くえすと46 番外編 スクリーンショット
「そういえばリリィって意外とスクショ撮ってるみたいだけどアレって何に使うの?」
いつものようにレンタル小屋でマッタリしてるとシオンがそんなことを聞いてきた。
「あとで見るんじゃないのか?」
「そりゃそうなんでしょうけど。でもあの子が見てるのあんまり見ないわよ」
「そういやそうだな……聞いてみるか。おーいリリィ~」
そんな俺の声に一心不乱にクリスと一緒にカキ氷を食べていたリリィがカキ氷から顔を上げる。
「ん~なに~」
「お前たまにスクショ撮ってるけどアレどうしてるんだ?」
「あ~あれね~アレはお母さんに定期報告というか元気だから心配しないでね~って感じで送ってるの~」
「ふ~んなるほどな~、だってさ」
「なるほどね……ん? ちょっとリリィどのくらいの頻度で送ってるの?」
「シャクシャク、ん? 一日一通だけど?」
そんな返答に俺はジトーという目をしつつツッコミを入れる。
「………おい」
「はぁ、貴方勉強はできるのに基本的にポンコツなのよね」
ラピスも気づいたのか呆れ顔でリリィに向かってそんな事を言い放つ。
「えっと何で私いきなりそんなこと言われてるの?」
と本気でわからないようでスプーン片手に不満げなリリィ。
「え~っと、あのですねリリィさん。今この世界が五千倍の早さで時間が流れてるのは覚えてますよね?」
「それくらい覚えてるよ、もうイノリさんまで人のことを馬鹿みたいに言う」
何やらイノリの言葉にプンスカ怒っているリリィだったが。
「と言うことはですね一日、二十四時間は十七秒ちょっとなんですよ」
「ほうほ……う、おう……それはまた」
事の重大さに気づいたのか尻すぼみに何やら冷や汗がダラダラと流れだすリリィ。凄いな久々にヘルプエモまで出始めたぞ。
「十七秒に一回添付画像付きのメールが届くなんて嫌がらせとしてはかなりの物ね」
ソコに追い打ちをかけるかのようにシオンが言葉を紡ぐ。
「いつ頃から送ってたんだ?」
「……えっと、リオさんに会った時くらいかな」
「ってーことは……一年くらいか?」
「まあ大雑把に300日だとしてえーと、大体一時間半で三百通、ストーカーも真っ青ね」
「ほ、ほら、お母さん達も娘の身を案じてるだろうしっ!」
「それでも多すぎるわよ、せめて2~3日に一通でいいと思うわよ。大体17秒に一通なんて読んでる間に次がきちゃうじゃない」
というシオンのツッコミにさらにラピスが付け足す。
「そうねどうせ貴方の事だからつらつらとその日あったこととかも書いてるんでしょう?」
「ぐ……ま、まあちょこっとだけ」
明後日の方を向きながら指先で隙間を作り良くある英語のCの字に見えるちょこっとのジェスチャーをしながら消え入りそうな声で答えるリリィ。
俺はそんなリリィの頭をぽむぽむと叩きながら。
「まあ済んだことはどうしようもないしとりあえず一言書いてからメールの頻度を減らせばいいんじゃね、いきなり減らすと留美さんが心配するからな」
「うぅ……わかったぁ」
やっちゃったなぁという表情で留美さん宛のメールをぽちぽちと打ち始めるリリィを見ていたシオンとラピスもなにか思うところがあったのかメーラーを開いて何かを綴り始める。
それを眺めていると俺の横にイノリがいつの間にかやってきて個別チャットが届く。
[いいですね皆さん心配してくれる人たちが居て]
[まあ逆に俺達は二人でここにいるって事がある意味幸運なのかもな]
[不幸じゃないんですか?]
[ん? 莉乃は今のこの状況が不幸だと思ってんの?]
[……ふふ、全然不幸じゃないですね]
俺の問にメールを書くのに没頭している三人を眺めた後微笑みながらそう答える莉乃。
[私のお姉さん候補と一緒に過ごせているんですから]
そして何やら訳の分からない事を言い出したが華麗にスルーしてみたところ。
[スルーしないでください兄さん]
[いやどう答えろっていうんだよ]
[む~じゃあ兄さんの一番は誰なんです?]
