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ファンタジークエスト  作者: 里山
三章 はじまりは唐突に

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46/52

クエスト41 いい最終回だったね。

最終回じゃないよ?





「そろそろ寒くなってきたなぁ」

 紅葉に染まった木々を眺めつつ前を歩くアックスがポツリとそんな言葉を漏らす。

 あのハカタ湾攻防戦から数日、私達パーティと言うかギルドは撃ち漏らした敵がいないか確認のためいくつかのパーティでに九州方面を手分けして回っている。他にはリサさん達と二つのパーティが主に東側と中心部を、そして私達が西側をぐるっと回って行くという感じだ。他の本州から来たパーティの人たちも一緒で北に向けて東西中央に分かれて偵察兼情報収集を行いながら帰路についている。


「そうですね。確かに寒くなって来ましたね」

 アックスの呟きにイノリさんがそんな風に答えるのを聞きながらのんびりとあたりを見回す。

 木々は紅く、風は冷たく偶に出会うNPCの人達も厚着をしている人を多く見る。秋なんだなと思う反面、そう秋なのだ! と思うのが私のお腹だ。


「はい、先生!」

「なにかなリリィ君」

 私の声にすぐさま反応を返すアックス先生。

「そろそろご飯が美味しい季節です!」

 そんな私の素敵な発言に最後尾をクリスと一緒にのんびり歩いていたシオンが。

「あんたホントにご飯が第一ね」

「いやぁ褒めないでよ」

 そう謙遜する私の隣を歩いていた幼馴染が。

「未だにあなたの思考がよくわからないわ」

 などと呟くのが聞こえる。

「も~ラピスったら何年私の幼馴染やってるのさぁ、そんなことじゃあ幼馴染失格だよ?」

 そんな私の声に

「ラピスも大変ねこんなのと幼馴染で」

「ええ、早く誰かに譲りたいわね」

 あれ? 何やら私いらない子?

「で、でもほら幼馴染なんて今更譲れないし」

「そうね、じゃあ他の属性の人にお任せするわ」

「他の属性?」

「そうね、例えば……」

 何やら意味深に溜めを作るラピス。そこに。

「恋人とかですかね」

 何故か意気揚々とイノリさんが振り向きながらそんなことを言う。恋人なんていないよう……。

「コイツの恋人になる奴は大変だぞ~何しろ滅茶苦茶食うからなぁ食費が酷いことになる、それに寝起きは悪いし、面倒くさがりだし、料理できないし……おおう良いとこ無いなリリィって」

 ボッチはやだなぁと唸っているとアックスがそんなことを言ってきた。

「ちょっとなにそれっ私にだって良いとこのひとつやふたつあるんだからねっ!」

 そんな私の反論に。

「例えば?」

 と後ろのシオンから問われる。

「例えばっ!…………あれ?」

 あれ、まずくね? わりと本気で思いつかないぞ?

「はぁ、もう貴方は本当に昔から自分を過小評価しすぎよ」

 若干焦っているとどうやらラピスが助け舟を出してくれるようだ。

「え、そうなの? じゃあ私の良いとこってどんなとこなの?」

「そ、それは……」

 何やら目をそらされた。助け舟は出港する前に沈んだようだ……いちるの望みを掛けて後ろを振り返って見るとシオンはクリスと遠くの山を見ていた。ならばとイノリさんに目をつける。

「イ、イノリさん私の良いとこ」

「に、兄さん任せました」

「え? 俺? あ~う~ん。リリィお前はお前だ気にすんなっ!」

 何やらいい笑顔でそんなことを言われた。……これは私はどうすればよいのだろう。

 ……まあいっか。そんな思考停止した脳内タスクを強制終了して取り敢えずご飯だ。

「んじゃ、気にしないことにして、ご飯まだ?」





「んじゃ、気にしないことにして、ご飯まだ?」

 何だかんだと色々考えた末に面倒くさくなってほっぽり出して取り敢えずやれることが“ご飯食べる”に落ち着いた隣を歩く幼馴染で親友のリリィの顔を眺めながら。この子のこの切替の良さと周りのことを気にしないその精神力はやはり凄いと思う。一言で言えばマイペースなのだ、それもかなりの強度の。周りがどんなに言おうと頑なに我が道を進む、服装然り、勉強然り、人付き合い然り、本当に自分の望んだものしかやろうとしない。唯一自分でどうにかできないものは両親から言われる事柄に関してだろう。最近までで言うとゲーム禁止の事や、ちょっと前だと学校選び、もう少し前だと引越し。本当にそんな事以外は周りに左右されずに我が道をのんびりと、それでいてまっすぐに進み偶に直角に曲がったりする。

