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第12話 二代将軍・結城秀康の1日(中間管理職トップの憂鬱)

私が実際に仕事で経験した話が少し入ってます

慶長六年(1601年)春――江戸城・本丸将軍室。


「……父上が、また盆栽の予算をオーバーして領収書を回してきただと?」


徳川家の家督を継ぐだけでなく、西軍の新経営陣から秀忠が継ぐハズだった「二代将軍」の役職まで押し付けられた結城秀康は、朝一番から頭を抱えていた。



転生者によって天下の象徴に据えられた。


しかしその実態は、上からの無茶振りと下からの不満に挟まれる、戦国時代で最も胃が痛い「中間管理職将軍」であった。 


公認傀儡トップとして生きる秀康の、多忙きわまる「ある1日」が、今日も幕を開ける。


 


【午前8:00】始業・大坂本社との役員ミーティング(リモート)


秀康のデスクに置かれた、現代知識のオーバーテクノロジー(※超高精度な早馬と通信網)による連絡が届く。


大坂の本社(総大将・毛利輝元)からの定例通達だ。


「秀康将軍、おはよう。今週の進捗どう? 関東の『分社化』の件だけど、伊達政宗が海外事業(スペイン留学)の予算が足りないって文句言ってきたから、徳川の予算(石高)からちょっと削って回しといて(笑)」


最高戦略責任者(CSO)の毛利輝元からの、軽いノリのメール(書状)である。


「毛利先輩、簡単に言わないでください……。こっちだって、急に平社員に降格させられた弟の秀忠が、毎日シクシク泣きながら写本をとってて社内の空気が最悪なんですから」


「あー、秀忠君? 彼は石田三成室長のもとで法度の基礎から叩き直されてるから大丈夫だよ。じゃ、予算(米)の件よろしくー。チェックメイト」


プツン、と通信(書状)が途切れる。


「戦好き総大将、現場の苦労を知らんから困る……」と秀康はため息をついた。




【午後1:00】現場視察・鬼の監査役がやってきた


午後からは、関東のセキュリティ部門(軍事)の視察である。江戸城の訓練場に、凄まじい地鳴りと共に「あの男」が突撃してきた。


「チェストォォォォォーーーーッッ!!!!」


ドガシャァン! と、訓練用の頑丈な木柵が粉々に粉砕される。


島津の元CEO・島津義弘が、現場監督(軍事顧問)として江戸にやってきていた。


その後ろには、改易されて島津の傭兵部長になった福島正則が、死んだ魚のような目で一緒に走っている。




「おお! 秀康将軍! 関東の武士どものモチベーション(士気)は上がっちょるか! 国内でダラダラ仕事しとる奴は、全員我が社の海外進出(海軍)の配属(強制出向)に変えてやるが!」 


「し、島津の社長、落ち着いてください! 江戸の武士たちは農地改革(内政)で忙しいんです! 訓練場を『チェスト』で破壊するのもやめてください、修繕費コストがかかるんです!」 


「何をぬるいことを言っとるか! ビジネスも戦もフットワークが命じゃ! よし、福島! 秀康将軍に我が社の『初手フルパワー突撃』の手本を見せてやれ!」


「ひ、ひええぇぇ! 秀康様、助けてくだされ! 毎日24時間チェストさせられて俺のHPはもうゼロです!」


半泣きの福島正則を連れて、海外遠征の準備へと去っていく島津義弘。 


秀康は眉間を揉みほぐしながら、「うちのセキュリティ部門、戦闘力がぶっ壊れ(チート)すぎててマネジメントできん……」と呟いた。



【午後5:00】業務改善・ホワイトな仕事の流儀


夕方。内政実政担当の小早川秀秋から、進捗確認の監査が入る。


「秀康さん、お疲れ様です。進捗チェック(検地)に来ました」


秀秋は、かつてブラック企業を論破したエリートサラリーマンの目で、秀康のデスクの書類をササッと確認した。


「うん、残業(夜間の軍議)はちゃんと削減されてますね。でも、この『駿府の隠居(家康)からの盆栽購入費』の経費精算、落とせませんよ。公私混同インサイダーは一発で労働基準監督署(三成)に検挙されます」


「すまない、小早川殿。父上が『ワシの唯一の癒やしを奪う気か』と、毎日うるさくてね……」


「ダメなものはダメです。家康さんはもうただの窓際族(引退した創業者)なんですから、将軍として毅然とした態度で『ノー』と言ってください。経営ガバナンスのトップはあなたですよ、秀康将軍」




秀秋の爽やかだが一切の妥協のないコンプライアンス意識に、秀康は背筋が伸びる思いだった。


「……分かった。父上の盆栽代は、父上の小遣いから天引き(減封)にする」


「よろしい。その判断(決断)、大変ホワイト(英断)です」 


秀秋は満足そうに微笑み、ノートを閉じた。



【午後9:00】退勤・将軍の静かな乾杯



全ての業務(政務)を終え、ようやく将軍室で一人になった結城秀康は、冷えた甘酒をグイッとあおった。


上には冷徹なゲーマー(輝元)、横には理詰めのエリート(秀秋)、現場には狂気の戦闘狂(義弘)。さらに下には元創業者の父親(家康)と、平社員の弟(秀忠)。


「……はぁ。毎日胃が痛すぎる」


しかし、秀康はフッと口元を緩めた。


歴史上、自分は日陰者として扱われ、将軍の座に就くことすら叶わずに若くして病に倒れるはずだった。


だが今、自分は間違いなく二代将軍として、新しい日本を動かす最高にエキサイティングな毎日を生きている。


「さて……明日も『チェスト』の苦情処理と、父上の盆栽の予算削減から始めるか」


若き二代将軍の、ホワイトで胃が痛い明日は、まだまだ始まったばかりである。

ちょいちょい島津様がネタキャラになってる…

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