[お前]
[もう、そう言うのじゃなくて異性としての一番です]
[……二次元はふk[含みません]あ、はい]
[もう兄さんはいつもいつもそうやってはぐらかす]
[って言われてもなぁ、う~んコイツラのことそういう風に見たことないって言ったら嘘になるけどだからといってそういう意味で好きかと言われると……う~ん]
[はっきりしてください兄さん]
[そんなこと言われてもなぁリリィやラピスはともかくシオンなんてリアルであったこともないしあいつはアイドルなんだぞ?]
[恋愛に世界と職業は関係ないです!]
[なんか凄くいいこと言ってるけどお前彼氏居たことないだろ]
[それは横においといてください]
何やらジェスチャーで横に置かれたので元の位置に戻してみた。
[戻さないでください]
はたき落とされた。
[そんなに怒らんでも……まあ百歩譲って関係ないとしても仮に俺が惚れる可能性はあってもあいつらが俺に惚れる可能性が限りなくゼロに近いからこんな話はそもそも無意味だ]
という俺の完璧な反論に対し妹は溜息一つ言葉を伝えてくる。
[はぁ……好かれないようにしてるのは兄さんじゃないですか。それにリリィさんとラピスさんには元からバレてますしシオンさんにももうバレてますよ]
[な、なんのことかなぁ]
いつもの様に適当に誤魔化しながらポリポリと頬かいていると床にぐて~っと寝そべっていたクリスがもそもそと起き上がり三人の間をキョロキョロと首を振りつつトテトテと歩き回ったあと俺とイノリの間によっこいしょと座り込みボケーと三人の方を眺めだす。
そんなクリスの頭をわさわさと撫でつつふと思う、このゲームがクリアされたらコイツはどうなるんだろうな? と。こんな事に成ってしまったゲームがそのままサービスが続くわけはないだろうしホントどうなるんだろうな。それにもしコイツが消えるなんてことに成ったら……まあ今俺がどうこう考えてもどうしようもないかせめてラストダンジョンに行けるように成ってから考えても遅くはないだろ。
なので他のことを考えようと思ったところでさっきの莉乃の質問が頭をよぎる。
兄さんの一番はだれなんです?
あらためてアイツラのことを考えてみる。
まずリリィ、銀のポニテを揺らしつつペシペシと文章を打っている残念美少女。出会った当初はお嬢様チックな猫かぶりだったけど化けの皮を剥がせば本当にただの残念な美少女だった。何故だか出会って数日でオフ会をやる羽目になりそして次の週には一緒に住む羽目にも成ってしまった少女。まあコイツのお陰で家に帰ってからアニメとゲームしかやることなかった俺の生活に多少の彩りが添えられた……気もしたけど勉強教えることが追加されただけで基本的にはアニメとゲームを一緒にやるように成っただけだからあんまり変わってないな。まあそれでも一人でいるよりかは楽しくなったことだけは事実だ。
そして一人の女の子としてみた場合だが……まず見た目はおっぱい以外はパーフェクトと言うかなんというかほんとなんでおっぱいそんなに無いのってくらいないのがある意味潔くて良い。まあそれでもちゃんと膨らみはあるからひょっとしたらまだ希望は持てるんじゃないかな? とか思ってるとペシペシと文字を打つたびに揺れていた銀の尻尾が釣りの浮き輪のようにピクンと動くとリリィの頭がこっちを向いたかと思えば何やら首を傾げてまたメーラーに向き直る。……野生の感か何かですかねリリィさんマジ怖い。
そんな感じで見た目の欠点は欠点といえるものもなく内面的には一緒にいて楽しいしやりたいことはやるけど自分勝手というわけでもなく人の嫌がることはやらない至って理想的な性格のような気がする。もし結婚とかしても飽きもこなさそうだし日々が楽しそう……あれ? リリィさん地味にポイント高いなおい。
次にそのそばで瑠璃色の髪を揺らしメガネをクイッとしながら軽やかにメールを打っているラピスはもう何ていうかホント委員長って感じ。リアルで最初に知り合った時はなんか無理してるなぁとは思ったが色々と話を聞く限りやっぱり無理してんじゃないのかなぁと思ったりした。何かと責任を負いたがるというか自分がやらなくちゃと要らないものまで背負うタイプ……ほんとおせっかい委員長そのもの。
