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ファンタジークエスト  作者: 里山
三章 はじまりは唐突に

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37/52

くえすと33 模擬戦そして…

今回一部三人称視点で書いてます。


 大まかな模擬戦の内容を決めて一時間後。

 リアルとは違い一年中咲き誇る飛梅がひしめく太宰府の街から小一時間の森の中、一辺が一キロくらいの四角くひらけた空き地で模擬戦の火蓋が切って落とされた。


 布陣としてはアックス・ラピス組はどちらも前衛。対する他三人はイノリが前衛、中衛にリリィ後衛にシオン、クリスは中後衛のサポートと言う形に見えた。


 まず開始直後、イノリが速度を生かして神速の一撃をアックスに見舞うが、アックスは避けもせずイノリの薙刀を深々と己の体に差し込まれながらマクロコマンドで装備した盾【ルーン・シールド】を大きく振るう。

「うそっ! なんでたt「〈シールドバッシュッ〉!」

 避難めいた叫びも半ばで途切れスキル効果でスタンしてしまうイノリ、防御型のステ振りならば無効化できたり状態異常が緩かったりするがあいにくイノリは速度重視のAGI特化、これで十秒弱は動けない。そしてスキルを発動したアックスは一瞬の硬直の後盾を構えたまま爆進する。

「ちょっとまって盾とかなによそれっ!!」

 イノリと違いちゃんと避難の声を叫びながらリリィが矢を連発するが。盾に身を隠したアックスは。

「フハハハハハ効かんなそんな攻撃!」

 ガガガキィンッ!!! と派手な音を立てて矢を弾きつつ爆進するが内心は。

[やめてえええこの盾の修理は金かかるんだよおおおおおお]

 である。

 そこに。

「盾とかそんな物関係ないわ! 消し飛びなさい!〈サンダー「今だラピスっ!」レイン〉え?」

 呪文の発動に被るようにアックスの背後からラピスが踊りでてアックスの盾に飛び乗り。

「〈シールドキャノンッ!〉」

 そんなスキル発声とともに打ち出されるラピス。その直後シオンの魔法がアックスを直撃する。

「ガギャギャギャギャギャgy」

 と言うアックスの悲鳴が響き渡り十数本の雷がアックスをミディアムレアに焦がしているその上空で雷をバックにスキルモーションに入るラピスを捉えようとリリィが吠えるが。

「ラピス! 残念だけどそこからじゃ矢の方が速い、ってなに持ってんのさあああああああああ[スナイピングスロー]っく! 〈ダブルシューット〉」

 雷鳴のせいでシルエットしかリリィからは見えなかったラピスは杖の代わりにスローイングピックを持ち投擲モーションの途中で雷鳴が止みラピスの姿を捉えた瞬間リリィが驚愕の声を上げるがちゃんとスキルを発動する辺りさ流石である。

 しかし跳躍の頂点でピックを投げたラピスに対してシルエットに狙いをつけ更にその後ろで稲光が光っていた状態+驚愕――精神的に――の状態だったため落下速度を考えてなかったリリィの一撃は若干狙いがそれたがそれでも。

「ッツ!」

 ラピスの左肩をかすめただけでその肩を吹き飛ばすがリリィもスキル硬直中に、カカカッ! と数本のピックを食らう。

「こんなのたいしt」

 リリィはそれだけ言って。

「すぴーすぴー」

 とその場に倒れこむ。

「ちょっとなによそれ!」

 と声を上げるシオン。ここまで開始から約八秒イノリのスタンが切れるまで後四秒くらい。

「だけどこれで私達の勝ちよ! クリス!」

「がう!」

 呼ばれたクリスは左肩をもぎ取られたラピスに襲いかかろうとダッシュをかけシオンは追撃の詠唱に入る。が。

「〈シールドバッシュ〉!」

「きゃうん」

「ッ!?」

 聞こえてきたのはアックスの声とクリスの悲鳴、そして見えるのはトゲトゲのついた杖を右手にぶら下げ走り寄る片腕の聖職者。

[これじゃ間に合わない]

 一瞬で判断し唱えていた呪文をキャンセルそして一息で呪文を完成させる。

「〈ファイヤーウォール〉!」

 シオンの視界を覆い尽くつ様に炎の壁が展開されラピスの進路を断った、と思った矢先にシオンの脳裏に先ほどの光景が蘇る。

「しまった」

 慌てて上空を睨み何時来ても迎撃できるように最速の呪文を準備した時。

「〈シールドキャ「させませんっ!」ノン〉」

 その炎の壁の向こうではスタンから立ち直ったイノリがまさに光速の突きをアックスの背中に向けて放ち盾に乗っていたラピスもろとも吹っ飛ばすがその衝撃をも乗せて放たれる〈シールドキャノン〉は水平方向だった。

 炎の壁に向かって放たれたラピスは壁出現の前に測ったシオンの位置を脳内で描きそして動いてないことを祈り炎の壁につっこむ。その瞬間に先ほどイノリも使ったスキルを発動する。