 それに多分貴方は気づいてないでしょうけどさっきアックスが言った貴方の欠点はそれこそ“夫婦”にでも成らなければ欠点とも言えない物よ。本当に羨ましいわね。


「取り敢えずこれでも食べてなさい」

 そう言って私は通称四次元ポケットと呼ばれる正式名称不明のポシェットからこの前露店で買った【あたりめのようなもの】を取り出し手渡す。

「わーいありがとー、いっただっきまーす」

 そんなお礼を言いながらもぎゅもぎゅと食べ始めるのを眺めながらふと思ったことが口をついた。

「そう言えば何故【あたりめのようなもの】なのかしら?」

 すると一瞬アックスとイノリさんがアイコンタクトを取ったように見えた。

「どうかしたのかしらアックス」

「い、いや何でも無いよ? ホントダヨ?」

 ふむ、なら矛先を変えてみましょう。

「イノリさんはこの【あたりめのようなもの】の正体を知っているんですか?」

「さ、さぁ私は最近までコロンブス大陸(アメリカの名前)に居ましたし」

 なるほど、では一応シオンにも来てみましょうか。

「シオンは何か知ってる?」

「ん~私あんまりそういうの食べないから」

「そうよね貴方は甘いモノばっかり食べてるものね」

「べ、別にいいでしょ、こっちだったら太らないし食べ過ぎても肌とか荒れたりしないし」

 アイドルはアイドルで大変なのね、そんな事をシオンと話すと未だに時々思う。

「まあいいわ、別に食べられないものでは無さそうだし、それよりリリィじゃないけどそろそろお昼だし何処かでご飯にしないかしら」

「さんせー!」

 そんな案に一も二もなく賛成の意を告げる我が親友と。

「そうだなぁ」

「そうですね」

「がう」

「そ、そうねクリスもお腹空いてるみたいだし」

 続々と肯定の意を告げるPTメンバー。と言うかシオンはもういい加減クリスをダシにするのはいいと思うのだけど。

「それじゃ海辺でカニでも捕るか」

「おお、カニとは豪勢ですなじいさんや」

「ばあさんやお魚も釣れるぞ」

「釣るのは私になるんでしょうけど」

 PT唯一の釣りスキル持ちのイノリさんがそんな呟きを漏らす中。

「さぁ、いざ征かんご飯の地へ!」

 素晴らしいやる気を出し今にも駆け出しそうな私の親友がいた……ほんと羨ましい限りね。





「さぁ、いざ征かんご飯の地へ!」

 何やら意気揚々とそう宣言し今にも走り出しそうなリリィの銀の尻尾を眺めながら。

「あなたのご主人様は今日も楽しそうね」

「がう」

 隣をトテトテ歩くもふもふ毛皮の狼クリスに囁きかける。

 最初に出会ったときはあまりの大きさにチョットビックリしたけれど直ぐに良い子だとわかり大好きになった、それからは時間が許す限り一緒にいる気がする。でもたまに不思議に思うことがある、この子は一体どんなプログラムで動いてるのだろうと。

 そう、クリスは私達と違ってプログラムが創りだした存在の筈だ。けどクリスの動きを見ると作られた動きには到底思えない、本当に生きてるかのように鳴いて呼吸して傍に寄り添い温かい。そういうプログラムだと言われればそれまでだけど。少し前にリリィにも聞いてみたけど「クリスはホントにNPCなの?」って。まあ動物がこの世界に入れるわけはないんだろうけど、そしたら「さぁ? クリスはクリスだし」と言われた。なんだかよくわからないけど確かにそうだなと心にストンと落ちた。そうなのだクリスに生身の体が在ろうが無かろうがプログラムだろうがなんだろうがクリスはクリスだ、ならそれでいいじゃない。私だってこの世界ではただのシオンだ。


「そんじゃ海岸沿いに行ったん出るか」

「ええ」

「ごっはーん」

「じゃあ北に向かうのね」

 と前を歩く皆が街道から外れ北へと転進する、その後をクリスと付いて行きながらこの人達はホントに仲がいいなぁと思う、まあ、それはそうだろうアックスとイノリは兄妹だしリリィとラピスは幼馴染で親友だしアックスとリリィは同じ家に住んでるらしいし、私だけ一人ぼっち。俯き加減にそんなことを考えてると。

