本編40
髪の毛を染めたい
ピアスをあけたい
映画館で号泣したい
富士山を生で見たい
海鮮丼が食べたい
水族館に行ってみたい
クレープを食べてみたい
好物のバウムクーヘンを丸ごと1個食べたい
ハンバーグを作ってみたい
海で思いっきり遊んでみたい
星空の下で寝転びたい
ハルのやりたいことリストは、次々と加えられていく。
ハルが、俺に告げたこと。
まず、自分の病気、そして余命を知っていたということ。
数年前、心臓病の薬を自分で取りに行ったときに、看護師さんが話しているのを聞いてしまったらしい。
母親…ハルコさんには生まれつき体力が少ないから、と説明を受けていた。
医者や看護師にも、病気のことは伏せるようお願いしていたという。
ただ、新人の看護師は知らなかったようで。
たまたま処方された薬を受け取った際、世間話も交えて教えて貰ったと言った。
ハルは、
自分が病気だったこと。
余命があまりないこと。
それを俺や両親が隠していたこと。
それらすべてに「申し訳ない、ごめんなさい」と言った。
これまで気を遣わせて、でもいつ切り出そうか迷っていて、と。
小さな身体で、どれだけ独りで悩んだんだろう。
本当に謝るべきは、全てを隠し通そうとしていた俺なのに。
「ごめん、俺も知ってたんだ……」
ごめん、と言い合っていると、気まずそうに入ってきたリョウが呟いた。
「「え!?」」
2人して涙も引っ込む。
衝撃の事実に、「母さんの日記、たまに盗み見てた…」と爆弾発言をするリョウ。
「いつから…?」
俺が震える声を発せば、頬をぽり、とかいた双子の弟は目を逸らした。
「小1の時…机に置きっぱで。ハルのことが書いてあったから…」
姉さん!
意外と管理雑だったんかい!
オーマイガーと天を仰げば、涙でぐちゃぐちゃのハルが笑う。
「なーんだ、もっと早く打ち明ければよかったなあ」
ほんとにな。
3人でひとしきり笑い合った後、俺は事の発端を思い出した。
「……でもな、俺はやっぱり、あの実験の参加だけは認めない」
そう。
大橋から連絡を受けた、あの研究、実験。
余命を分かっているなら、余計に。
そのときまで、全うして欲しい。
真剣な顔でハルに向き直れば、すぐに伏せられた目が細められる。
「……わかった。じゃあ代わりに2人は、俺のやりたいことリスト一緒にやってよ!」
ニカッと笑ったハルは、いっぱいあるんだから!と続ける。
「おうよ!片っ端から書いていけ!」
「まかせろ」
俺とリョウは、夜通しリスト作成に熱を上げるハルの隣で、
いつかくる別れの日を頭の片隅から捨てられないでいた…。




