パーティーの前 1-2
シャーロット様の部屋に向かう途中、ユーラの機嫌が物凄く悪いのに気づいた。普段ポーカーフェイスなのに、怒ってるのが空気で伝わってくる。
「ユーラ…。」
「言わないで。私は今かなり我慢してる。…今回だけは嫌だけど我慢するって決めたんだ。」
「今回だけはって…。」
ユーラが壁ドンをしてきた。超絶美形の壁ドンは物凄い迫力がある。僕でさえドキドキする。
「今回だけだよ。」
「…。すごい独占欲だね…。」
顔が近い。
「知らなかった?私が本気になるとこうなるって。」
「…知っていたような知らなかったような…。昔はフリッツに向いていた気持ちだよね?」
「そうだね。でもターゲットが変わったんだよ。」
「…みたいだね。」
何て言ったらいいのか分からない…。
「ミハイル、君は…人の部屋の前で何をしているんだ?破廉恥だぞ。」
シャーロット様が部屋のドアから出てきた。
「好きな人が私の思いどおりにならなくて…。」
「そういうのは家でやってくれ。」
「シャーロット様も私に協力してくれませんか?」
「…考えておこう。それよりリネア、部屋へ入れ。あ、ミハイルは来なくていい。後で会おう。」
「…私の事をなんだと思っているんですか?伝書鳩じゃないんですよ?」
「…協力して欲しいんだろ?さぁ、あっちへ行け。」
シャーロット様、ユーラをこんな扱いできるなんて、恐るべし…。
シャーロット様は僕の手を引っ張ると部屋のドアを締め鍵をかけた。
「リネア…。」
彼女が凄く興奮しているのが分かる。
「君が…彼と歩いているのを見たんだ。離れていたけどすぐに分かった。それで、ミハイルに呼びに行かせたんだ。」
「彼って…」
「私の…初恋の人だよ。以前話しただろう?留学先で出会ったって…。」
「あぁ…。えっ…まさかシャーロット様の好きな人って…。」
フリッツ…なの?そういえば数回会ったってフリッツも言ってたな。
え?僕とシャーロット様がライバルになるの?嫌だ…。
「久しぶりに見たけど彼は変わっていなかった。いや、背も伸びてもっと素敵になっていたな…。何故君が彼といたんだ?彼は今フレーデル王国にいるはずだよね?」
どうしよう…、僕に会いに来たなんて言いにくい。
「あの…念のため一応確認しますが、フリードリヒの話ですよね?」
「フリードリヒ?誰だ、それは…?」
シャーロット様が不思議そうな顔をする。
「…え?じゃあ誰の話しですか…?」
「あぁ…。フリードリヒってフレーデル王国の皇太子か?そういえばさっき彼のとなりにいたかもしれない。」
彼って…まさか…
「シャーロット様の初恋って…ルイなの…?」
シャーロット様が真っ赤になる。
「えー!?」
◇◇◇
「なんで俺がお前たちと一緒に風船をふくらませたり飾りつけをしたりしなきゃいけないんだ?俺は今日はホテルのディナーを予約していたのに!」
フリッツがさっきからずっと文句を言っている。そりゃ4ヶ月ぶりに会えた恋人と二人きりで過ごしたかった気持ちも分かるけどちょっと大人げない。
ロマノさんとセルゲイは買ってきた料理を皿に盛りつける。高級なお店で買ったんだろう、とても豪華な食事だ。
「フリッツ…嫌ならホテルに帰れば?私は私たちの友人とパーティーを開くから。あ、ルイーズ君はここに残っていてくれてかまわないよ?」
うわ。ロマノさんはっきり言っちゃった。
「じゃあ…フリッツ、またね?僕はこっちに残るから。あ、ミハイルさん、次の風船ください。」
僕まで巻きこまれないようにしよう。
「ルイ!お前は誰の友達だ?!」
「リネアの誕生日だし…。それに気になることもあるしね。」
「なんてやつだ!」
「うるさいなぁ、文句いうなら帰れば?」
うわっ。このセルゲイって奴、リネアの前と全然態度が違う。
「おい、ミハイル!このガキにリネアの部屋で寝ないように言っておけ!こいつは間違いなくエロガキだからな!」
「…私も何度も注意はしたんだけどね、全く聞いてくれなくて困ってるんだ。あ、でも何もしてないとは思うよ。可愛い弟ポジションをリネアの前では装って可愛がられているけど、リネアにしてみたら子犬みたいなものだからね。」
「兄上、ひどい!」
「本当の事じゃないか。」
すごい低レベルの会話してるなぁ。これが大国の皇太子と大統領の息子たちの会話なのか。それにしても二人ともフレーデル王国にいた頃より遥かに穏やかな顔をしてるなぁ。これもリネアのお陰なのか…?
「…あ、誰か来たみたいだよ?」
僕はドアを開けた。東の国の少年が微妙な顔をして立っていた。
「ミハイル…、そなたらのパーティーは毎回参加者が増える仕組みになっているのか?」
「…招かれざる客だけどね、一人は。」
セルゲイがさらっと嫌味を言う。
「…一人は?」
「イーチェン、紹介しよう。彼はフリードリヒ、フレーデル王国の皇太子だ。」
ロマノさんが東の国の人にそう言った。
「どうも…。」
「ああ、よろしくな。」
「で、こちらはランク王国の王族、ルイーズ君だ。ルイーズ君、フリッツ、彼はシアナ共和国のイーチェン・リーだ。」
「はじめまして…」
「ああ…。よろしく…。」
「イーチェン・リー…。巨大財閥のリーか?」
「そうです…。セル、二人ともリネアの友人か?」
「そう、友人。」
セルがフリッツに目配せをした。フリッツも何となく状況を理解したみたいだ。ここで騒ぐほど彼が子どもではない事は知っているけど、フリッツがどんなふうにリネアに接するか見物だな…。
それにしても、次から次へと大物の子息に気に入られていくなんて彼女は一体どうなっているんだ?
ああ、ようやく彼女が帰ってきたようだ。
僕の気になる人を連れて…。




