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ファンタジークエスト  作者: 里山
三章 はじまりは唐突に

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くえすと42 


 海岸を目指してテクテクと暫く歩くと視界がひらけてゴツゴツとした岩場が見え、ざぱーんざぱーんと押しては引き引いては押しそして岩肌にあたり細かい水しぶきになり消えていく波、そして岩場に広がるウニョウニョと蠢く何かの群れ、群れ! 群れっ!

「大事なことなので三回言いましたっ!」

 突如声を上げた私にビックリしたのか隣で固まっていたラピスとシオンがビクンッ! とする中。

「おーこりゃまたいっぱいいるなぁ良い経験値になりそうだ」

「私はあんまり戦いたくないんですが」

 そんな呑気な会話をする兄妹に向かって私は女子高生三人組を代表してツッコミを入れる。

「良い経験値になりそうだ。っじゃないわよっ! 何よあの気持ち悪いのっ!」

 そう言って岩場をウニョウニョと動きまわる膝丈ほどの軟体生物を指さす、その姿はさながら……さながら。……何だろ、あんなの見たこと無いから解んないよ。

「何ってRPGには欠かせないエロ担当触手系モンスター【ヒドラ】さんだけど?」

「兄さん軽くセクハラだと思いますよ」

「え? マジデ?」

 こ、これが噂に名高い触手系モンスターか。同じ触手でもお花さんとは隔絶した生理的に受け付けない触手を見ていると、ふと嫌なことに思考が行き当たる。

「ね、ねぇまさかとは思うんだけど、【あたりめのようなもの】って……」

 と呟くように尋ねた私の耳に

「リリィくん正解です!」

 何やらいい笑顔でそんなことをのたまう奴がいたがもうそんなことはどうでもいい。

「わたしをころしてええええええええええいやああああああああきもいいいいいいいいいいいい」

「いや殺してもあんまり変わらないような?」

「いや一回この体を消滅させれば何となくスッキリしそうな気がするんだよぉぉぉ」

「いいじゃない別にもう食べてしまったものはしょうがないし」

「ラピスは食べてないからそんなことを言えるんだよっ!」

 そ、そうだ自殺しよう、そうしようなどとアホな事を考えている私を他所に。

「とりあえず気持ち悪いから倒しちゃうけどあれって水属性であってる?」

 そんな冷静なシオンの声が聞こえる。

「おー水属性で合ってるぞ~」

「あ、待ってください、確かあの手の食べ物ってテイミングモンスターのおやつになるって前に何処かで見たような気がしますけど……どうします?」

 その言葉に皆の視線がクリスに集まる。

「クリス~あんなの食べないよね? 要らないよね? この世から消していいよね?」

 そんな事をクリスに泣きつきながらクリスの顔をもふもふしてると何を勘違いしたのかクリスがベロベロ私の顔を舐めてくる。

「そんなこと言ってもわからないでしょ。クリスこれ食べる?」

 そう言ってラピスがまだ持っていた【あたりめのようなもの】をクリスに差し出すと。クンクンと匂いを嗅いだ後もきゅもきゅと食べてしまう、そして。

「がう♪」

 パタパタと尻尾を振っているその姿は誰がどう見ても「もっと欲しいな♪」と言っている……。

「ああああ、私はそんな子に育てた覚えはないのにぃぃ」

「別に咎められることはしてないと思うのだけど」

「よし、そうと決まればやるわっ!」

 ふえええシオンが無駄にやる気を出してるぅ、クリスの事になるとなんでそんなに張り切るのぉ。

「つまり乾かして炙ればいいのよね?」

「ん~多分そうなんじゃないかな? あとモードの設定忘れんなよ~」

「わかってるわよ、私を誰だと思ってるの?」

 そんな無駄にかっこいいセリフを吐きながらシオンが詠唱に入った。

「ん~あんまり聞かない詠唱だな」

「そもそも大魔法を使える人なんてそんなに居ませんし」

「まあ、そうだけどな」

「それにしてもいつ見ても綺麗ね」

「うぅぅぅ」

 シオンの流れるようなモーションとそれに呼応するライトエフェクト、さらにそれを際立たせる歌うように詠われる詠唱がひとつの完成された作品のようにも思える。だが私はうなだれたまま未だにクリスにベロベロと慰められていた。そんな中力強い言葉が発せられる。

