39話 おぞましく、以上な執着
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アスピラ――宝来愛莉の、五葉に対する謎の執着とは――。
――二人は石畳をゆっくりと歩き続けている。
蒼真から一通り話を聞き終えたみたは、腕を組み考え込む。
「……なるほどの。一つ、気になることがある。」
狐耳がぱたぱたと小さく揺れた。
「何でしょう。」
「その娘は、一度榮たちを取り逃がしておる。そのような力を持っておるなら、普通であれば再び姿を現してもおかしくはない。」
「……ですが、それ以降は現れていないらしく、警察に再度聞いたときも、それらしい情報はなくて。」
みたは空を見上げて、小さく息を吐く。
「だからこそ、不自然なのじゃ。姿を消したのか、それとも、まだどこかで機会を窺っておるのか……今はまだ判断できぬ。」
少し考え込んて、みたは蒼真へ向き直る。
「うーむ、一人で考えていても答えは出ぬ。榮、五葉、お前さん、……そして澪華という者。一度、関わりのある面子を集める。」
「それぞれが見たこと、聞いたことを改めて整理すれば、見落としておるものがあるかもしれぬぞ。」
「分かりました、なら俺が三人に連絡しておきます。」
みたも頷き返す。
「うむ。」
「今は、一人ひとりの記憶を合わせることが先じゃ。そうすればきっと、新たな手掛かりが見えてくるはずじゃて。」
同時刻――。
京都市内の、とある高層ビル。
窓から朝の光が差し込み、静まり返った室内を淡く照らしている。
その窓際に、一人の女が立っていた。
金髪の長い髪、美しい反面、どことなく殺気を孕んだ目。
アスピラは窓の外に広がる街並みを無言で見下ろしている。
「……。」
脳裏に蘇るのは、あの忌々しい声。
――『再度、彼らと会うな。次の命令まで待機していろ。』
上の者の、絶対に逆らうことを許さない命令。普通であれば、それに従っているはずだが。
しかし――。
アスピラの口元がゆっくりと歪む。
「ふふっ……、待機、ねぇ。」
小さく笑い声を漏らす。
その笑みには、以前の余裕ではなく、どこか狂気にも似た執着が混じっていた。
脳裏に浮かぶのは、たった一人の少女――。
『五葉』
自分を真正面から吹き飛ばした、あの少女。あの瞬間に見せた瞳、そして自分へ向けた一撃。
ゾクリ、と皮膚が粟立つほどの殺意が膨れ上がる。
「あの子だけは、お前だけは……!」
――決めた。
「命令なんて、どうでもいい。私は私のやりたいようにやる。」
黒い瞳が妖しく細められる。
「次に会ったら――五葉、お前はこの手で殺してやる……。」
誰に向けたものでもなく、自分自身へ刻み込む決意。
アスピラは窓から離れると、ゆっくりとビルの入口へと向かっていく。
「さて――、どこにいるのかな。」
神代 榮。五葉。澪華。
三人の顔を思い浮かべながら、不敵に笑った。
「まだ、この町にいるんでしょ?だったら、見つけるのは時間の問題。」
――ガチャリ、と扉を開ける。
そのまま彼女は街へと姿を消した。
ただ一つの目的のため、五葉を抹殺するために。
――その日の午後五時。
伏見稲荷大社の鳥居を抜けた先。数多くの狐の石像が並ぶ、あの静かな場所に五人の姿があった。
蒼真、榮、五葉、澪華。
そして、その場へ呼び集めた張本人である、みた。
蒼真は周囲を見渡しながら口を開く。
「みんな集まったね。」
腕時計へ目を落とし、小さく頷く。
「予定通り、午後五時。皆、来てくれてありがとう。」
澪華はまっすぐに蒼真を見る。
「それで。」
「集まってすぐで申し訳無いのですが、そこにいる、狐の耳?を生やしている方は……?」
その質問に蒼真はすぐに答えた。
「この人はみた様、まあ……神社の関係者だよ。」
「なるほど、了解しました。」
普通は、人間に狐の耳が生えている人を見たら、誰しもが驚くだろう。
だが、澪華はそれに微動だにしない。
「あと、私たちを集めては何の話を……。」
その問いに、蒼真は一歩前へ出る。
「昨日、みた様と話をしてきた。」
「その中で、今のままでは情報がまとまらないという話になった。だから、一度関係者全員で情報を整理したい――。」
「そういうことで、今日皆を呼んだんだ。」
「確かに。」
五葉は蒼真に同感するように頷き、みたは狐耳を揺らしながら一歩前へ出る。
「うむ、その通りじゃ。」
「お前たちは皆、それぞれ違うものを見て、違うことを知っておる。それを一つにすれば、新たに見えてくるものもあるじゃろう。」
そう言って、みたはその場を仕切るように話していく。
「まずは、一人ずつ話してもらおうかの。」
「些細なことでも構わぬ。記憶に残っておることは、すべてじゃ。」
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