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流れ星へ幸せを  作者: 本宮 律
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本編41

半年後。


「……ショウさん、これあくまで提案だから怒らないで欲しいんだけどさ」


既に就寝しているハルを置いて、寝室から出てきたのはリョウだった。

部屋で仕事を片付けていた俺は、んーと伸びをしてテレビのある部屋に向かう。


「どした?彼女でもできたか?」


2人してこたつに入り、俺はみかんを1つ手に取る。

テレビも音楽もない空間は、少しだけ緊張感を纏っていた。


まだ中学生だから、バイトの相談はないだろう。

だとしたら、恋愛の悩みでは…。

あえてハルが寝た後に声をかけるなんて、こいつも可愛いとこあったのか。


なんて呑気に思うも、帰ってきた言葉は的外れもいいところだった。


「いや、夏にハルと大喧嘩した、ショウさんの友達の大学の研究の話覚えてる?」


あー……と。

そんな話あったっけ。


「ほら、死亡確定の宇宙実験」


「ああ、あれ聞いてたのか」


その話の最中は、確かリョウはいなかったからてっきり知らないものだと思っていた。

友人の大橋から受けた、突然の連絡。


やべー、そういえばいい人いたら教えてとか言われてたっけ。

あれから連絡とってなかったし、すっかり忘れてた。


「それがどうした?」


俺はみかんの白い筋を剥きながら聞き返す。


「……あれさ、参加しない?」


「っ、ごほっ、げほっ」


「ちょっ、」


とんでも発言に、綺麗に剥けた実は喉の変なところに入った。

慌てて立ち上がるリョウを気にする余裕もなく、息をするのがやっとだ。


んで。コイツは、何を言ってんだ…?

涙目になりながら原因人物を目で追えば、丁度キッチンから2人分の水を持ってきて座り直す。


何を今更蒸し返してんだ。

あんなん、ダメに決まってんだろうが。


と思いかけたところで、

冒頭、怒らないでと言われたのを思い出す。


受け取った水をがぶ飲みし、喉の違和感がとれたところで声を絞り出した。


「……サンキュ。とりあえず続き、聞くわ」


聞くだけな。

続きを促されると思っていなかったのか、リョウは少しだけ驚いたような表情を見せる。

しかしすぐに頷き、いつもの無表情に戻って話し出した。


「小学生の頃。七夕の短冊にハルが書いたこと」


確か、人の役に立ちたい。

やけに大人びているお願いだと思っていた。

それこそ、短冊に書くような願いなんかじゃ。


「俺が、あの時短冊に書いたこと」


あの時、リョウは恥ずかしがって言わなかったから。

ハルと何度か探したが、結局リョウの短冊は見当たらなかった。


「……ショウさんが、書いてくれたこと」


あれ、俺なんて書いたっけな。

俺ら3人で幸せになりますようにとか?

金が舞い込みますように、だっけ。


なんか忘れたけど、家族のこと書いたのだけは覚えてる。


うん、と首を縦に振れば、リョウは一呼吸置いた。


そして、


「その全部が、その実験への参加で叶うよ」


その言葉に、目を見開く。

リョウは迷いのない瞳で俺を見る。


「だから、参加しようよ。俺、命の保証なくていい。…ハルがいない世界の方が嫌だ」


このままハルが死ぬのを待つのは、耐えられない。

いなくなったあとの方が長い人生なんて。

だったら、一縷の希望にすがってでも。

5年後、10年後の景色を見せたいから。

……3人で、一緒に見たいから。


ポロッと1粒だけ落ちた涙は、リョウの決意の証なんだろう。


正直、一縷なんてもんじゃない。

限りなく0に近い希望。

だけど、このまま何もしなければ、未来は0のままだ。

……なら。


「………………わかった」


あの日、コイツらを引き取った日から、運命は決まっていたのかもしれない。


「大橋に、連絡してみる」


それが、3人で過ごした最後の冬だった。

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