本編14
「シバは?俺暇だからシュリ連れて遊び行かね?」
『ああ、いい……』
『ええ!!なにそれ俺は~!?』
シバの返事途中に、セトに割り込まれた。
お前は無理だろうよ。
今しがた、自分で言った言葉を思い出せ。
『絶対絶対補習一日で終わらせるから誘って~!』
無茶すぎる。
俺とシバがため息をつくと、ちょうど玄関のドアが開く音がした。
「ただいま、雨にやられた!」
姉ちゃんのでかい声が響く。
2階にいてもはっきり聞こえたから、相当な大音量だ。
「姉ちゃんたち帰ってきたから、先落ちるわ。またな」
『おっけ~』
『おつ』
電話を切り、階段をおりる。
降りた先には、大量の紙袋に埋もれるように立っているシュリの姿が。
「おかえり。すんごい濡れたね」
髪の毛から滴る雫。
俺は羽織っていたパーカーをシュリに被せ、おでこに貼り付いた前髪を避ける。
「うん、急で…傘なかったの」
天気予報は雨マーク無かったし、多分夕立ちとかの類いだろう。
「駅から走ったよ。もうへとへと~」
言いながら、びしょ濡れのシュリは俺の身体に手を回した。
ぎゅっと密着した体温。
濡れた服の冷たさと、反するように温かい体温が伝わってきて、変な感触。
ダイチあったかい、と暖を取る彼女に、俺はそれどころでは無かった。
……やばい、やばいやばい!
いや、決してシュリを変な目で見てる訳では無いけど!
妹のように可愛がっているだけだけど!
濡れた首筋、服から透けて見える下着の紐。
いくら何でも、目のやり場に困る…。
それに密着しているから、俺のTシャツも少しずつ湿ってくる。
抱き締め返してあげたいけど、無理だ…!
俺の理性が多分もたな……
「シュリ!お風呂温めたから入ろ……てダイチじゃん。すまんけど荷物リビングに持ってっといて!」
「おう……シュリ行ってきな」
…ありがとう姉ちゃん。
固まって真っ白になっていたであろう、俺の救世主。
俺はシュリの手を解放して、姉ちゃんに預けた。
……っぶねぇ~。
一瞬変なこと考えたわ、俺。
ぬくもりがなくなり、冷たくなっただけのTシャツが俺を冷静にさせる。
着替えようと部屋に戻れば、スマホの画面が光った。
【明日シバも補習来てくれるって~!ダイチも来てよ~】
まだ通話中のアイコンが出ている2人。
俺、せっかく補習免れたのに…?
なんでお前の為に夏休み削って学校行くんだよ、馬鹿だろ。
いやだと返信しようとすると、次いでまたメッセージが来る。
【シュリちゃんも暇なら、前期の授業分くらいは教えてやれると思うけど】
前の学校の範囲が同じならいいけど、と続く。
その文章に、俺の手が止まった。
……たしかに。
シュリってどのくらい勉強できるのか、知識があるのかわからない。
てかそもそも学校とか行ったことあるのか…?
ワンチャン宇宙人説もあるし…。
けど、俺が拾ってしまったから。
とりあえずは人間の生活をしてもらわないといけない。
夏休み明け、急についていけないと可哀想だしな…。
関わりのあるセトとシバがいるなら、本人も安心か。
いや、と打ちかけた文字を削除して、新たに紡ぐ。
【シュリに聞いてみる。多分いけるわ】
ふとベランダを見れば、雲間から少しだけ太陽が覗いていた。




