表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能社会の傍観者  作者: はるぱる
PR
2/3

1話 夜陰の邂逅

少女を追いかけた路地裏で、神代 はるを待ち受けていたのは――。

ぜひ最後までお楽しみください!

「……っ!」


俺が手を差し伸べようとした瞬間、女の子の目が開かれた。

怯え、あるいは警戒。次の瞬間、彼女は小さな体をバネのように弾ませ、路地の奥へと猛スピードで走り去っていった。


「あ、おい、待てって――!」


声をかけるが、もう遅かった。

子供の足とは思えないほどの異様な速さで、白い髪が夜の闇に溶けていく。


普通なら、ここで諦めて帰るだろう。深夜の不審な出来事として忘れてしまえばいい。

だが、俺の『鋭すぎる目』は、彼女が走り去った瞬間の違和感を、確かに見逃さなかった。


「地面を踏む音が、全くしなかった…」


アスファルトを蹴る足音も、ランドセルが揺れる物音も、一切聞こえなかったのだ。

まるで、重力を無視して夜の空気を滑るように消えていった。


「絶対おかしい」


気づけば俺は、自分の意思でその白い影を追いかけ、夜の街へと走り出していた。


息を切らしながら角を曲がり、白い髪の影を追いかけた――その矢先だった。


「――しまっ、」


突如目の前に現れた人影に、俺は衝突しそうになって足を止めた。


そこに立っていたのは、見惚れるほどに綺麗な、長い黒髪を持った高身長の女性だった。

仕立てのいいスーツのような服をまとい、夜の闇に溶け込みそうなほど凛とした佇まいで、ただ静かにそこに佇んでいる。

年齢は20歳ほどだろうか。


こんな夜中に、こんな路地裏に、不釣り合いすぎるほどの美女。

恐る恐る、俺はその女性の顔を見上げた。


目が合った、その瞬間。


「……っ!」


彼女は、息を呑むほどに冷たく、刃物のように鋭い眼光でこちらをじっと見据えていた。

その目はただの一般人を見る目じゃない。


「……君」


静まり返った路地裏に、彼女の低くかすれた、ハスキーな声が響く。

氷のように冷徹で、それでいて有無を言わせないような迫力があった。


「この子になにか、用があるの?」


逃げ出そうとした俺の足は、完全に床に縫い付けられたように動かなくなっていた。


だけど、俺の感覚が恐怖で悲鳴を上げている理由は、目の前の女性じゃない。


俺の『目』は、凛として佇む彼女の背後――薄暗い路地のさらに奥を捉えていた。


そこに、いた。

さっき逃げ去ったはずの、あの白髪の少女が、こちらをじっと見つめて立っている。


「なんだ、この圧倒的な空気…」


少女の小さな体から、街の空気をすべて凍らせるかのような、おどろおどろしい圧迫感が放たれていた。


突然、静まり返った路地裏に、幼い声と低い声が響いた。


「君、喋らなきゃわからないですよ」


彼女は冷ややかな視線のまま、呆れたように話した。そして、少女は距離をこちらに近づけながら話す。


「もういいよ澪華、その人はただの『にんげん』だよ」


「……そのようですね。ですが、あなたをここまで尾行してきた理由を……」


「んー…そうだね。あ、でも、澪華はもう先に帰ってていいよ。後は私が聞いておくから」


「承知いたしました」


澪華という女は、少女に一礼すると、夜の闇へと静かに退いでいった。


立場が逆だ。

あの凛とした大人の女性が、この小さな白髪の少女の命令に、完全に従っている。


路地裏に残されたのは、俺と、白髪の少女の二人だけ。


「さて……」


甘くて幼い声が、凍りついた空間に響く。

少女の淡い黄色の瞳が、じっと俺を捉えた。

向けられた視線一つで、俺の体は恐怖のあまり破裂しそうなほどに強張っていく。


(今、逃げるしかない……ッ!)


少女が小さく一歩、こちらへ足を踏み出そうとしたその一瞬。

本能が絶叫した瞬間、縫い付けられていた俺の足が弾かれたように動いた。


「あはは、バイバーイ。『またね』」


背後から少女の笑い声が聞こえる。

俺はもう、後ろを振りかける余裕なんてなかった。

一目散に路地裏を飛び出し、夜の闇を無我夢中で駆け抜けた――。


毎日毎日変わらなかった俺の日常が、あの狂った空間に足を踏み入れた瞬間、完全に音を立てて崩壊を始めた。


――そして、恐怖に怯えた夜が明け。

『次の日の夜』がまたやってくる。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