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第16話 加賀前田家

「おい……これ、本当に我が前田への通達か……?」


北陸の覇者であり、加賀百万石の主である前田利長は、大坂の本社(西軍新経営陣)から届いた分厚い「監査リポート」を前に、ガタガタと震えていた。



本来の歴史であれば、関ヶ原の戦いで東軍側の徳川家康に加担し、戦後は見事に「加賀百万石」の地位を不動のものにしたはずの前田利長。  


しかし、今回の世界線では家康派閥が瞬殺されて倒産。 

西軍ガチ勢の圧倒的な勝利を前に、利長は戦後、生きた心地がしていなかった。   


前田家は完全に「負け組(敗戦処理対象)」の筆頭だったからだ。


「失礼します。前田利長さん、今期(戦後)の監査(仕分け)を始めますね」


部屋に入ってきたのは、かつてブラック企業の理不尽な経営陣を法的に破滅させた元エリートサラリーマン、現・実務担当大将の小早川秀秋である。


その背後には、一切の妥協を許さない鉄の事務官、石田三成(コンプライアンス室長)が、冷徹な目で計算盤そろばんを弾きながら控えていた。 


「ひっ、小早川殿、それに石田殿……! わ、我が前田家は、決して徳川殿と共謀して天下を盗もうなどとは……!」




「言い訳は不要です、利長殿。貴殿の母親である芳春院まつ様を家康に人質として差し出し、前田家を実質的に徳川の『完全子会社』にしようとしていたロ証拠はすべて残っています。これは明らかな『利敵行為インサイダー』です」


「そ、それは父(前田利家)亡き後、前田の家名を残すための深謀遠慮で――」


「だったら、こっちの新しい規約(契約書)に従ってもらわないとね」秀秋が爽やかな笑顔で、利長の目の前に新しい


「加賀百万石・再建計画書」を提示した。


利長が必死に平伏すると、三成が冷たく言い放った。




「利長殿。あなたの前田家は、戦国時代において非常に優秀な『ローカル大企業(大大名)』です。ですが、百万石という巨大なリソース(兵力と富)をそのまま北陸に寝かせておくのは、マクロ経済的(天下平定の観点)に非常にコスパが悪い。ですので、前田家には『コンプライアンス(法度)の徹底』と『事業の多角化』を求めます」  


「じ、事業の多角化……?」利長が恐る恐る尋ねる。「はい。前田百万石の領地(加賀・能登・越中)ですが、その豊かな米の生産力を生かして、これからは新会社(日本)の『最高財務・備蓄セクター(兵糧・経済の安定供給ベース)』になってもらう。つまり、無駄な軍備プライベートアーミーはすべて解体し、農業と工芸、そして物流のプロフェッショナルとして特化してください」 


秀秋はペンで北陸の地図を叩いた。



「さらに、前田家が抱える優秀な技術者たち(加賀の職人集団)をフル活用し、現代知識チートを投入した最新の『造船・冶金(金属加工)』の工場ファクトリーを北陸沿岸に建設します。島津の社長や伊達政宗が海外進出するための『超大型輸送船』の製造ライン(サプライチェーン)を、前田家が独占受注プロデュースするんです。

百万石の力を、内戦ではなく世界への輸出ビジネス(外貨獲得)に使う。これなら文句ないですよね?」


「な、内戦のための軍備を解体し……世界の海の造船に……!?」


利長は、その壮大すぎるビジネスモデル(国家戦略)に開いた口が塞がらなかった。


お家取り潰しを覚悟していたのに、提示されたのは「世界基準の最重要インフラ部門への就任」だったのだ。





「ちなみに」 


三成が冷たい声で付け加えた。 


「駿府に隠居した徳川殿が『お小遣いが足りないから前田家から盆栽を融通してくれ』などと個人的な連絡(裏取引)をしてきても、絶対に無視してください。一発で領地を取り上げます。芳春院(お松)様に関しては、京都の『ねねファンド(グローバルアカデミー)』の特別顧問(副校長)としてお迎えしましたので、人質ではなく最高待遇のキャリアウーマンとして第二の人生を楽しんでおられます。ご安心を」


「母上が、京都の学校の副校長に……!?」 


利長はついに感極まり、涙を流して畳に突っ伏した。


「分かった……分かりました! 我が加賀前田家、これからは徳川への未練を一切断ち切り、新経営陣(毛利・島津・小早川)の提示する法令遵守を徹底遵守いたします! 世界に冠たる大船、加賀百万石の意地をかけて造り上げてみせましょう!」


「素晴らしい決意です、前田社長」


秀秋は満足そうに微笑み、再建計画書に判を突かせた。




こうして、東軍の最大勢力の一角であった加賀前田家も、現代知識の「事業仕分け」によって、軍事リスクを完全に去勢されつつ、世界最強の「重工業・経済セクター」として見事に再生を果たした。


3人の転生者の手によって、日本の形は、一歩一歩確実に「最強の近代国家」へと組み替えられていく。

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