41話 突然の奇襲
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謎の黒い陰に吹き飛ばされた五葉は、強く壁に押し当てられ――その様子を見ていた他の四人は――。
投稿し始めて一ヶ月、やっと1000PVに到達できそうです。始めて読んでくれた方も、いつも読んでくれる方にも感謝しきれないです!本当にありがとうございます!
――突如として現れた、謎の黒い陰。それは五葉を突然、前に殴り飛ばして、
「そこです……!」
だが、影はすでに十数メートル先。ゆっくりと歩みを止めると、こちらへ背を向けたまま立ち止まった。
――静寂が訪れる。
やがて、その黒い影がゆっくりと振り返り、夕日に照らされた金髪の髪が揺れる――、
その向けられた表情には、以前浮かべていたような挑発的な笑みはなく、あるのは底知れぬ殺意だけ。その紅い瞳は、倒れた五葉だけを真っ直ぐ見続ける。
「五葉ッ!」
榮の叫びが住宅街に響く。吹き飛ばされた五葉は、数メートル先で地面を転がり、何とか片膝をついて体勢を立て直している最中。
「……っ。」
痛みをこらえながら、小さな身体で立ち上がろうとする五葉――その姿を見た澪華の胸に、怒りが込み上げ、冷静だった表情が崩れていく。
「あいつ……!」
五葉を傷つけられたことへの怒り。そして、再び目の前に現れたアスピラへの憤り。反射的に地面を蹴った。
「今度こそ……」
一歩。踏み出したその瞬間に……
「えっ……」
右足に力が入らない。身体が思うように前へ出ず、バランスを崩しかける。
「……くっ!」
もう一度踏み込もうとする。が、今度は右腕に鋭い痛みが走った。思わずその腕を押さえ、
「なんで……!」
焦りが募る。頭では動ける、戦える、そう命じている。なのに、身体がついてこない。
毒の後遺症、そして目の異能を無理やり使った代償。昨日よりは回復しているはず。――しかし、戦えるほどには戻っていなかった。
「動いて……お願いだから……!」
もう一歩踏み出そうとしたところで、足がふらつく。
「澪華!」
蒼真が咄嗟にその肩を支えた。
「無理だ!」
「離してください……!五葉が……五葉が狙われているんです!」
しかし身体は言うことを聞かない。右腕は震え、足元も安定しない。……自分でも分かってしまう。今の自分では、あの時のようには戦えるはずも無いと。
目の前では、アスピラがゆっくりと五葉へ歩き始めていた。その瞳は、他の誰も映っていない。狙いは最初から一人だけ――。
「……また。」
震える声で、
「また、何もできないなんて……」
その言葉には、自分自身への怒りと、どうしようもない無力感が滲んでいるのであった。
――その場に重い空気が流れている。
榮は倒れた五葉を、蒼真は澪華を支えながらアスピラを。それぞれが目の前の状況に意識を向けていた。
その時、重い空気を変える、別の空気に変わったような気がした。
「……?」
榮はふと、後ろに立つみたの異変に気付く。
「みた……?」
返事はない。が、みたは今もアスピラだけをじっと見つめていた。先ほどまでの穏やかな表情はどこにもなく、瞳は静かに細められ琥珀色の瞳孔が丸く光っている。
狐耳はぴんと立ち、ふわりと揺れていた尻尾もぴたりと止まっている。まるで空気そのものが、みたを中心に張り詰めていくようで――、
(……怒っている?)
表情が大きく変わっているわけではない。声を荒げてもいない。
――それなのに。
みたの周囲だけ、空気の温度が下がったような錯覚を覚えて、蒼真もその異変に気付き、静かにみたを見る。
「みた……様?」
しかし、みたは答えない。ただ一歩、ゆっくりと前へ踏み出していくだけ。
コツ……コツ……
異様な気配に気付いたアスピラも歩みを止め、
「……?」
黒く、光のない瞳が、初めて五葉ではなくみたへ向く。
「のう……小娘。」
その声には、今までの柔らかな響きは一切ない。
「わしの目の前で、よくもまあ……好き勝手してくれたの。」
みたの静かな怒りは、まるで長い年月を生きた神が、人の理を踏みにじる者へ向ける裁きのような威圧感を帯びていた。
その場にいた誰の目にも分かっている。
――戦うつもりだと。
榮は息を呑む。先ほどまで穏やかだったみたとはまるで別人のようで、神社で見せていた柔らかな笑みも、のんびりとした口調も見当たらない。
あるのは、静かな怒りだけ。
二人の間に流れる空気は、今にも弾けそうなほど張り詰めていて、どちらかが動けば、戦いが始まる。
「――みた様。」
突然、低く押し殺した声が響き、みたの足は止まった。振り返らずとも、その声の主は――蒼真。
押し殺してきた憎しみが、復讐心が、その一言に滲み出ていたのだ。
「みた様――。」
もう一度その名を呼び、短く息を吸う。
「ここは、俺がやる。俺はこの女を絶対許さない。」
静かな口調でありながら、その場にいる誰よりも怒りに満ちた声。蒼真の胸の奥で燃え続けていた感情が、ついに表へと姿を現したのだった。