「〈フラッシング・ペネレイト〉!てやぁああああああああああああ」

 ラピスにしては珍しい烈波の雄叫びを上げ炎の壁をぶち抜きその先で上空を睨んでいたシオンの「え?」と言う声とともにグシャッという嫌な音が響き渡りその側でまたもや。

「〈しーるどばっしゅ〉」

 と何やら投げやりな声と共に硬直で動けないイノリに炸裂する盾。

「またですかあああああきゃうん」

 振り上げられた盾に悲鳴と共に昏倒するイノリ。

 そしてファイヤーウォールが発動時間を過ぎて消えたその場には、お腹をぐっしょりと血に染めて瀕死の状態で倒れるシオンとその横に立ちどうする? と視線をアックスに向けながら自分に回復魔法を掛け腕が復活したラピス、そのアックスの周りには「すぴーすぴー」と未だに寝てるリリィとスタンで目を回しているイノリとスタンから回復して「終わっちゃった―?」とトテトテ駆けてくるクリスがいた。






「ん~まあ終わりでいいだろ、シオンを回復してやってくれ」

「わかったわ〈ハイヒール〉」

 その声と共にキラキラとシオンの体を光が包み傷が治っていく。

 しかし何時聞いてもあのサウンドエフェクトは嫌だなぁ。グシャってなんだよグシャって。精神的にダメージ入ってるよなぁ何気にスキルLv高いから威力すごいしなぁそりゃ後衛相手だったら瀕死にもさせるわなぁ。と回復して立ち上がるシオンを見ながら思う。

「むー兄さん酷いです」

「え? なんでさ」

 スタンが切れた愛しの妹からいきなり非難された! 何これ突如兄妹愛のピンチ?

「私全然戦ってません」

 ぶすっとした顔でそんな事を言ってくるイノリ。なのでポムポムと愛しの妹の頭を撫でつつ。

「いや、お前とまともにやったらどう考えても勝てないだろこの構成じゃ」

「むー」

 どうやら兄妹愛は大丈夫そうなのでふくれっ面が超ラブリーな妹は置いといて。

「ところでリリィは何時まで寝てるの?」

 とラピスが言うのでリリィに視線を移すとクリスにペロペロと言うかベロベロ顔を舐められてるのに未だに「すぴーすぴー」とか言って寝てる。

「ん~プレイヤーが触れば確か解除されるはずだけどっと」

 ぺちんと綺麗なおでこを叩くと。

「っ! むーいたいなぁ」

 と起き上がってくる。

「ほらな」

「何が、ほらな、なのよ! ってあれ? 模擬戦は?」

「終わったよ」

「えっとどっちが?」

「私達の勝ちよ」

 とラピスが言う。

「あちゃーまけちゃったかぁ」

「ところで兄さん、盾スキルなんて持ってたんですか? というかあの盾は何ですか見たことありませんよあんなの」

「まあな色々と使えそうなのはちょこちょこっと取ってるぜ、んであの盾はその昔にイベントボス倒した時に拾ったやつだよ」

「この人なんでも持ってるわよ」

 と特訓の際に色々見ているラピスが言う。

「なんでもは持ってないぜ、持ってるものだけ」

「はいはい、そうね」

「ながされた!」

 そのやり取りがわかったリリィとイノリはため息をつき良くわからないシオンは。

「そんな事よりもあなた達のヒットポイントおかしくない? 特にラピス、あなたあんなダメージ受けててどうしてファイヤーウォールを耐えられるの!」

 何やらプンスカ怒りながらそんな事を言うシオン。

「あぁその事ね、一つは魔法ダメージがINTで軽減されるのともう一つは常時回復していたからよ」

「嘘っ! そんな暇なかったじゃない」

「言い方が悪かったわね、正確にはダメージを受ける前から回復していたからよ」

「なによそれ……」

「あー、んじゃ反省会と言うか簡単な種明かしをするか」

 そんな俺の提案に元気に手を挙げるリリィ。

「はい先生!」

「なんだねリリィくん」

「宿に帰ってお茶でも飲みながらがいいです」

「お前はなにか食べたいだけだろ……」

 コイツは相変わらずダメかも知んない。

「流石だな相棒」

「相棒辞めたく成って来たよ」

「そんな馬鹿な!」

 何やら驚愕しているリリィを他所に。

「もうふたりとも夫婦漫才はいいですから取り敢えず宿に戻りましょう」

「そうね何やら雨が振りそうだしね」

 イノリとラピスがそんなことを言うので俺達は宿へと向かった……その途中シオンはずっとムスッとしていた。よっぽど納得いかなかったんだろうなぁ。




 宿の部屋に帰るやいなや途中の露店で買いまくった食べ物をテーブルに広げ食べ始めるリリィを横に。

「で、どういう事なの」

 とシオンが切り出す。

「んじゃ最初からな」

 そう言って俺は話しだす……がぶっちゃけそんなに難しいことはしていない。

「最初イノリが突っ込んできたのはあれって俺が弾くことを予想しての〈フラッシング・ペネレイト〉だろ?」

「はい、当たれば儲け、弾かれればその一瞬の硬直にリリィさんの弓で追撃、そしてノックバックで跳んだ所に」

「シオンの魔法か」

「そだよー」

 こくり、と梅ヶ枝餅を食べつつ返事をするリリィと仏頂面で頷くシオン。

「まあ、そんな事だと思ったんで最初の一撃をわざと受けてイノリに密着してリリィとシオンに攻撃をさせないようにしたところで、こっそり装備した盾でイノリをスタンさせて」

