チュバ心同体
「それではまず、先ほど君を襲ったシュバルツのことだが──。」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
俺と先生、そして置物のように並ぶ周りの生徒。〇太郎と〇ィオのように、俺と先生のみが動けている。
「なんだね君。手早く説明してしまいたいんだが。」
「あなたは一体何者なんですか!?」
18年生きてきた中で、まさかこんなベタなセリフを言うことになるとは…。
「私のことはさほど重要ではないのですが…、まぁいいでしょう。」
パチン
指を鳴らす先生。突如としてスポットライトが集まり、教団は瞬く間に照らされた。
「私は東郷勇。出身は鹿児島県、好きな食べ物は鳥刺しです。現在は理工学部で教鞭をとっておりまして、九§縺ッ繧君も教え子の一人です。」
これで満足か。そう言わんばかりにこちらを見てくる。
「えっと…、ごめんなさい何も分からないです。」
「なっ、こんなに丁寧な説明で何も分からないだと…。」
やばい、怒らせてしまったか。でもこれ俺は悪くない…よな?
「コラッ!」
突然はたかれる先生の頭。その背後には見慣れた人が立っていた。
「先輩!」
あぁ、よかった。この世界ではまだ生きてるのか…。
「な、なにをするんですか九§縺ッ繧君!」
「東郷先生。あまり生徒を困らせないでくださいよ。私の大事な後輩なんですからね。」
「あ、あの…先輩。」
「あぁ、ごめんね。この人すぐ調子乗っちゃうからさ。というわけで、補講は私が請け負うよ。」
「す、すみません。俺なんのことだか全く──
パンッ
頬に感じる鋭い痛み。それが先輩の平手打ちだと認識するのは容易いことだった。
「私、何度も言ったよね?私を好きにならないでって…。それなのに君は──何度も、何度もリープを繰り返してしまった。その結果、取り返しのつかないことになったんだよ。」
「で、でも俺は先輩のことが──。」
そこで俺は口を噤んだ。頬に涙の伝う先輩の顔は、今まで一度も見たことのないものだった。
「甲聖くん。私はね、甲聖くんの好意が嫌な訳じゃないの。むしろ、君のようにずっと私を想ってループを繰り返す人なんて初めてだった。」
愁いを帯びた微笑みは、美しく、同時に悲哀に満ちていた。
「黒い影──シュバルツ。君も私も何度も殺され、その度にループしてきた。君も気づいてるだろうけど、シュバルツはループの度に力を増幅させる。早く討伐しなければ、世界全体が崩壊する。そうなったら何もかも──終わりなんだ。」
「じゃ、じゃあ討伐すればいいじゃないですか。東郷先生はさっき腕を切り落としてましたし、皆でやれば勝つことだって…!」
話している時に気が付いた。悲哀に満ちた先輩の顔。腕を組み俯く先生。小さな男の子。そしてその正体。
分かった。分かってしまった。
「シュバルツが死ぬと──俺も死ぬんですか。」




