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特異社会の『傍観者』として  作者: はるぱる
第二章 『伏見稲荷編』
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番外編  至高のカレーライスをつくろう 前編

お読みいただきありがとうございます!


本編の内容を読みやすくしています。なので更新が遅くなるかも。



まずは自己紹介させてほしい。

俺の名前は青石 蒼真(あおいし そうま)。普通の、どこにでもいるような高校生。


特技は料理、趣味も料理と……いや、悲しいなぁ。


何故かって? 


それは男子高校生の趣味が料理というのは、現代社会において少々『家庭的すぎてモテない』というバグを抱えている気がしなくもないから。



あとたぶん、それがモテない理由に直結しているんだと思う……。(勉強が出来て顔が良くても、性格や趣味がアレってよく言われる)



だが、そんな周囲からの評価などはどうでもいい。なぜなら今日、俺の目の前には、子どもたちの欲望を具現化したような『完璧な戦場』が広がっているのだ。



――そう、今日のメニューはカレーライス。



◇



休日、親が仕事で留守にしている我が家のキッチンで、俺は静かに闘志を燃やしていた。


一口にカレーと言っても、市販のルーをただ溶かすだけの安易な道を選ぶつもりは毛頭ない。かと言って、何十種もあるスパイスを調合する、引き返せない暗黒に足を踏み入れる気もない。


目指すは『市販のルーを極限まで美味しくさせる、究極の家庭的カレー』。



「まずはお前だ、玉ねぎ」



まな板の上で、玉ねぎを小気味よい音を立てながらくし切りにする。


くし切りにしたほうが煮たときに煮崩れしずらく、玉ねぎの存在感やしっかりとした(シャキシャキ)食感を楽しめる。人によってはみじん切りだの薄切りだの言っているが……食べやすければいいのだ。


続いて人参とじゃがいもを一口大の大きさに切る。特に人参はしっかり洗えば皮ごといける。十分に煮込めば皮なんて気にならなくなるし、なによりそのままの方が栄養も高い。

でもじゃがいもの緑色に変色した部分があるやつはダメだ。基本だけど――




野菜を切り終え、蒼真は肉の工程へと進む。


使うのは豚肉の薄切り。豚肉は火も通りやすく、時短になるから今回選んだ。

煮たときにとろけ出る、程よい濃厚な脂。カレーのマイルドさを引き立てる味。あとリーズナブル。

きっと豚肉は、今回の『目的』に最も貢献してくれると思う。



早速、キッチンバサミで肉を手頃な大きさにカットしていく。

豚肉問わず肉全般はベタつくし、筋があるからとにかく包丁だと切りづらい。



(煮込むと少し小さくなるから、大きめに切るか)



肉の工程が終わり、続けて具材を炒める工程に入る。


サラダ油を引いた鍋の中に、玉ねぎ⇒じゃがいも⇒人参⇒豚肉の順で投入。

具材に大体でいいので、火が通ったら水を加える。アクを丁寧にすくい取りながら弱火でじっくりと煮込んでいく――。



「よしよし、いい感じだ」



頃合いを見て火を止め、市販のルーを鍋に入れる。時々鍋を底からよくかき混ぜて、焦げないように数分煮込む。

以前、かき混ぜないで作ったときは大失敗したからな。見た目が良くても匂いが焦げ臭くて、食べる気にもならなかった。



(結局、試しに一口食べたら腹下した記憶が……)



そんな事を考えていると、もう『カレー』は完成しているのであった。



「よし、完璧だ。えっと……福神漬は――」



その時、ピンポーンと家の呼び鈴を鳴らす音が聞こえた。



「ん、誰だ?」



玄関の扉を開けると、そこには 神代 榮(じんだい はる) が何気ない表情で立っていた。



「あぁ。なんだ」



黒髪で小さい癖っ毛がところどころにあるマッシュ。丸目で二重。身長は百六十後半。

なんとなく犬系男子とやらを彷彿とさせる見た目だが、実際はひん曲がって違う。


こいつはとにかく、どんな事に対しても素直になれない。たまに何考えてんのかわかんない表情になる。中学校で同じ生徒会をしてたときも、自分から意見を出すことなど一切していなかった。

つまり、引っ込み思案なのだ。



――でも、本当は優しいんだよなぁ。



「どうした榮。何か用か?」


「あ、いえ、借りていた本を返しに来たんですが……」


「何これ……なんか美味しそうな匂いがする」



突然、榮の話を遮る甘くて幼い声が遮る。榮の背後から、白い髪の少女がひょこんと顔を覗かせた。



「蒼真、こんにちは。……これやっぱりカレーの匂い?」


「そうだけど、どうした」


「いや、なんかカレーだなって」



いかにもカレーが食べたい、ってことが丸分かりなこの少女の名は 五葉(いつは)。


雪のように白く、腰まで伸びた髪、淡い黄色の大きな目。誰が見ても可愛いと思えるような可憐な顔立ち。身長は百四十センチ真ん中あたり。

そして、榮の家に居候している訳あり小学生。年齢の割に落ち着いて、俺達のことも対等に名前で呼ぶしっかり者だ。


相変わらず、小さな鼻をヒクヒクさせて、扉の奥の匂いを嗅ぐ五葉の姿はとても可愛らしい。



「榮に五葉か。ちょうどカレーが出来たとこだけど」


「すみません、返すだけなのですぐ帰るつもり……」



そういうものの、榮の視線は蒼真を向いておらず、扉の奥に釘付けである。

本当はカレー食べたいんだろ。



「榮? あからさま態度に出てるよ? 本当は食べたいんでしょ?」



と、俺の憶測をピシャリと言い当てた五葉。



「え、いやぁ……そんなことないけど」


「でもお腹の音も聞こえてきたし、なにより朝ごはん食べてないんだよね?」


「う、うん」



なるほど。どうりでカレーが食べたいってわけね。ならいっそ、食っていってもらうか。



「別に食べていってもいいぞ。カレーも一人で食べられる量じゃないし」


「え、いいの? じゃあお言葉に甘えて」



言ったそばから、リビングに向かってスッと小走りする五葉。

やっばガキだな。



「蒼真さん、本当にいいんですか?」


「ああ、これといって断る理由もないしな」


「じゃ、じゃあ、遠慮せずにいただきます」



こうして、今にもカレーを口にしたいであろう榮は、足早にリビングに歩いていった。



「よし……。でもあと一人くらい誘おうかな」



五葉。榮。俺でカレーを食べてもいいんだが、この三人はそんなに食べるといったメンツじゃないんだよなぁ。

誰か、今から家に来れそうな人はいないかな。



――あ、この人でいいか。誘っちゃおっと。







































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