プロローグ
初めまして、ご覧いただきありがとうございます。
地方の片隅で生きる少年・神代が、歪んだ異能社会に巻き込まれていく現代ファンタジーです。
これから楽しんでいただけたら嬉しいです!
多くの人が信じている「普通の日常」なんて、どこにもなかった。
親を亡くし、高校にも行けず、地方の祖父母の家に身を寄せている俺は、いつの間にか知ってしまったのだ。
この世界を動かしているのは、教科書に載っている法律や科学じゃない。それぞれの特殊な能力を隠し持ち、闇に紛れて生きている「一部の者たち」だ。
「神代君、今日もお疲れ様。気をつけて帰るんだよ」
「はい、お疲れ様でした」
――バイト帰りのその夜も、俺はただ関わらないように足早に歩いていた。
昼間の熱気がまだ残るアスファルトを踏みしめながら、街灯の薄暗い住宅街を抜けていく。
高校にも行かず、深夜まで働く自分を、周りの奴らは哀れみや好奇の目で見る。
だけど、俺にとってはこれこそが現実だった。
急に、肌を撫でる夜風がピタリと止んだ。
自宅へと続くいつもの近道。
昼間でも光が届かない深い路地裏の前を通り過ぎようとした、その瞬間だった。
「目」が、路地裏の影に潜む小さな『モノ』を敏感に捉えた。
「……ん?」
思わず足を止め、暗がりに視線を凝らす。そこに立っていたのは、小さな白い影――一人の女の子の姿だった。
背中には、夜の闇にはあまりに場違いなランドセル。
腕時計を見た。
時計の針は、夜中の九時をとうに回っている。
普通の小学生なら、とっくに眠っている時間だ。
おかしい。
俺の感覚が、冷たい汗を背中に滲ませながら激しく警鐘を鳴らし始める。
あれは――本当に、人間の子供なのか?
見過ごすことができず、俺は一歩、路地裏の闇へと足を踏み入れた。
「……おい、大丈夫か?」
声をかけた瞬間、女の子はゆっくりと顔を上げた――。




