10話 一歩近づいて
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謎の白髪少女の秘密とは――
少女の口から返ってきたのは、「……うん」のたった一言。が、その短い一言は榮の胸にズシッと響いた。
――目の前にいるこの少女は、自分とはまったく違う世界で生きている。
何故だか、そんな気がしたのだ。
(……でも、現実的にありえないよな――)
いくらこの少女が異様で不思議だとしても、別世界で暮らしているなどという話があるはずもない。
しかし、先程目の当たりにした出来事を、いざ振り返ってみると、あながち否定することもできない――。
(まあ、ひとまずその直感は置いておくとするか……)
さて。
聞きたいことは山ほどある。さっき見た力のこと。あの二人組のこと。そして何より少女自身のこと。
「……一つずつ聞いてもいいか」
「うん、いいよ」
腕を組み、少女の綺羅びやかな黄色の瞳を見ながら、榮は話を切り出した。
「まず、異能っていうのは、本当に生まれつき持ってるもの……なのか?」
「そう。異能は生まれた時から持っている力。後から手に入るものでもない。持つ人によって異なるし、同一の異能を持つ人は……たぶんいない」
「なるほど……」
生まれつき持つ特異な力、それが異能か。
にわかに信じがたい。
「正確な数は、私も知らない。でも、すごく少ないはず。世界中のどこを探しても、ほんの一握りの人しか持ってない……類稀ってやつ? だから、世間ではほとんど知られてないの」
「……だから俺も、ネットの噂で耳にした程度だったのか」
「え? う、うん。きっとそういうこと……」
少女が少し戸惑いがてら頷いた、その時――
「おや、榮じゃないか」
聞き覚えのある声に、榮は振り返る。後ろから、買い物帰りだと思われる祖父母が、にこやかな笑顔でこちらへ歩いてきていた。
「こんな時間まで公園にいたのか」
「あぁ。ちょっとこの子と話をしてただけ」
祖母は隣に立つ少女へ目を向けた。
「こんばんは、お嬢ちゃん」
「……こんばんは」
◇◇ 白髪少女の視点
――榮。
今初めて知ったその名前を、心の中でそっと繰り返す。
(はる…はる……はる………)
初めて知った名前のはずなのに……どこかで聞き覚えのある名前だ。
脳内の記憶をひっくり返し、その名前に合致する人物を探ろうとする。
けれど思い出せない――。
(おかしいなぁ……。確かに聞き覚えがある気がするんだけど……)
◇◇
そうして、祖父母は二人に「暗くなる前には帰るんだよ」と声をかけ、穏やかな笑顔のまま帰っていった。
――二人の姿が見えなくなると、夕暮れ時の公園には再び静けさが回帰した。
風に白髪を優しく揺らしていた少女は、榮の方を向き、少し照れくさそうに笑ってみせる。
「……榮っていうんだね」
「ああ、そうだ。――そういえば、まだ名前を言ってなかったな」
少女は嬉しそうな表情で、榮を上目遣いに直視した。
「俺の名前は、神代 榮だ」
「いい名前だね」
「……ありがとう」
どうやら、この少女は俺が思っていたより普通の子供だ。最初はすごく威圧的な雰囲気を纏っていたから警戒してたけど、いざこうやって顔を合わせたら『異質』とは裏腹に、驚くほど等身大の子供らしさに溢れていた。
白髪に黄色の目という容姿は、あまり見たことないけど……。
と。そこで少女は、何度も口を開きかけては閉じ、言葉を飲み込んでいるようだった。
何かを伝えたい――そんな様子が榮にも伝わってくる。
「……どうした?」
「えっと……少しお願いがあるの」
「お願い?」
「迷惑かもしれない。でも……どうしても……今日はその………あなたの家に行かせてもらえないかな」
少女の声は小さかったが、それでもその願いには真剣な想いが込められているようで――。
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