チュバレルワールド
ー「ねえ、君、タイムリープしてるでしょ。」
「えっっ。いや、あの・・・。」
「ん?甲聖、お前先輩に知り合いいたの?」
「いや、全然初対面のはずなんだけど・・・。」
「?」
「甲聖君、もしかして忘れちゃった?」
「タイムリープって…、先輩も…?」
「え、どう見ても知り合いな感じじゃん。甲聖、ちゃんと紹介してくれよ。」
「はは、隆二君、ごめんだけどちょっと甲聖君を借りてもいいかな?」
「えっ、まぁいいですけど…。あれ?俺、名前言いました?」
「じゃ、借りてくねー!」
隆二の姿がみるみる小さくなりついに見えなくなった時、俺は先輩に連れられ学食まで来ていた。そこでの光景に俺は目を見張った。
大勢の人が昼ごはんを食べに学食を訪れ、その騒がしさは建物の外まで伝播する。俺のなかで「学食」といえばそんなものなのだが、今日に関してはそうでは無かった。たしかに人は大勢いるのだが、全員人形のように固まり止まっているのだ。
「え?これ・・・。」
「急に連れ出してごめんね。いろいろ聞きたいことあるよね。ただ、その前に確認させてほしいんだけどさ・・・甲聖君、私のこと好き、だよね?」
「い、いやそんなこと、だいたい会ったばかりですし?」
「はは。実はね、私、世界を行き来できるんだ。パラレルワールドって分かるかな?」
タイムリープにパラレルワールド、そして周囲の動かない人々。収拾の見込みのない混乱が俺を襲い、正気は蒸気のように飛び始める。
「パラレルワールド…を行き来できるのだとして、なんで俺がタイムリープすることになるんですか?」
「えっとね、私が世界を移動するとき、どこの世界にも属してない状態、「ニヒトス」が発生するんだよね。今がまさにそうなんだけど、ニヒトスが起こっている間はゲームのバグ…みたいな感じで世界の挙動がおかしくなっちゃうんだ。さっきの瞬間移動みたいなのもこの現象を使ってるんだよ。」
「は、はぁ。」
夢であれと願う俺を、彼女の言葉が現実へと引き戻す。
「それでね、私が世界から消えるとき、他の人目線だと何の変化もないように世界が調整するんだけど、一つだけ例外があって、それに該当する人はその世界の直近の分岐点まで戻されちゃうんだ。」
「そ、その例外が俺ってことですか…。ん?じゃあもしかしてその条件ってのが?」
「そう。私に恋心を抱くことなんだ。」
「つまり、俺は前の世界で先輩のことを、す…好きになって、あの演奏のときに先輩が別の世界に移動しようとしたために俺はこの世界の今日に来た、ってことでいいですか?」
「うん。そういうこと。それで、お願いなんだけど。―‶私を好きにならないで欲しいんだ。” 」




