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特異社会の『傍観者』として  作者: はるぱる
第二章 『伏見稲荷編』
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50話 少し度肝を抜かれる会話

50話をお読みいただきありがとうございます。


それぞれ異能について知る榮。彼らはどのような異能を持ち合わせているのか――

「さて……次は蒼真と五葉について話しますか」


澪華が、場の空気をスパッと切り替えるように、そう切り出した。


澪華さんの異能は、あらゆるものを一瞬で破壊できるが、その分の代償がある――『カルサイト眼』

では、他の二人はどんな異能を所持しているのか――


澪華は一度歩みを止め、榮の方を少しだけ振り返りながら話し始める。


「五葉は、

・火

・水

・電気

・身体能力強化

など、それぞれを巧みにコントロールできるというものですね」


(――火、水、電気……それに身体能力強化だって……!?)


初めて五葉に出会ったあの日の光景が、激流のように脳裏に押し寄せる。


あの時、周りの空気をピリピリと圧迫していた、恐ろしいほどの雰囲気。 

普通の人間からは絶対に感じられない、あの異様な気配。 そして――鮮やかな白髪と、夜闇に妖しく光る、淡い黄色の瞳。


さらに、公園で男を軽々と吹き飛ばしたときの風のようなもの。


これらすべての記憶を今、改めて脳内で噛み砕く。


(普通ではないことくらいは……薄々勘付いていたけど……)


やっぱり、五葉という存在は、どこか他の誰とも決定的に異なっている。

という、そんな確信を榮は内心抱いていた。


思考を巡らせている榮を置いて、澪華は続けて言葉を紡ぐ。


「そして、蒼真についてですが――彼は自分自身の『体力』を、『波動』に変換して放つ能力だと……本人は言っていました」


「……体力を、波動に?」


「はい。ただ、私は彼の異能を直接目で見たことがないので、実際にどんなものなのか、はたまたどんな現象が起きるのかまでは分からないのですが……」


――蒼真さんの異能も、これで分かった。でも、彼にそんな超常の力があるなんて、今日この時までまったく気付かなかったけれど。


「……というふうに、ここまで私含め三人の能力について説明しました。他に聞きたいことがあればどうぞ」


「あ、いえ……もう大丈夫です。ありがとうございました」


そこで、澪華との少し度肝を抜かれた会話は幕を閉じ、再び伏見稲荷への歩みへと変えていった――。



◇


京都の夜もすっかり黒に染まり、伏見稲荷へ着いた頃は、もう七時をとっくに過ぎていた。


「遅かったね」


着いて目の前にいたのは、夜の夜風に白髪を波打って揺らしている五葉の姿。


「ああ、ごめんな。警察への説明に思ったより時間がかかってさ。それと異能のことについて、澪華さんと色々話してきた」


「……そっか」


五葉は不思議と手短に会話を切る。


普通は「どんなことを話したの?」とか聞くと思うのだが――ますます疑問が浮かぶ。


(まあ、今はいいや……)


「こっち」


五葉に案内されながら神社の奥へと進んで行く。

一度歩いた道のはずなのに、不思議と空気が違って感じられた。




――前を歩いていた五葉が、ピタッと足を止める。


「着いたよ」


その視線の先にいたのは、薄暗い境内の、石段の脇へ腰を下ろしている蒼真。


彼の右脚には、応急処置の包帯が何重にも巻かれ、傷口を固定されている。顔色はまだ優れないものの、こちらを見据えるその意識だけは、はっきりとしていた。


「蒼真さん……!」


榮のその声に気付いた蒼真はこちらを向く。


「榮か、心配かけたな……」


「もう怪我は平気なんですか?」


「まあ走るのは少し厳しいけど、命に関わる傷じゃない」


「はぁ……よかったぁ……」


榮がホッとして顔を横に向けると――みたが、蒼真の右脚の傷へ向けて手をかざし、静かに目を閉じている。


「……みた様」


「む、すまんがもう少し静かにしておれ。傷を癒やしておる最中じゃ」




――それからしばらくして、みたが静かに手を落とす。同時に、蒼真の脚元を包んでいた『柔らかい光』が消えていく。


「これでよい。どうじゃ蒼真、少しは楽になれたかのう」


みたの言葉を聞いた蒼真は、恐る恐る右脚を動かしてみる。

が、先ほどまで走ることすら困難だった痛みはほとんど消え、足に力も入る。


「ありがとうございます、みた様」


「……礼を言うにはまだ早いぞ。お前さんの傷そのものは癒した。じゃがお前さんの脚には別のものも残っておったぞ」


「別のもの……?」


「うむ。――それは『毒』じゃ」


みたは、蒼真の脚元を小さく指差す。


「ナイフが刺さった傷口から、ごく微量の毒が入り込んでおった。量はごくわずかじゃが、そのまま放置しておれば、時間とともに全身へ回っておったじゃろう」


自分の右脚へと、蒼真はそっと視線を落とした。


あの一投には、ただ傷を負わせる以上の意味があったのだ。


「幸い、気付くのが早かった。肉体の傷と一緒に、毒もすべて取り除いておる。今は特に心配せんでもいい」


その言葉を聞き、蒼真はようやく憑き物が落ちたように安堵の息をつく。




――アスピラが残していった傷跡は、蒼真の脚だけではない。五人それぞれの胸にも、強い緊張といくつかの疑問が重く残っていた。


「さて……蒼真の傷も癒えたことじゃ。いつまでも考え込んでおっても始まらぬ」


いつもの、優しい笑顔のみたに戻る。


「早速、話を整理するとしよう」


澪華も暗い雰囲気を捨てて、真剣に話に乗り出す。


「そうですね。今日だけでも、分かったことが多すぎます」


「分かったことより、分からないことのほうが多い気もするけどね」


五葉も先程まで下を向いていたが、今は綺麗な白髪の髪を揺らし、淡い黄色の目を、見開きながら話す姿があった。

蒼真は何気ない表情をしているが、病院で話したときと同じく、爽やかな表情でいる。


「確かに、五葉の言う通りじゃの。じゃからこそ、一つずつ確かめていく」


「まず今日起きたこと。そして、お前さんらが知っていること。そこから順を追って、整理していこうではないか」













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