちゃん、自分の子どもだよね?私は部外者だよ?」

「早くっ。」


何故か僕はニコちゃんの隣に座る事になった。


ニコちゃんが話をはじめた。

「…まず一番はじめに、今日ここへ来てもらった理由だけど、僕は今、癌を患っていることが先日分かった。転移も認められたからこれから精密検査を受ける予定だ。」


ユーラと僕以外の二人が呆然としている。


「今後どうなるか今のところはっきり言えないけど少なくとも当面僕は大統領としての仕事をこなすのは難しいと思う。先が長くない可能性もある。」


「…そんな…。」

アリーナが目を潤ませて震えている。


「…今後の事なんだけど、まず、身内の話から。マルクとレナートはまだ小さく、まだまだ親の世話が必要だから彼らの母親に会いにこの国へ来た訳なんだが…。彼女にはまったくその気がないことがわかり残念だけど昨日離婚した。」


「えっ!?」

全員がビックリした顔でニコちゃんを見た。


「セルゲイにもつらい思いをさせたよね。ごめんね…。」

「その…何て言っていいか…。」


「とりあえず、その話はいったんこれくらいにして、問題は国の事なんだ。」

さらっと流せる話なのか?僕以外のみんなはあまり気にしていないみたいだけど…。


「今僕に何かあると情勢不安になるのは間違いないだろう。リスラ共和国の周辺諸国はスモーランドやエンゲル王国なんかとは違い癖の強い国ばかりだ。側近にある程度短期間なら任せる事はできても大統領をやれる器のある者は現状一人を除いていない。ただ…。まだ成人前で選挙権もない…。」


ユーラか…。


「そこで、僕は賭けにでてみようかと思ってる。」

「賭け?」


「うん…。王政復古だよ。」

「まさか…共和制を王政に戻すつもりですか…?」


「そう。国際条約にも加盟したし、ある程度王政の諸国からも協力が得られるんじゃないかと思って。王政になれば僕に何かあってもミハイルが代わりを務めてくれる事ができるからね。しばらくは安泰だろう。僕が動けるうちがチャンスだと思っている。」


ユーラを僕は見た。

ユーラも僕を見る。凄く複雑な顔をしている。

そりゃそうだ…。


「アリーナは僕の状況をヴィルフリートに伝えて欲しい。時がきたら改めて連絡をするから。」

「セルゲイ、君はエンゲル王国で約束通り頑張っているからそのままでいい。ただ…頼みがあるんだ。」


「頼みですか?」

「うん。チャーリーズの店をしばらく君に任せたい。」

「リネアは…?」


「リネアにはこちらに残ってマルクとレナートの世話をしばらくして貰う事にしたんだ。」

「…父上、私たちの事にリネアを巻き込まないでください。」

「セル、私が頼んだんだ。」

「リネア…?」


「私がニコちゃんの側にいたいって頼んだんだ。セル、お願い。私の代わりに店をお願い…。」

「…だけど…本来は僕がやる事なのに。」

「ううん。セルが頑張ってるのを私は分かってるから気にしないで。」


「ミハイル、あとは君だ。君に一番皺寄せがいく訳だが…。僕の跡を継いでもらえないか?君しかいないんだ。」


「…条件をのんでもらえるなら。私はリネアと婚約したい。」


「…そう来ると思ったよ。ただ、僕は以前みんなに集まってもらいレースの話をしている。自分の提示したものを全て覆すことになるから僕の一存では決めにくい。もっとも、ミハイルを選択したと彼女がいうならレースを終了できるけど。」

ニコちゃんとユーラが僕を見た。



…やっぱりそうなるか。

結局、僕は皇太子の婚約者になる運命なんだろうか?



「…ニコちゃんの回復が見込めず、且つ王政になってユーラの世襲が決まったら…ユーラと婚約する、それでいい?」


「兄上…ひどいです。リネアが、可哀想だ。」

「じゃあ私の代わりにセルゲイが継いでくれる?それならそれで構わないよ?」

「…それは…。」


「セル、ユーラ、今はそういう話はどうでもいい。それぞれができる事を全力でやろう。私にとって今リスラ共和国はスモーランドと同じくらい大切だと思ってる。国の混乱を招かない事、跡を継ぐ準備ができるようそれぞれ協力すべきだ。ユーラが国を背負っていくのに私が必要だと言うならそれは受け入れる。」


「…君は毎回ここぞって時に男前だよね。」

ニコちゃんが苦笑いをした。

「まあ男だったからね。分かった?ユーラ。」

「…。」

ユーラが無言で頷いた。


「とにかくニコちゃんは一刻も早く検査を受けて、適切な処置をして欲しい。」

「…はい。」


「アリーナは何かあったらまた呼ばれるかもしれないけどまずはヴィルに状況を伝えて欲しい。まだどうなるか分からないから国王様たちには言わないで。」

「ええ。…ありがとう、リネア。私、なんて言ったら…。」


「リネア…。フリッツの事は?」

「セル…まずはニコちゃんと内政が最優先だよ。私の個人の問題は後回しだ。」

「…。分かった。」

「とにかくニコちゃんが健康になればすべて元通りなんだ。まずはそれを期待しようよ?ね?」


「…そうだね。」


「さっ!話も終わった事だし、みんなでカードゲームでもしない?」

ニコちゃんがどこから持ってきたのかトランプを取り出した。

「…私は朝一番にエンゲル王国へ戻るので失礼します。」

「私もスモーランドへ戻りますから…。」


「私は残るよ、リネアも疲れただろうから寝るといい。」

「…私も残るよ。セルとアリーナは薄情だな。もう二度と会えなくなっても知らないよ?君たちの父親なのに…。」

アリーナとセルの二人がドアの前で止まった。



「リネア、彼らの態度はすべて僕の責任だよ。だから仕方ないんだ。」

「…確かにそうだけど何かあった時に後悔するのは彼らだよ?」


「リネア…ゲームをしたくないんじゃない。父親のこんな姿を見るのがアリーナもセルゲイやも辛いだけなんだ。リネア…。私を含めこんな弱った父をみるのは初めてで、みんな困惑してるんだよ。」


「…そうだったんだ…。ごめんね、二人とも。」


この後僕たち全員が夜が明けるまでゲームをする羽目になって、正直ニコちゃん以外全員が後悔していた。

ほとんどのゲームに勝ったニコちゃんは嬉しそうだった。



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