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第5話 小早川秀秋、藤堂高虎を瞬殺して家康に迫る

慶長五年(1600年)九月十五日、午後一時過ぎ――


松尾山麓。


「問鉄砲とか言って、他社のオフィスにいきなり怒鳴り込んでくるような昭和のパワハラ上司が一番嫌いなんだよ、俺は!」


松尾山を一気呵成に駆け下りる一万五千の軍勢。その先頭で、小早川秀秋は馬を飛ばしながら激怒していた。


歴史上の秀秋は、徳川家康の威嚇射撃に怯え、泣く泣く西軍の大谷吉継の陣へ襲いかかったとされる。


しかし、今の彼の魂は、ブラック企業の理不尽な経営陣を労働基準監督署に通報し、全員まとめて法的に破滅させて退職した元エリートサラリーマン。


家康の姑息な脅しなど、彼のハートを1ミリも揺るがせなかった。


「報告! 前方の東軍・藤堂高虎殿の陣、我が軍の接近に気づき、迎撃の構えをとっております!」 


「遅いんだよ、レスポンスが! 競合他社の動きを見てから会議始めてる時点で倒産確定だろ!」


秀秋は采配を鋭く振り下ろした。


「いいかお前ら! 標的は藤堂高虎! あいつは『主君を七度変えねば武士とは言えぬ』とか言ってる、転職回数だけが多い中途採用の裏切り常連組だ! 組織への忠誠心が低い奴の防衛ラインなんてな、一箇所に負荷をかければ一瞬で崩壊する! 左翼の薄いところに兵力を集中して突っ込め!」


「お、おおおっ! よく分からんが、いけーーーっ!」


小早川軍の兵たちは、かつてないほど明確な指示に迷うことなく、藤堂陣の最も脆弱な一点へと殺到した。


一方、迎え撃つ東軍の藤堂高虎は、大混乱に陥っていた。


「な、何だと……!? 小早川は大谷の陣へ向かうのではなかったのか! なぜ我が陣へ、それも寸分の迷いもなく、我が軍の死角を突いて突撃してくるのだ!」


高虎は、秀秋が東軍に寝返る手はずになっていることを事前に知っていた。


だからこそ、自分の陣の側面は完全にノーガードに近かったのだ。


そこへ、一万五千のガチ勢と化した小早川軍が、一番痛い角度から猛スピードで突き刺さる。


「防げ! 防ぐのだ! 陣形を立て直せ!」


「遅い! 納期遅れだボケ!」


次の瞬間には、秀秋の直属部隊が高虎の敷いた防衛線をあっさりと紙のように引き裂いていた。


優柔不断の代名詞だったはずの「金吾(秀秋)」が、まるで熟練の戦術家のような手際で、藤堂軍の指揮系統をまたたく間にズタズタにしていく


。「ひえっ、小早川の若造が、これほどの手だれであったか……!」


「はい、藤堂高虎、君は戦力外通告ね。お疲れ様でした!」


秀秋の放った鉄砲隊の一斉射撃が藤堂陣の本陣を直撃し、高虎は血を流して敗走。


開戦からわずか数十分、東軍の堅実な要であった藤堂高虎の陣は、文字通り「瞬殺」された。


藤堂の防衛ラインを完璧に殲滅した秀秋は、返り血を拭うこともせず、そのまま馬の首を東へと向けた。


その視線の先にあるのは、島津の突撃と毛利の包囲によって、すでに逃げ場を失いかけている徳川家康の本陣である。


「よし、藤堂の案件は終了だ。次はいよいよ、諸悪の根源である徳川家康の買い叩きに移るぞ」


秀秋はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、家康の本陣を見据えた。


「家康公、あんたのビジネスモデルはもう完全に破綻してんだよ。散々人を脅してタダ働きさせようとしたツケを、ここで一括請求(支払い)してもらうからな。――全軍、次のタスクは徳川本陣の完全解体だ! 突撃ィーーーッ!」



「「「「うおおおおおーーーっっ!!!!」」」」 


迷いを捨て、怒涛の勢いで家康の横腹へと迫る小早川の一万五千。


家康の目の前で、東軍の命脈がまた一つ、完全に断たれようとしていた。

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