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第8話 その後の戦後処理(M&Aと新規事業立ち上げ編)

かつて徳川家康が我が物顔で天下の政務を執っていたその部屋は、今や「新生・日本経営(仮)」のCEO室へと変貌していた。


部屋の中央には、畳の上に不釣り合いなほど巨大な日本地図が広げられ、その上には夥しい数の「付箋ふせん」のような紙切れがペタペタと貼られている。


「よし、それじゃあ今週の定例『戦後処理ミーティング』を始めようか」


机(を模した脇息)に肘をつき、手元の書類をめくりながら声をかけたのは、西軍総大将にして最高戦略責任者(CSO)の毛利輝元である。



「議題は当然、破産した徳川グループの資産分配(論功行賞)について。……秀秋、進捗はどう?」


「はい、毛利先輩」


小早川秀秋は、かつてのエリートサラリーマンとしての本領を遺憾なく発揮し、テキパキと別の書類を提示した。


「徳川の旧領、関東二五〇万石ですが、これ、そのまま誰か一人が相続(領有)すると『一強状態』になってまたバグ(反乱)の元になります。ですので、ここは思い切って『分社化(分割統治)』を提案します」


「分社化?」


隣で豪快にどぶろくをあおっていた島津義弘が、怪訝そうに眉をひねった。


「そいは一体、どげん仕組みごわすか? 秀秋どん」 


「簡単ですよ、島津の社長。関東の豊かな平野を、いくつかのセクター(中堅大名)に細かく切り分けるんです。で、その中心である江戸城周辺は、我々3人の『共同出資(天領)』として直轄管理します。利益(年貢)は山分け、警備はローテーションです。これでパワーバランスは完璧に保たれます」


「なるほどね、利権の分散リスクヘッジか」



輝元は満足そうに頷いた。


「さすが元エリート。じゃあ、福島正則とか黒田長政とか、東軍にガチで加担してた連中の処分リストラはどうなってる?」


「そちらも手続き(改易・減封)は順調です。基本、全員『自己都合退職(お家取り潰し)』の方向で進めていますが、能力のある優秀な人材(武将)に関しては、ヘッドハンティングして我が社の新規事業へ再配置する予定です」  


「新規事業ち、何をごわす?」


義弘が身を乗り出す。


今の義弘の頭の中は、戦が終わってしまったことによる「島津軍のモチベーション低下(不満)」をどう解決するかで一杯だった。


薩摩隼人たちは、戦うのをやめると社内(領内)で喧嘩を始める狂戦士集団なのだ。 


輝元はニヤリと笑い、地図の「日本海」と「長崎」のあたりを指差した。


「島津の社長。あんたのところの余った超過火力(薩摩隼人)、全部『海外進出(国際貿易・海軍)』に回してよ。いつまでも狭い日本国内でシェア争い(内戦)してる場合じゃないでしょ」


「海外……! 輸出事業(南蛮貿易)ごわすか!」 


義弘の目が、元CEOの輝きを取り戻す。



「そう。みんやルソン(フィリピン)、さらにはその先の欧州ヨーロッパまで販路(航路)を広げる。島津軍には、そのための『最強のセキュリティ部門(私設海軍)』として、海の覇権を握ってもらう。戦闘狂の連中も、外のガチ勢と戦えるなら文句ないでしょ?」


「チェストォォォ! そいは素晴らしいビジネスプランじゃ! 我が社のタレント(武士)どもも、大喜びで海へ飛び出すが!」


義弘は机をバンバンと叩いて大笑いした。


「小早川の組織力で内政を固め、島津の突破力で外貨を稼ぎ、俺のゲーム理論で全体をコントロールする。……これ、マジで数十年で日本が世界トップの経済大国になれるクソゲー(超イージーモード)じゃない?」


輝元がそう言って不敵に笑った、その時だった。 


「――お、お待ちくだされぇぇぇーーーっ!!」


バシャァァンッ!! と激しい音を立てて部屋の襖が開き、ボロボロの着物を着て、目の下にどす黒いクマを作った男がなだれ込んできた。


関ヶ原の前夜から大坂城の地下室にずっと監禁されていた、吉川広家であった。



「輝元様! 広家、ようやく釈放されて戻ってまいりました! ……って、一体、何が起きてるのですか!? 家康殿は!? 毛利の家名はどうなったのですかぁぁっ!」


浦島太郎状態の広家が悲痛な叫びを上げる。


そんな広家に対し、3人の転生者は冷たい視線を向けた。


「あ、広家。お疲れ。もう戦終わったよ」


「……え?」


「徳川グループは倒産(滅亡)したから、君が必死にやってた裏工作(インサイダー取引)、ただの骨折り損ね。毛利は一歩も減封されずに、むしろ日本一の筆頭株主(大名)になりました」


「な……な、何をおっしゃいます……! 私は、毛利のお家のために、家康殿と……」


がっくりと膝をつく広家に、秀秋が優しく(?)肩を叩いた。



「吉川さん。時代のトレンド(流れ)を読めない社員は、これからのグローバル社会じゃ生き残れませんよ? とりあえず君、明日から『窓際族(隠居)』ね。席、片付けといて」


「そんなぁぁぁぁぁーーーーっっ!!」 


広家の絶叫が大坂城に響き渡る中、輝元、義弘、秀秋の3人は、すでに未来の地球儀を見つめていた。


歴史のバグから生まれた「最強の三頭政治トリウムヴィラート」が、今、日本を、そして世界をガチで変革しようとしていた。


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