「〈ファイヤー・ストーム〉!」

 どうやら設置型の範囲攻撃の様でウニョウニョと蠢く【ヒドラ】のど真ん中に突如炎の嵐が巻き起こる。

「おお~凄いなこりゃ」

「凄いですねぇ」

「夜見たらさぞかし綺麗でしょうね」

 と何やら言っているのが聞こえるがその言葉の合間に聞こえる、ギュイ、だの、キュイ、だのと鳴いている何かを想像したくもなくうなだれていると何やら香ばしい香りがしてくる。……ぐるるるると自分のお腹がなったような気がした。そんな自分が少し嫌になった。

 

 十数秒の炎の乱舞が終わりを告げ辺には良い感じに炙られた【ヒドラ】あらため【あたりめのようなもの】あらため【クリスのおやつ】が散乱していた。あらためとあたりめって似てるよね?と現実逃避をしていると皆の声が聞こえてくる。

「んじゃこれの回収は、えーと」

「私がやるわ」

 そう言って軽く手を上げるシオン。

「そんじゃ任せた。そんでイノリは釣りを頼む」

「解りました任せてください」

「そんで残った俺達は」

「私達は?」

「もうなんでもいいよぅ」

「鍋の準備でもするか」

「でも、具材が少な過ぎない?」

「後はそこら辺に貝とかカニが居るからそれでも捕まえようぜ」

「なるほどね」

「私はここで鍋見てるよう……」

 そう言って四次元ポケットから取り出した調理セットを岩場にセットして。

「し~お~ん~火~」

 クリスと一緒に【クリスのおやつ】拾ってるシオンにそう言うと。

「〈ファイヤー〉」

 そんな声とともにシオンの杖先から発生した炎がひゅるひゅると飛んで鍋の周りに着弾して燃え盛り、薪に引火する。まわりで燃えていた炎は数瞬後綺麗に消えていた。

「ありがと~。あ、ご飯前だから今あんまり食べさせちゃだめだよ~」

 お礼と注意を一緒にしたものを返すと今まさにクリスに食べさせようとしていたシオンはビクンと固まりそのままポケットに仕舞う、クリスももうわかっているのかちょっとしょんぼりはするものの気を取り直してシオンの後にくっついてトテトテ歩き回っている。

 ピコピコとシステムメニューから適当に料理の設定をしてボトボトと調味料やポケットに入っている野菜等を放り込む。そう言えばポケットなのだがギルドに入ると個人とは別にギルド用のスペースが作成されるようで色々と便利になった。話に聞くと結婚すると更に変わるらしい。まあ関係ないけどね。


[リリィ蟹何匹か捕れたわよ]

[こっちも捕れたぞ~]

「[へ~い]」

 そんなPTチャットに返事を返しつつギルド用のスペースからタラバガニの二倍くらいのサイズの蟹を引っ張りだしてはパキンポキンと短剣で切り刻みつつ放り込んでいく。

[リリィさん釣れましたよ~]

「[ほいさー]」

 と魚を取り出すと……。

「[えっとこれはどうすれば……?]」

 何やらリアルのサイズで言うとマグロくらいの大きさの【鯵っぽい何か】が現れる。

[焼くかお刺身ですかね?]

「[な、なるほど……取り敢えずお刺身にしてみようかな]」

 この世界の食べ物は食材の場合基本的には毒などは存在せず悪くても何かのデバフがかかるくらいなので取り敢えず食べてみると言う方法が取りやすい、ただ凄く不味い時があるのでそういう時は調理法を変えればなんとかなったりもする。なのでお魚の場合は取り敢えずお刺身、やばかったら焼いたり煮たりお鍋に入れたりと言った感じになる。

「お刺身か……ふ、短剣スキルがうなるZE!〈ヴァイパースラッ「やめなさい」ごふっ!」

 華麗な短剣技を披露しようとした私の後頭部にトゲ付きメイスがクリティカル気味に刺さっていた。

「あ、あの痛いんだけどラピスさん」

「あなたが馬鹿なことをやってるからでしょ」

「えーお刺身にしようとしてただけじゃん」

「はぁ、そのスキルは毒効果付きでしょ。あなた私達を殺す気?」

「あ……やだなぁそんなのわかってたよう」

「いま、あ、って言ったわよね、あ、って」

「やだなぁ気のせいだよ気のせい」

「はぁ、もういいわ、後は私がやるからお鍋見てて」

「は~い」

 そう言ってポケットの中から出刃包丁を取り出したラピスがスキルも使わずサクサクと【鯵っぽいなにか】を捌いていくのを横目に鍋をボケーと眺めつつ偶に味見をしながら調味料をたしたりしていると。