女の子として見ると外見は何処か抜きん出たところはないが全体的にプロポーションが整っていて仕草のせいもあるけど本当に綺麗。内面はというと世話好きで「ほんとにしょうがないわね」とか言いながらちゃんと相手してくれる理想的な委員長。出会った当初はいろんなものをしょい込みすぎてアレだったけど最近はなんか吹っ切れたらしくなんかスッキリした感じになってきたせいもあって厳しい中にも可愛さが溢れてきてなんかいい感じ。しかもお家の関係か本人がただやりたかったのか色んな習い事などをやっているおかげでこれと言って弱点がないほどの万能っぷり。多分奥さんにしたら超快適生活が待っていそうだけどどっちかというと社長とかに成ってバリバリ働いてそうだからヒモ生活ができそうだな、何それ素晴らしい。
そして最後に金色のふわもことした髪をふよんふよん揺らしながら書いては消して書いては消してと一向に進んでないメールを睨みつけているシオン……なんだけど。まずコイツはリアルで会ったことがない。なので外見的特徴がゲームの中基準に成ってしまうわけだが本人的にはいじってないと言っているのでそれを前提に言えばなんて言うかこう落ち着く体型と言うか万人受けするというか可もなく不可もなしと言った感じ。リアルで人気アイドルというらしいので何となくは理解できる感じだ。
アイドル云々はおいといて一人の女の子としてみた場合……なんというかまぁ典型的なツンデレと言うかお前もうわざとやってんじゃねーの? と思わざるを得ないレベルでツンデレ、しかも天然ドジっ子も入ってるあと中二病。もう絶滅危惧種である。コイツ素のままでアイドルやらせたほうが人気出るんじゃないのかって感じ。色んな意味で一緒にいても飽きないし何かと面白い反応があるからからかいやすい。きっと一番俺を嫌ってくれてるはずだ。
そもそもなんで俺が皆に嫌われようとしてるかというと建前上は俺に何があっても残った奴らが気にしない様にという事なんだけど、まあ莉乃は置いといて。でもまあ本音を言うと嫌われるのがイヤだからだ。え? 嫌われようとしてるんだからそれでいいじゃないかって? うーん、なんというか好かれてると思ってたら実は嫌われてました、って感じより最初から嫌われてたほうが悲しくならないじゃないか! という実は結構自意識過剰というか、うわ何コイツきもいって感じの理由なんだけどな。
まあそんな事を考えていると隣に立つ妹の声が脳内に響く。
[兄さんひょっとしてまだあの事が忘れられないんですか]
[あの事? あぁアレか、いや違うよ。まあ多少関係なくはないけどアレはもう過去の事だ]
そうアレはもう忘れ去ったはずの記憶。高校二年の秋から冬にかけて俺に訪れた小さな春。
「……クス……ちょ………ってば」
そう言えばあいつの写真とかってどこやっt
ゴスッ!
「アックスってば返事くらいしなさいよ」
俺の腹に食い込んでいた足を戻しながらそうおっしゃるリリィさん。
「あ、あのなぁ今俺が甘酸っぱい青春のひとときを回想しようとしてたのに何しやがりますかお前は」
「今日の晩御飯どうするって聞きたかったんだけどアンタの分なしでいいのね」
「いやいや食べるよ食べますよ?」
「じゃあ手伝いなさいよ」
いつの間にやらメールを書き終わったようで「もーほんとにしょうがないなー」といった雰囲気で銀の尻尾を揺らしながら踵を返してキッチンに歩いていくリリィ。そんじゃパパっと作りますか。
「いっただっきまーっす」
いつもの調子を取り戻した我らがリリィさんの掛け声のもと食事が始まる。
ビーフシチューのような熊系のモンスターのお肉がモリモリと入ったシチューを口に運びつつさっき思い出しかけたことをまた思い出す。そっかちょうどコイツラと同じくらいの時だったのか……もうそんなに経つんだな。あの時もし同じクラスにこんな奴らがいたら少しは違った学生生活だったかな?
とモシャモシャとサラダを頬張るリリィ、上品にサンドイッチをハムハムと食べるラピス、もっとーと尻尾を振るクリスにお肉を追加しているシオンを見ながら思うが、まあコイツラが同じクラスにいたとしてもまず話すらしないまま一年過ごしそうだよな。文字道理住む世界が違いすぎる。コイツラは一人ひとりがヒロインになれる存在だけど俺は特になんの取り柄も持ってないその他大勢の一人に過ぎないからな。
それに別に俺はこいつらのヒーローになんてならなくていい、サブキャラの一人としてこいつらを無事に元の世界に返せれば……そんなことを思いつつみんなを眺めていると。
「貴方気持ち悪いわよ」
「何こっち見てんのよ」
「もぎゅもぎゅもぎゅ?もぎゅもぎゅ」
なんかちょっと挫けそう。
FF14が一段落したのでペースが上がると思ったら変わらなかったでござる




