リネアの誕生日パーティー
「誕生日おめでとう!リネア!」
クラッカーのシャワーをリネアがあびる。
物凄く嬉しそうだ。
「ありがとみんな!」
それぞれがプレゼントを渡しだした。
ミハイル弟は時計か…。ん?こいつ、同じのをつけてる!?どういうつもりだ?
ミハイルはエンゲル王国ブランドのカバン…。リネアの好きそうなやつだな。しかも高い物だ。
シャーロット様はやはり王国ブランドの靴…。こちらも男っぽくてリネア好みのデザインだ。
イーチェンという男は…
「レストランの食事券?!あの!?」
何かよくわからんがリネアが大喜びをしている。
やはり食い物が一番嬉しそうだ。俺の指輪より嬉しそうだな。
「僕からは、これ…」
ルイはランク王国のスカーフ。
「ありがとう。」
「シャーロットにも。お揃いで。」
ルイがシャーロットにも同じ物を渡す。
「…久しぶりだね、元気だった?」
「…ああ。」
シャーロット様が赤くなる。
「…どういう事?」
ミハイルもセルゲイもイーチェンもみんなぽかんとしている。
当然だろう、いきなり来た参加者がシャーロット呼ばわりして、しかも彼女にこんな顔をさせているんだから。
俺だってルイの話を初めて聞いた時はびっくりした。
ルイの初恋の相手がシャーロット様で、俺がエンゲル王国にいくっていったら彼女会いたさについて来たんだからな…。
彼女のこの反応を見る限り彼女もルイに気があるらしい。
確か彼女は遠縁の王族と婚約しているはずだが…。
「二人で少し話をしてきたら?私の部屋を使うといいよ。」
「リネア!困るよ、そんな…。」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな?」
「ルイーズ!」
ルイはシャーロット様の手を引いて部屋を出た。
物語みたいだ。
「リネア…どうなっているんだ?」
「なんか知り合いみたいだよ?それよりさぁ…。イーチェン、いいの?あんないいプレゼントもらっちゃって?!」
「もちろんだ、好きなだけバォズを食え。」
「イーチェン…嬉しいっ!」
リネアがイーチェンに抱きついた。こいつにとってハグは単なる感情表現の一つらしい。
イーチェンの顔が赤い、嬉しそうだ。
やはりこいつもか…。
「あーあ、今回もまたイーチェンのプレゼントが一番喜ばれたね。」
「確かにそうだね。イーチェンはよく分かってるよ。」
「だろ?次は俺の番だからな!楽しみにしてるぞ!」
「巨大フィッシュアンドチップスはどう?」
「リネア…それは勘弁してくれ。」
リネアは俺のいない間にすっかりこいつらと打ち解けたみたいだ。俺の知らない世界にリネアがいることに疎外感を感じる。
それにミハイルやセルゲイがこんな穏やかな顔をするなんて…。フレーデル王国にいた時とは別人のようだ。
「フリードリヒさん、こちらで一緒に食べませんか?」
イーチェンが俺に声をかけてくれた。
リネアはさっきからキッチンでセルゲイとずっと話をしている。本当に奴はリネアに懐いているらしい。
「そなたは、いつからエンゲル王国に?」
「2年前です。」
「そうか…、リネアと一緒に店を始めると聞いた。」
「リネアが俺の初めての友達で、それからセルやミハイルとも友達になれたんです。リネアには本当に感謝をしています。」
…なんだか素直で可愛らしい少年だな。確かリー財閥は裏で闇社会とつながっているはずだ。そのせいで今まで友人ができなかったのだろうか?
「俺はリネアたちとこれからも一緒にいたい、店もどんどん拡大していきたいって思ってるんです。」
「…そうか…。」
イーチェンが俺の目を見て笑った。
屈託のない笑顔…。
なのに俺の背筋に冷たいものが走った。
あの気難しいミハイルもセルゲイも、こいつを気にいってる。
普段人見知りで無愛想なあの兄弟がだ。
「もう仲良くなったの?」
リネアが口に物を入れながら話しかけてきた。皿に料理を盛りすぎだ。
「…格好いい人だな。フリードリヒさんて。」
「そうだね、フリッツは格好いいよ。」
俺は見逃さなかった。一瞬イーチェンが顔色を変えて瞬時に笑顔に戻ったのを。
この少年は危険だ。俺は直感でそう思った。
友達ができなかったのは何か他に理由があるはずだ。
だが今、ここにいる皆がとてもうまくやっている。
店もこれからだ、水をさすような真似はするべきじゃない。
俺の気のせいならいいんだが…。
ルイとシャーロット様が部屋へ戻ってきてみんなでカードゲームを始めた。俺はミハイルを呼び出した。
「ミハイル、ちょっといいか?」
「何?」
「どうしたの?外まで引っ張ってきて…。」
「…イーチェンはどんな奴だ?」
「どうって…どうして?」
「お前がどう思っているか知りたい。」
「…今の所おかしな動きはしていないよ。」
「過去の情報は?」
「まぁ…それなりには。彼は家が家だしね。まぁ私も人のこと言えないし、セルゲイとリネアは彼を気に入ってる。今は黙って様子をみてもらえるとありがたいな。」
「…そのつもりだ。ただ…。」
「…気をつけるよ。珍しいね、君が私に忠告してくれるなんて。」
「とりあえず今はお前がリネアの保護者代わりだからな。」
「…フリッツ、なんでイーチェンを疑ったの?」
「勘だ。」
「それだけ?」
「…それだけだ。」
「いいね、やっぱりフリッツは面白い。」
「お前に面白がられてもなぁ…。」
「イーチェンは多分しばらくは何もしてこないと思うよ。リネアの事を気に入っているし嫌われるようなへまは彼はしない。段階や手順をきちんと踏んでここぞって時にそれなりの動きをしてくるだろう。あんな素直な可愛らしい感じでさ、めちゃくちゃ計算してるんだから質が悪いよね。」
「それを分かっていて何故…。」
「うちも簡単には彼と縁を切れない事情があってね。」
「なるほどな…。お前、父親の仕事から解放されたんだって?」
「一番やりたくなかった事はね…。リネアのお陰だよ。」
「…よかったな。」
「フリッツ…」
「何だ?」
ミハイルが俺の目をまっすぐ見た。
「私は本気だよ、リネアの事。」
「あぁ、分かってるよ。じゃなきゃこんな所まで連れてこないだろ。…まったくいい迷惑だ。」
「ヴィルフリートはもう勝負から下ろす予定なんだ。」
「…どういう事だ?」
「楽しみにしていて。最後はやっぱり君との決戦が楽しいと思ってるんだ。」
「ミハイル」
「そろそろ戻ろうか?今日の主役はリネアだよ。」
「…そうだな。」
こいつ、何を企んでいる?
ヴィルフリートを勝負から下ろす?
どうやって…?




