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特異社会の『傍観者』として  作者: はるぱる
第二章 『伏見稲荷編』
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67話 神域での死闘  『終戦』 その2  理性の切れた榮の怒り

お読みいただきありがとうございました!


11話 『家族』の温もり  修正済み

アスピラが榮を唐突に呼び出した。


俺の心情を見透かしたのか、それとも読み取ったのか――。

何の因果かは分からないが、この呼び出しが「俺とみたの絶命」のように思えた。


事実として、みたはアスピラにきめ細やかな琥珀色の髪を横暴に掴まれており、かつ、毒で弱々しくなっているため反抗することもままならない。


そして呼び出された俺が、みたを助けたい、といっただけの気持ちでアスピラに向かっても、返り討ちにあって被害が増えるだけ……。



「俺に、何をさせたい」


「榮君には――そうだ」



アスピラは言葉を続けながら、みたの髪から一度手を離した。指先からこぼれ落ちた美しい琥珀色の髪が、ふわりと元の位置に戻る。


しかし、次にアスピラの手が掴み上げたのは、みたの頭に生えた狐の耳。



「痛い……離せっ……」



みたが声にならない悲鳴を上げたと同時に、榮の体はピクッと跳ねて硬直した。



(こいつ……! 本当にいい加減にしろ……!)



内心、すぐにでもアスピラを同じ目に合わせてやりたいと思っているが、相手は自分より遥か格上の存在。

下手に手を出せば、自分が八つ裂きにされる未来が想像できた――。


痛みに苦しむ間もなく、アスピラはその耳を雑に掴んだまま、ぐいと腕を突き上げてみたの身体を宙へ持ち上げた。

毒で弱り切った彼女の体躯が、ただの荷物のように力なく揺れる。みたの神秘的な瞳は光沢を失い、そこには虚無そのものだけがあるように見えた。



「五葉が、どこにいるか教えて欲しいな」



生殺与奪の権を握っていることを誇示するように、アスピラは淡々とした声で問いかける。

人質を取られた焦燥と、新しく提示された『五葉』という名前に、榮の思考は激しく乱れた。



「あ………」



みたを死の間際まで甚振り、澪華や蒼真、五葉を刺す殴る。暴虐非道でクズなこの人間に血管が破裂しそうだ。



――ぷつん。



その瞬間。榮の中で理性を繋ぎ止めていた最期の糸が呆気なく切れ、



「教えてくれたら――」



アスピラの冷酷な言葉が最後まで紡がれるのを、思考が拒絶。

一線の境界を越えた榮の身体は、すでに頭で命令を出すより早く、反射的に弾き出されていた。


一歩、二歩――


床を力任せに蹴り飛ばし、間合いを一気に踏み潰す。


視界の中心に捕らえたのは、感情を欠いたアスピラの顔面。榮は赤くなるほど握り締めた拳を、ありったけの怒りとともに真っ直ぐ振り抜いた……!



「アスピラァァァーー!」



ゴツッ――!!



静寂に包まれていた神域に、肉と骨が激しくぶつかり合う鈍い打撃音が嫌な重さで響き渡った。



「……うッ!」



期せぬ榮の奇襲に不覚を取ったのか、アスピラはそのまま地面へと倒れ込み、尻もちをついた格好のまま呆然と動きを止めている。



(今だっ………!)



相手の隙はほんの一瞬だ。反撃の機会を与える猶予すらない。

榮はアスピラの手から離れ、血痕に染まった砂利に横たわるみたの腕を強く引っ張り引き寄せた。



「みたさん………いや、――みた!!」



榮の叫び声に返事は見受けられなかったが、血に濡れたみたの小さな口から「はる……」と悲痛に囁く声がした。



(まだ息もある。このまま――)



毒でぐったりと重い彼女の全身を強引に抱え直すと、肺が焼けるような呼吸と、激しい鼓動だけが耳元で鳴り響く。


踵を返し、神域の出口に向かって無我夢中で地を蹴った。



「みた、ごめんな。俺が非力で――」



ただ一刻も早くこの死地を脱するため、みたを背中で抱えたまま、暗闇の先にある光を目指して全力で疾走する榮であったのだ。







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