ディチュバニー
─シュバルツが死ぬと、俺も死ぬ─
「え、じゃあ何ですか?俺はどうしようもなく死に続けるしかないんですか?」
目の前の2人に当たっても仕方のないことなのは分かっている。だがそれでも、この先俺を待ち受ける無数の死に対する恐怖が俺を支配していく。
「甲聖君、シュバルツはね、この世界でのあるべき姿を示してるんだ。」
「あるべき姿?」
「そう。甲聖君が見たシュバルツ、自分みたいじゃなかった?」
「え、そうです。俺の腰よりも身長が低くて。」
あの時俺の服の裾を引っ張ってきたシュバルツ。あれは、間違いなく昔の俺だった。
「あれ、昔の俺でした。あれが、あるべき姿だって言うんですか?」
「甲聖君はさ、運命って信じてる?」
「……運命?運命の相手とかそういう?」
シュバルツの話をしていたはずが、突然運命について聞かれている。なんかの冗談だと思ったが、引き込まれるような瞳でまっすぐに俺を見ている先輩と、その後ろで静かに頷いている東郷先生の様子が、これが大事な話であることを示している。
「恋愛に限った話じゃないんだけどね。結論から言うと、この世界で起こることすべては運命で決められてる。1人1人の人生で見てもそう。その人がいつ誰と出会うのか、何の仕事に就くのか、全部最初から決まってるんだ。」
人生が決まってるなんてそんなつまらないことがあるだろうか。だが、この話はどこか引っかかる。
「先輩は以前、世界にはパラレルワールドがあるとおっしゃいました。今の話は、これと矛盾していませんか?」
運命によって結末が決まっているのなら、世界に分岐は起こらないのではないか。
後ろで頷くだけだった東郷先生が俺の目の前に出てくる。
「そこについては私が話そうか。これはまだ推測の域を出ないのだがね。世界は元々一つだったものが分岐してパラレルワールドができたのではない。元々無数に存在していて、その1つ1つに運命というものは定まっている。というのが私と九§縺ッ繧君の考えだ。」
「……なるほど。」
先輩が東郷先生を押しのけて再び前に出てくる。
「色々話して頭が混乱してると思うけどよく聞いて。」
先輩が、両手で俺の顔を挟み、俺の目をまっすぐ見ている。
「君はこれから何度もシュバルツに殺されて、その度に別の世界の過去にタイムリープしてそこでまたさらに強化されたシュバルツに殺される。でも諦めないで。無数にある世界の中には必ずあるはず。私と出会って恋に落ちることが運命で決められた、今の甲聖君を受け入れてくれる世界が。絶対、たどり着いてね。」
俺を励ますように笑うその目元には、きらきらと輝く涙が浮かんでいた。




