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特異社会の『傍観者』として  作者: はるぱる
第一章『日常裏の世界への入口』
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8話 見えない力

お読みいただきありがとうございます!

榮と白髪少女が話そうとしたその時、謎の不良二人が割り込んで――


少女は臆することなく、その場に立っている男を下から見据える。

小刻みに震えていた肩も今は微動だにせず、彼女の淡く黄色の瞳には、もう恐怖の色は消え失せていた。



「お前、綺麗な髪してるな」



黒髪の男はゆっくりと右手を伸ばし、彼女のきめ細やかな白髪に触れようとした。



「ちょっと触るくらい、いいだろ?」


「だめ……」



伸ばされた男の手をパシッと振り払うと、少女はぷいと顔を背け、不満げに眉をひそめていた。



「その手で私の髪を触らないで」



彼女の声は穏やかだった。響きだけで言えば、怒っている様子など少しも感じられない。



「ははっ、減るもんじゃないだろ」



少女に拒絶されながらも、無視して構わず手を伸ばし続ける男。

あと少しで、白く透き通るような髪に指先が触れそうな、まさにその時――



(………ん?)



少女の黄色の眼が、微かに、けれど確かに柔らかな光彩を帯びた。

瞬きほどの短い時間。誰も気づくことのない、一瞬の輝きだった。



「っ……!?」



男の手が、空中でぴたりと止まる。まるで目の前に見えない壁でもあるかのように、それ以上、前へ進まない。



「な、なんだ……?」



彼は思わず目を見開き、わけがわからないといった様子でじりじりと後退る。

一方、すでに元の瞳に戻っていた少女は、心底つまらなそうな顔で男を見つめ、ただ沈黙を貫いていた――。



「あれは……」



その中で少女の目の一瞬を見逃さなかった者――榮は、取っ組み合いを続けながらも、視線を少女に向けていた。



(今………)



確(・)か(・)に(・)見(・)え(・)た(・)。彼女の黄色い瞳が、ほんの一瞬だけ光ったことを。

絶対、見間違いではないはず。



榮はゴクリと息を呑んだ。



少女に困惑していた男の表情も、驚きから明らかな恐怖へと変わっていく。



「な、なんだよ……お前」



男は顔を青ざめさせ、着々と引き下がっていった。

一歩、また一歩と距離を取るように。



「お、おい、どうした……?」



こちらを掴んでいた茶髪男も、少女のただならぬ雰囲気に戸惑いを隠せていない様子。

少女はその場から足を動かさず、今度はこの男を見据えている。



「……っ」



男は額に汗を浮かべながら少女を凝視していた。

さっきまでの威勢の良い余裕は何処へいったのだろうか。



「どうしたの?」



子どもである彼女のその一言が、男の恐怖をさらに肥大化させる。



「ひっ……!」



やがて男は耐えきれなくなったように身を翻し、「く、来るな!」と吐き捨てつつ、公園の出口へ慌てふためいて逃げ出す。



「行っちゃった……変な人」



情けなく敗走する男を見つめ、ぽつりと少女は言ったのだが――



(あれ……?)



少女は追いかけようとはせず、ただその場に佇んで、男の背中を呆然と見送っていただけである。

まあ普通に考えたら、この状況で追いかけるのもおかしいとは思うけど。



けれど、俺の目からは少し違って映ったのだ。



――もしかしたら少女は、自分から威勢よく挑発してきたくせに、視線で気圧しただけで逃げた男に失望というか、情けないと思っているから後を追わなかったのかも?

いや……うーん。流石にそれは考えすぎか。



――ていうか、追う追わないの話しなんかより、やはりあの子の「目」の変化が一番気になるところだ。



ほんの一瞬、キラリと輝いたあの目。それが男を恐怖させた要因だということは事実といっていい。


だがなぜ、あの男は少女の目を見ただけで怯えたのか。

そして俺を掴んでいるこいつも、なぜ、冷や汗を滲ませているのだろうか。

もしや、あの子の目に何かしらのからくりがあるのか?


目の前の光景に対して、今の俺には何の解説も説明がつかないし、まったく分からない――。



「お、おい、何やってんだお前! 逃げんなよ!」



と、俺が試行錯誤していたら、もう一人の高校生が叫び、逃げていく仲間を信じられないという表情で見送っていた。


ざまぁ見やがれってんだ。形勢逆転とまではいかなくとも、あんなに威勢のよかった連中の足並みが崩れたのは確かだ。



「びびって逃げやがって……クソッ、お前だけでもぶっ飛ばしてやる!」


「えっ……」



茶髪の男は、押し寄せる恐怖を振り払うかのように、あえて大声を張り上げて榮の胸ぐらを締め上げてきた。



(まずいな、このままだと男のいいように殴られておしまいだ。こちらも殴って抵抗したいものの、身長が災いして持ち上げられたまま……厄介)



「離せっ!」



それでも男の腕を振り払おうと力を込めるが、茶髪の体勢はピクリとも崩れない。



「へっ! チビが。俺達の仕事を邪魔しやがって……」


「し、仕事……?」



男の口から漏れ出た「仕事」という言葉。

なら、こいつらの仕事ってあの子を誘拐する――



「口に出すな! 黙ってろ!」


「ごふッ……!」



腹パンされた。

クソッ……痛い! 俺は脳に引っかかった言葉を声に出しただけだろ。理不尽ほどがある……。



腹を抑えてうずくまりながら、榮は視線だけで周囲を探った。



(それより……あの子は何してるんだ……? 助けてくれてもいいのに……)





9月23日 追記  話がだいぶ長くなりました、すいません。  そして話を改変します。


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