歓迎会 1-2
相変わらず…クラブに来るとこうなっちゃうのか。
セルは本当に踊るのが好きなんだろうな。
セルのダンスにクラブのホールが騒然となる。一人だけ全くレベルが違う。踊っている時のセルは自由で本当に楽しそうな顔をしている。
「あれ…あの大人しいしセルゲイ?」
「…うん。」
「なんかうますぎない?」
「…うん。」
「クラブに初めて来たって感じじゃないよね?」
「…だろうね。」
「リネア、踊ろ?」
ルークが声をかけてくれた。
「うん。」
ルークはオレンジ色でふわふわした髪の毛、青い目をしている。僕より一つ年上らしいけど童顔でセルくらいの印象だ。
「初めて来た日から可愛いなって思ってたんだ、リネアの事。」
「そうなの?…ありがとう。あまり言われないから恥ずかしいな…。」
ルークは穏やかで紳士的な少年だった。ダンスのリードの仕方もとても丁寧だ。
僕たちが数曲踊るとセルが僕の手を引っ張った。
「リネア、久しぶりに踊ろ?」
セルがニヤっと笑う。
「…ほどほどにね?」
久しぶりでワクワクする。
僕たちが踊り出すとまわりの人達が集まってきた。
相変わらずセルは技を仕掛けまくってくる。
僕だってフレーデルにいる間欠かさず特訓をしてきたんだ。どんなダンスも踊れるように。受けて立つ!
「へぇ、随分上達したね。」
「セルに言われると頑張った甲斐があるよ。」
「…やっぱりリネアは楽しいね。」
「セル、今度は私が仕掛けるよ!」
僕はあえて男のパートを踊る。僕のリードにセルが完璧に合わせてくれる。面白い…!
何曲も連続でセルと踊るとさすがに少し疲れてきた。
「セル…ちょっと休憩。」
「何か飲もうか。」
セルが飲み物を持ってきてくれた。
「これは?」
「ノンアルコールのカクテルだよ。」
「へぇ…綺麗だね。」
ブルーのカクテル…。そういえば、前にもこんなことあったっけ。あの時は…。
「何も入ってないから。」
「はは、分かってるよ。」
僕たちはクラスメートの座るテーブルに向かう。
「セルゲイもリネアも…あなた達、何者?」
「何って…。」
「セルゲイもすごいけど、リネアもすごく上手いわ。」
「フレーデル王国で専属コーチに半年しごかれたから。」
「それにしても…。」
マリーが理解できないって顔をしてる。
「マリー、私と踊る?」
「え?私と?」
「うん、行こう!」
僕はマリーを誘ってホールにでた。
僕が彼女をリードすると彼女が驚く。
「リネア、男性パートも踊れる訳?」
「うん、どちらも練習したんだ。」
「リネア、あなたって不思議な人ね…。」
僕がマリーと踊っている間、マギーがセルゲイに話しかける。
他の二人は飲み物を買いにいったようだ。
「セルゲイはリネアの事が好きなの?」
「…どうして?」
「貴方に興味をもったから。」
「…へぇ?」
「貴方、綺麗ね…。エンゲル王国の女性と付き合った事は?」
「ないよ。」
「そう…私と試してみない?」
「…どうかな。」
「…考えておいて。」
マギーがそう言ってセルの額にキスをした。
僕たちがテーブルに戻ると今度はマギーが僕をダンスに誘った。
マギーは茶色の長い髪の毛と茶色の瞳、大人びた印象の令嬢だ。
「リネア…本当にダンスが上手いのね。」
「ありがとう。」
「…私、セルゲイに興味をもったの。リネア…協力してくれない?」
「協力…?」
「ええ。」
「…よくわからないけど…。」
協力…してもいいんだろうか?
セルはもうミーシャにしたような事をしないだろうか…?
僕はセルの事を少しは知っているけど知らない事も多い。
「駄目?」
マギーが僕を上目遣いで見つめる。困ったな…。
「…私のできる範囲なら…。」
「嬉しいわ、約束よ!」
マギーが僕の手を握った。
僕は少しドキドキした。
帰りの馬車の中で僕はマギーの話をした。
「マギーが君に興味をもったみたいだよ。」
「…面倒くさい。」
セルは嫌そうに顔をしかめた。
「私に協力して欲しいって頼んできたけど、協力って何をしたらいいの?」
「…私にそれを聞く?」
「セルは令嬢に興味ないの?前は結構遊んでなかった?」
「前はそうだけど、今はちょっといいかな…仕事もしなきゃいけないし勉強もあるから…。リネアこそルークに気に入られたんじゃない?」
「さあ?可愛いとは言われたけど、お世辞じゃない?」
「…リネア…君は自分への好意には本当に鈍いね。」
「男に言われてもね…。どちらかと言えばマギーに手を握られた時の方がドキッとしたよ。彼女は私のタイプじゃないけど。」
「面白いな…。ねぇ、リネアはどんな女性がタイプなの?」
「えー?恥ずかしいな。」
そんな質問初めてされた。ボーイズトークっぽい。
「いいじゃない、私には言ってくれても。」
「そうだなー、先にセルが言ったら。」
「私…?どうかな?そう言われてみると難しいな。今までそういうふうに令嬢を見たことがないし。」
「そうなの?こんなに可愛いのに?令嬢にもてるのに?」
「ない…。誰でも良かった。」
「そっか、早く見つかるといいね。セルが好きになれる人…。」
「…そうだね。…で、リネアは?…この場合、オスカル、と聞くべきなのかな?」
「んー、私が初対面で滅茶苦茶ドキドキしたのはさ…、恥ずかしいんだけど…。」
「何?」
「…女装したヴィルフリートだったんだ。」
「えっ?!」
「それとユーラ」
「はい!?男ばっかりじゃないか。しかも綺麗な顔の人ばっかり…。君の対象はどっちなの?」
「…あとシャーロット様」
「えー?何それ!?あの人男みたいじゃない?」
セルが珍しく興奮気味だ。
「なんだろう…、特にタイプがある訳じゃないみたいだね。なんか中性的な雰囲気の人に魅かれるのかもしれない。」
「付き合った奴は思いっきり男だったのに?」
「んー、不思議なんだよね、自分でも。…フリッツは人として本当に好きっていうか…、尊敬してるっていうか…。最初は変な人だとしか思わなかったのに…。」
あ、駄目だ、思い出すと辛い。考えないようにしていたのに。
フリッツ…今何してるかな…。
「…会いたくなってきた…。」
「…リネア、寂しい?」
「うん…」
「よしよししてあげようか?」
「うん、して…。」
僕はセルの肩にもたれた。
セルがアパートにつくまで僕の頭を撫でてくれた。
フリッツに会いたい…。