「ねぇ結婚ってどんな感じなのかな」

 そんな声が何故か私の口から漏れた……その瞬間ザスっと言う攻撃音がした後ラピスが自分にヒールを唱えていた。見れば指が何本かなくなっている。

「もうラピスはそそっかしいなぁどうやったら指を切り落とすのさ」

「あ、貴方のせいでしょっ!」

「え~」

「貴方前から脈絡もないことたまに言うと思っていたけど今のは流石の私も全くの埒外よ!」

 う~んたしかに私も何であんな事言ったのか良く解んないけど。

「何? どうかしたの?」

 そこにクリスを連れたシオンがやってくると。

「この子がまた突拍子もない事を突然言い出したのよ」

「そりゃまた凄そうね、で? なんて」

「ん~結婚ってどんな感じなのかなって」

「……何かのフラグ?」

「イノリさんが聞いたら感涙の涙を流しそうだけど多分本人何も考えてないわよ」

 ん? なんでイノリさんが聞いたら喜ぶのだ? などと考えていると。

「おーう、どんな感じだー」

「いい匂いですね~」

 そんな声を上げながらてくてくとアックス兄妹が帰ってくる。

「もう出来るよ~後はラピスがお刺身切るだけ~」

「貴方が邪魔しなければもう終わってるわよ」

「私のせいにされたっ!」

「まさに貴方のせいよ」

「どうかされたんですか?」

 そう言い合いを始めた私とラピスにイノリさんが聞いてくる。それに。

「イノリさん聞いてください、この子いきなり、結婚ってどんな感じなのかな? なんて言い出したんですよ」

 とラピスが答えると。

「あらあらまあまあ、兄さんやりましたね!」

 何やらキラキラと瞳を輝かせ喜びいっぱいエモまで出してなにやらイノリさんが喜んでる。

 何故にアックスにやりましたね? と小首を傾げつつ頭の上にはてなマークを浮かべる私をよそに。

「ほらね、言ったとおりでしょう」

 何やら得意げなラピスと

「でも肝心のアックスは状況に追いついてないわよ」

 そのシオンの言葉にアックスをみてみると、こちらもよくわかってないようで小首を傾げてる。

「はい先生、わたしもついて行ってません」

 そう言って挙手してみると。

「「「…………」」」

 アックスを除く三人がなんとも言えない顔で見つめてきた。な、何? 私なにか間違った? と若干引き気味になった所で。

「はぁ、まあ期待はしていませんでしたから別にいいですけどね。じゃあパパっと残りのお刺身作ってご飯にしましょう」

「ですね」

「そうね」

 と何やら三人は納得がいったのかご飯の準備を再開し始めた。そしてその傍らには何やら取り残された私とアックスが。

「むぅ、なんかよくわかんないけどご飯の準備をするかのう爺さん」

「全くといっていいほど状況がわからんが。そうするかのう婆さん」

 と二人で会話していると。

「それじゃぁどっかその辺から座れそうな岩拾ってきて」

 シオンにそう言われる。

「おうさ」

「あ、手伝います」

 てけてけと走っていくアックスとイノリさんの黒髪の後ろ姿を少し眺めた後。っは! ワカメとか無いかな! と思ったが今更入れても遅い気がしたのでまあいいやとラピスが捌いた【鯵っぽいもの】のお頭をドボンと鍋に放り込み蓋をして。

「よし後は一煮立ちすればきっと美味しいはず」

 パンパンと手を払いながらそう言うと。

「いつ見ても貴方の料理は何でそれであの美味しさになるのか全くわからないわね」

「ふっふっふ、これが才能というものだよラピス」

「運としか思えないのだけど」

「運も才能のうちっていうじゃない」

「それじゃぁ余計にわからなくなったわ」

 そんな会話を交わしながらお刺身の乗ったお皿を手頃な場所に置いたりしながらアックスの戻るのを待っていた。

 ちなみにシオンはクリスと一緒に蟹とじゃれている、いつの間にかクリスのお世話係が変更されてる気がするんだけど気のせいだろうか。




今年の更新はここまでになります来年の更新はさくっと未定に成っております。

前話で切っておこうかと思ったんですが流石に更新再開一発目がコレっていうのはアレなんで…。

実際のとこ予定では残りの話数はそんなに多くはないのですが色々と面倒くさい場面が多いのでかなり時間がかかると思われます。


とりあえず期待せずにのんびりとお待ちください。

それでは皆様良いお年を。


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