「がぅ」

 マジックローブの端を咥えて引っ張りつつクリスが何やら言いたそうにしていた。

「そうねあなたが居るわね」

 そう呟いた私に

「がうがう」

 何やら違うらしく首を振りつつ前を見ろと促してるらしい。何だろ? そう思って前をみてみると。

「シオンどうかした~?」

「何をしているの、置いていくわよ」

 そう言って立ち止まって居るリリィとラピスが見えた。その先には同じように立ち止まりこちらを伺っているアックスとイノリが見える。

「あ、ごめんちょっと考え事してた」

 アハハと私らしくない笑い方をしながら小走りに走り寄るとリリィ達にもわかったのか。

「シオンらしくないけどなんかまた悩み事?」

「貴方が人の心配するなんてどうしたのリリィ?」

「酷いなラピスはっ! 私だってそういう事にはちゃんと気がつくよ?……たまになら」

「はいはいそうね、たまになら……ね」

「おかしいな、イジメられてる気がする」

 そんな二人のやり取りを見ているとホントに仲がいいんだな改めて思う、思ってしまったのでポロッと本音が出てしまった。

「親友って羨ましいなってちょっと思っただけよ、私には居ないから」

 そう呟くように囁いた私の声に二人は不思議な反応を示す。まずリリィはパチパチとまばたきした後ラピスに向き直り。

「ラピスさん大変です、私シオンに親友と思われてなかった」

 そんな言葉を投げかけ、投げかけられたラピスも。

「どうやら私も親友と思われてなかったらしいわ、これは厄介なことになったわね」

 などと言葉を返している。……あれ? どういうこと? 二人の中では私は親友扱いなの? そもそも親友ってどうやってなるんだろう? と言うか親友の条件ってなんだろう? あんまり友達がいなかった私にはその辺りが良くわからない。そんな感じに内心でテンパっていると。

「これはあれね素直に頼んでみてはどうかしらリリィ」

「おお、流石だな兄者」

「誰が兄者よ」

「それはさておきだ」

「置いとかないでよ」

「へい、かーのじょー私達と親友にならない?」

 そんな何時の時代の口説き文句かわからないようなセリフを吐きながら私に手を差し出すリリィ。私はその手をしばし見つめてこう切り出した。

「し、仕方ないわねそこまで言うなら成って上げてもいいわよ」

 そんな本人ですら素直じゃないなと思ってしまう言葉を吐きながら差し出された手をにぎる。

「はいはいテンプレテンプレ、貴方実はわざとやってるんじゃなくて?」

「何を?」

 ラピスが何やら変なことを言ってきたけどよく分からないのでそんな返事を返すと。

「はぁ、天然なのね」

「まあいいじゃないそこがシオンの可愛いとこだよ」

「可愛いって私はあなた達より歳上なのよ!」

「えーだって可愛いしぃ」

「年上ならもっと年上らしくしなさいな」

 そんなラピスの言葉に年上らしくというのがよくわからないので私は誤魔化し気味に。

「え、えーっと、ほら行くわよご飯にするんでしょ」

 そう言ってアックスたちに向かって歩き始めたそこに。

「なーにやってんだぁお前たちホントに仲がいいなぁ」

 そんなアックスの声に。

「まーねー何しろ私達親友だから」

 銀の尻尾を揺らしながらそう答える私の親友が居た。






「まーねー何しろ私達親友だから」

 そんな自分の声に我ながら“良く言う様になったもんだ”と思う。数ヶ月前、まあ精神的には一年ちょっと前までは自分の本音すら良く分かっていなかったというのに。

 いや違うか、多分いまだに分かっていないのかもしれない。果たして今の私は本音で話しているのかそれとも何かを演じているのか……昔のアニメで“人は誰しも何かを演じている”的なことを言っていた人がいたっけそして“全て自分で自分がその全て”て感じのことも言ってたな……つまりはどういう事なんだ? 確か主人公も私と似たような歳だったはずなんだけど一瞬で理解してたぞ? 凄いな流石主人公だな。まあ主人公は置いといて、つまりは何をやってもどんな事をしてても結局自分でやってるから全部自分じゃんって事なのか?

 つまりだ、その昔“果たして自分に親友と呼べる友達は居るのだろうか?”と考えていたのも私だし今の私も私ってことなんだろう。うん全く解んないなっ! よし考えるのをやめよう、それがいい、そうしよう。

 そう言って思考停止したタスクをまたぽいっと投げ捨てのんびりと歩みを進める。

 そう別に急がなくていい、今はただこの皆と過ごす時間を楽しもう。そう思う事にした。



リリィが主人公っぽい!凄い!

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