第19話 大航海チェスト!
島津とか言うやべーやつ
慶長七年(1602年)夏――南シナ海・マニラ沖。
「前方の巨大な船団(フリゲート艦)は……何ごわすか、清正どん」
最新鋭の「前田重工製・超大型武装帆船」の甲板で、最高経営責任者の(CEO)島津義弘は、眩しそうに隻眼を細めて水平線を見つめていた。
彼の隣には、九州の領地を国替えされ、この「海外事業部・アジア方面軍」へと強制配属された猛将・加藤清正が、特注の十文字槍を肩に担いで立っている。
「島津殿あれが南蛮の覇者、イスパニアの無敵艦隊にございます。我らの進路を遮り、この海の制海権は渡さぬと威嚇している模様」
本来の歴史であれば、国内の領地争いに終始し、やがて来る鎖国へと向かっていくはずだった戦国武将たち。
だが、今の彼らは毛利輝元から莫大な外貨(軍事予算)を融資され、現代知識のチートアプデを施された世界最強の「私設海外憲兵・兼・貿易商社」として、世界の海へと解き放たれていた。
「フン、イスパニアが市場独占を狙って先行投資の壁を築いちょるか。ビジネスも戦も、初手のシェア奪取がすべてをごわす!」
義弘は愛刀をバッと引き抜き、マニラ沖の青空に向けて吼えた。
「おい薩摩ん隼人ども! 準備運動は終わりじゃ! 敵の親玉(提督)の首を、いの一番にぶっ叩き割るぞ! 全軍、チェストォォォォォーーーーッッ!!!!」
「……マザーテレサ(聖母)にかけて、一体何なんだあいつらは!」
イスパニア東洋艦隊の総旗艦。
司令官は、常識を遥かに逸脱した「東洋の狂戦士集団」を前に、顔面を蒼白にしていた。
大坂本社から支給された「現代版・超高精度大砲」による正確無比なアウトレンジ射撃、イスパニア自慢のフリゲート艦を次々と蜂の巣にしていく。
それだけではない。砲撃でパニックになった敵艦に向けて、島津軍は防御を一切捨てた最高速度の接舷突撃を仕掛けたのだ。
「チェストォォォォォーーーーッッ!!!!」
「うおおおお! 虎退治の加藤清正、参る!」
「福島正則! 特攻部隊長として雇用されたからには、暴れ倒してやるわぁぁぁ!」
甲板になだれ込んできたのは、改易されて島津の傭兵になった福島正則と、戦う場所を与えられて生き生きとしている加藤清正。
そして、その後ろからは、圧倒的な「圧」をまとったCEO島津義弘が、大太刀を振り回して突っ込んでくる。
白兵戦において、死を恐れぬ薩摩隼人と戦国最強の猛将たちに勝てる人間など、この時代の地球上には存在しなかった。
イスパニアの無敵艦隊は、開戦からわずか数十分で、文字通り「塵」のように踏み潰された。
「マニラ市場、これにて我が社が完全買収完了ごわす!」
義弘は敵の提督の帽子を奪って頭に被ると、豪快に胸を張って笑った。
同月――大坂城・本社オフィス。
「よしよし、島津の社長から『マニラ支店の買収に成功(チェスト完了)』の報告ログ(書状)が来たよ」
最高戦略責任者(CSO)の毛利輝元は、手元の帳簿をチェックしながら不敵に笑った。
「太平洋セクターの伊達政宗も、アメリカ大陸経由でスペイン国王に直接謁見しに行って、貿易の独占契約を取り付けたらしい。これで世界グローバル市場の物流ルートの半分は、我が社がハッキングしたことになるね」
「素晴らしいレスポンスですね、毛利先輩」
実務担当の小早川秀秋が、ハーブティー茶を差し出しながら、爽やかなエリートスマイルを浮かべた。
「国内の戦後処理は完全に終わりました。前田の造船ラインもフル稼働。結城秀康さんの関東支社もホワイトに統治されています。余剰兵力(ニート武士)をすべて海外の新規事業へ異動させたおかげで、国内の失業率(浪人問題)もゼロ。これ、マジで史上最高の完璧な世界線じゃないですか?」
「本当にね」
輝元は地球儀をパチンと指で回し、遠い未来の水平線を見つめた。
「家康が作ろうとした『古い鎖国日本』なんて、最初からバグだらけのシステムだったんだよ。俺たち3人の現代知識があれば、日本は世界の中心になれる。……さあ、秀秋。次の目標を設定しようか」
「はい。次はヨーロッパ市場の完全買収ですね」
現代知識のチート、理詰めのコンプライアンス、そして狂気のチェスト精神。
3人の転生者によって歴史のレールを完全に破壊された日本は、戦国時代という狭い檻を飛び越え、世界の覇権へ向かってどこまでも爆走を続けるのだった。




