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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
エンゲル王国編
206/350

ニコちゃんの病気

僕たちがリスラ共和国について、出迎えてくれるはずのニコちゃんがいなかった。

補佐の人がユーラと話をしている。ユーラが微妙な顔をした。


「リネアちょっと…。」

僕は自分が使う部屋へユーラと入った。


「…どうしたの?何かあった?」

「…他言無用だよ。父が昨夜日倒れて今病院にいる。急性白血病と診断されたとの事だ。」


「…嘘…。」

あのニコちゃんが?



「…とりあえずすぐに病院に運ばれたから一命は取り留めたみたいだけど絶対安静で無菌室にいるから当面は面会謝絶だと言われた。このことは絶対に口外してはいけないよ。国の情勢に関わる。」

「分かった。」


「…私は至急父の補佐に入るからしばらくバタバタすると思う。君は最初に頼まれていたセルゲイの弟たちのサポートを頼んでもいいかな?」

「分かった。…ユーラ、大丈夫?」

「大丈夫。落ち込んでいる時間もない。せっかく一緒に来たのに一緒にいられなさそうで残念だよ。」

「…とりあえずお互い最善を尽くそう。私に何かできることがあったらいってね?」


「…ありがとう。いてくれるだけで心強いよ。父がある程度回復したらお見舞いに行こうか。」

「うん。」


ユーラは急いで補佐の人と別の場所にいってしまった。僕は屋敷の執事さんに呼ばれ子どもたちに会うことにした。





「先代の頃よりこの家で執事を勤めているマクシムと申します。リネア様のことはニコライ様より伺っております。」

「…よろしくお願いいたします。リネアです。」


マクシムさんは品のよいおじいさんという雰囲気だ。ニコちゃんの世話もしていたんだろうか?


「子どもはお父様の容態をご存知なのですか?」

「いいえ…。知らせておりません。」

「何故?」

「この事は絶対に知られてはいけないからです。私を含め本当に近い者以外には知らせていません。」

「…分かりました。」


部屋に入ると少年二人が立っていた。こちらを警戒しているのが分かる。

「こちらがマルクとレナートです。」

小さいセルゲイが二人って感じだ。可愛らしいけど…。


「初めまして。マルクです。」

「レナートです。」


「初めまして、リネアです。」


「…何しに来たの?」

マルクという兄が最初に質問をした。


「…何しに来たと思う?」

「知らない。僕たちの面倒でも見に来た?」

「まあそうみたいだね。」

「そんなのはいらないよ、僕たちはいつも二人でいたし、他人に面倒見てもらう必要なんてないから。」


「…じゃあさ、面倒みないから、一緒にご飯を作って食べたり遊んだりしない?」

「…そんな事で僕たちの気がひけると思ってる?いくら貰ってるのか知らないけど時間の無駄だよ。」

うわ…。セルそっくりだ。


「やってみなきゃ分からないじゃないか。確かに君たちが知らない奴と仲良くなりたくない気持ちは分かるけど、試してみようよ?」

「やだよ、リスラ語も下手だし。」

「じゃあ教えてくれる?」

「やだね。…もう行っていい?挨拶はすんだし。」


「うん、いいよ。」

「行こうレナート。」

「うん。」


レナートが僕にべーと舌を出しながら去っていった。


「…すみません、どの家庭教師にもあんな感じでして。」

「…彼らの母親はどこに?この一大事に呼び出せないんですか?」

「…そろそろ出かけて半年になるはずなので帰ってくる頃かと。」


「彼らが可愛そうだ。」

あんな小さいのに二人で…。


「私が親族になった事は知ってるんですか?」

「まだお伝えしていません。」

「…それはよかった。じゃあ、そのまま伝えないでください。」

「分かりました。」


「それから、彼らには側使えを与えず食事も自分たちで作るようにさせます。私がいる間は自由にしていいとお父様に許可を得ています。できれば郊外の森に連れて行きたいのですが許可をいただけますか?」

「…あなたが連れて行くのですか?」


「ええ。私が頼むものを用意してください。明後日に出発します。黙って連れていきますから内緒にしていてください。」

「…分かりました。」





夕食はもちろん子ども達に一緒にとる事を断られ一人で食堂で食べた。広いモダンなダイニング。ニコちゃんはいつもこんな所で一人で食べていたんだろうか?

大丈夫かな…ニコちゃん…。


「リネア、もう食べちゃった?」

「あ、ユーラ。お疲れ様。今丁度食べ終わったところだよ。…どう?仕事は。」

ユーラがかなり疲れた顔をしている。


「父は最近ずっと体調が悪かったらしくたくさんの仕事が残っていた。夏休み中には終わらないような案件もいくつもある。父の体調次第ではしばらくエンゲル王国には戻れそうもないな。」

「…そうなんだ。」


「まさかこんな理由で君と離れる事になるなんて…。」

「…ユーラ…。」

なんて言ったらいいんだろう?言葉がみつからない。



「…マクシムに聞いたよ。郊外に出かけるんだって?」

「うん。とりあえず彼らと交流してくる。強制的にね。」

「彼らはなかなか手強いみたいだよ。意地悪されないよう気を付けてね。」


「うん。ユーラ、セルゲイの母親ってどんな人?」

「…あまり関わりがないけど父の幼なじみだったって聞いてる。元々私の母親と結婚する前は彼女が婚約者だったらしい。私の母親に一目惚れした父が婚約を破棄して結婚してしまったとか…。」

「それで亡くなった後再婚したの?…複雑だね。」


「…そうなんだ。だから私たちは嫌われていたよ。」

「…そうなんだ。」




「リネア。コーヒーでも飲む?」

「うん。ありがとう。」


食事を終えたユーラはコーヒーを用意してくれた。僕たちはダイニングからソファーに移動した。


「リネア…。」

「うん?」

「離れているからって私が君を諦める訳じゃないんだからね。」

「…早く戻ってきてよ。」


「私には君しかいないから。」

「…。」


「ヤーパンもユーラと一緒に行きたかったなぁ。楽しみにしていたのに。」

「…新婚旅行にどう?」

「…ユーラの馬鹿…。」


「私は本気だよ。」

ユーラが僕の頬に触れる。


「リネア…好きだよ。」

「…。」

ユーラの顔が近くなる…。



僕はユーラの口を手で塞いだ。


「ユーラ…。待って。私にも時間が欲しい。」

「…。」

「ちゃんと考えるから、ユーラの事。今…流されたら…。自分が自分じゃなくなりそうで…。」

「リネア…。」

「…お願い。」


「分かった。」

ユーラが僕の頭を撫でる。

「待つよ。君が自分から私にキスしたいと思えるまで待つ事にする。それでいい?」

「…。」

僕は頷いた。



ユーラと離れる事に少しほっとしている自分と寂しい自分がいる。いったん距離を置いて考える時間ができてよかった。

辛い彼を支えてあげたいとも思う。だけど…。



とりあえず、今は与えられた役割に集中しよう。


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