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第11話 徳川家康は隠居させられ跡目は結城秀康に継がせる

大坂城の地下牢。

へし折れた扇子を握りしめたまま、処刑を待っていた徳川家康は、目の前に提示された「一枚の契約書」を見て、間抜けな声を上げた。


歴史のバグによって誕生した新生・日本経営(仮)の最高戦略責任者(CSO)毛利輝元と、実務担当の小早川秀秋は、冷淡な目で家康を見下ろしていた。


「当たり前じゃん。家康公ほどの大物をここで処刑したら、東国に残ってる徳川の共感者が暴れて、無駄な治安維持戦費がかかるでしょ」



輝元はため息をつきながら、現代のゲーム運営のようなリスク管理を語る。  


「でも、あんたは『組織のトップ』としては有害すぎるから一発レッドカードね。今すぐ役職を退任(強制隠居)して、駿府の田舎で一生大人しく盆栽でも育ててて。名前の利用制限(監視付きの隠居生活)だよ」 


「隠居……。では、我が徳川の家督はどうなるのだ! まさか、江戸の秀忠に継がせることも許さぬと?」




家康が必死に食い下がると、横から小早川秀秋がビジネスライクな笑顔で、もう一枚の「人事異動届」を突きつけた。


「いいえ。跡目には、あなたの次男である結城秀康さんを指名しました」


「な、何だと……!? 出来損ないの秀康だと!?」


家康は絶句した。


結城秀康は、かつて豊臣秀吉の養子に出され、その後は結城家へ養子に出されるなど、家康から実質的に冷遇されてきた不遇の息子である。


関ヶ原の戦いでも、江戸の秀忠が主力3万8千を率いていたのに対し、秀康は宇都宮で上杉景勝への「足止め」として残されていた。




輝元がニヤリと笑う。


「秀康さんは武勇に優れてるのに、あんたに冷遇されてたから徳川本家への忠誠心ロイヤリティが低い。しかも元は豊臣の養子だから、西軍の既存の大名たち(豊臣恩顧)からも『あいつならいいよ』って受け入れられやすい。要するに、我々新経営陣にとって、これ以上ないほどコントロールしやすいホワイトな傀儡トップなんだよ」


「さらに付け加えますと」


秀秋が手元のデータをペンでトントンと叩く。


「関ヶ原の戦いに大遅刻して、実戦経験も経営権カリスマもない秀忠君に跡を継がせるより、現場の武士たちからの支持リスペクトが圧倒的に高い秀康さんを据えた方が、組織の統治が効くんですよ。ちなみに秀忠君は、遅刻のペナルティとして『総務部・平社員』からスタートです」


「秀忠が、平社員……!」



「秀忠が、平社員……!」


家康の脳裏に、真面目だけが取り柄の三男・秀忠が、石田三成の下で毎日ベソをかきながら書類仕事に追われる姿が浮かび、胃がキリキリと痛んだ。



その頃、大坂城の別室。


「徳川家・新将軍」への就任を要請された結城秀康は、島津義弘から豪快に肩を叩かれていた。


「ガハハハ! 秀康どん、おはんの武勇は前々から高く評価しちょったが! これからは徳川の看板を背負って、チェストの精神で新会社(日本)を引っ張ってくいやんせ!」


「は、はあ……。まさか、父上に代わって私が徳川を継ぐことになるとは……」 


未だに信じられない様子の秀康だったが、その瞳には、自分を冷遇し続けた家康への反骨心と、新時代への野心が確かに宿っていた。


「……分かりました。父上が築こうとした『古い徳川』は、私がここで終わらせます。これからは毛利殿、小早川殿、そして島津殿と共に、新しい日本の経営に尽力いたしましょう」


「よか返事じゃ! これで東国の治安も安泰ごわす!」義弘は満足そうにどぶろくを飲み干した。




こうして、徳川家康は全ての権力を剥奪されて駿府へと強制送還され、徳川家は「結城秀康」という新たな若きリーダーのもとで、新生・日本経営(仮)の『関東支社』として再スタートを切ることとなった。


家康が夢見た「徳川の天下」は、その血筋のシステムだけを巧妙に利用され、3人の転生者たちによって完全に骨抜き(買収)にされたのである。

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