「させて?」

「盾を持ってダッシュ」

「いや、それはわかってるし盾持って突っ込んでくるからもう私じゃどうしようもなかったもんなー」

 とふたつ目の梅ケ枝餅にかぶりつきつつリリィ。

「最初のダメージもいつ回復したの?」

「簡単だよ、俺の後ろを隠れるようにラピスも走ってたんだから」

「「「あ」」」

 あのタイミングでラピスが現れた時点でそれしか考えれないのだけどすっかりその事が抜け落ちていたらしい。まあそれを可能にしてるのがラピス基本能力の高さなんだけどな。特に難しくもない詠唱とモーションなら走ったりしながら行えるらしい。踊りなんかの稽古事の応用らしいけどぶっちゃけ何が役に立ってるのかわかんない。

「で、隠れながら〈ヒーリング〉を俺とラピスに掛けてあとは見た通り?」

「つまりそれから二〇秒間ずっと回復しながら戦ってたわけか、なるほどねーしっかしすごいねラピス、スローイングピックなんてまさかあんなスキル使えるとは思わなかったよ」

「ふ、びっくりしてもらえて嬉しいわ」

 と言うラピスの言葉にシオンが食って掛かる。

「ていうか仲間なんだからちゃんと教えておきなさいよ」

 と言うシオンの非難の声にあらぬ方向を見ながらぼそっとラピスがつぶやくように答える。

「……普通に忘れていたわ」

「忘れないでよ!」

 と言うシオンとラピスの言い合いを他所に。

「ねえねえ聞きました奥さん仲間ですってよ」

「聞きましたよアックスさんあのシオンが仲間ですってよ」

 俺とリリィがヒソヒソとそんな事を話しているとイノリがたしなめてくる。

「ちょっと二人共やめましょうよ」

「な、仲間っていうのは、その、は、話の流れ的にそういった方が」

「あーはいはいツンデレツンデレ」

 そう俺が言うと。

「ツ、ツンデレじゃないっていってるでしょっ!」

「じゃあなんだよ」

「なんでもないわよ!」

「じゃあいいよデレデレで」

「デレデレってなによデレデレって」

「あーいえばこーいうなぁ」

「あなたのせいでしょ!」

「仲いいなぁ二人共」

「良くない!」

「リリィさんヤキモチですか!」

「なんでイノリさんは嬉しそうにそういう事言うの?」

「いえ別に他意はありませんよ?」

「でもヤキモチかぁ……梅ケ枝餅もうちょっと食べたいな」

 といつの間にか空になった包を物欲しそうに眺めながら言うリリィ……俺食べてないんだけど。

「だめですねこれは……」

 そんな事をつぶやくイノリに。

「イノリ」

 ここは妹に兄としていっておかないといけない。

「何ですか兄さん」

「そこは、だめだこりゃ、だ」

 どうよこの素晴らしいモノマネ!

「本当にだめですねもう……」

 あれぇ? すっごい悲しそうな顔された。

「ハァハァ、もう何なのよ。あ、あとひとついい?」

 と息を切らせつつ俺に聞いてくるシオンに。

「愛の告白ならいくつでも」

「死の宣告なら今からでも」

 凄い早さですごい言葉が返ってきたっ!

「ごめんなさい、どうぞご質問を」

 愛の告白を促したら危うく殺されるトコだった。

「私のサンダーレインは直撃したはずなのになんで動けたの? アレのスタンの効果は魔法防御力に左右されるはずよ」

「ん、ちゃんとスタンしたぞ?」

「嘘よ」

 と何やら嘘つき呼ばわりされた。

「ただ」

「私がリリィのスキルでとばされてノックバックの効果が切れた瞬間にリカバリーさせたわ」

「……むちゃくちゃよ」

「そう? これでもあなたの詠唱速度よりかはまだ遅いんだけど」

「っ! 別に褒められても嬉しくないし」

 何やら褒められて視線を彷徨わせるシオンに対し俺達ほか四人はシオンの頭上に視線を固定させ。

[エモって便利だな]×4

 と思ったりしていた。

 そんな話が一段落した時、ゴーンゴーンと街の時計がお昼を告げる。そして妖怪食っちゃ寝が口を開く。

「お昼ごはんだ!」

「いやまてお前は今まさに食ってたよな?」

「何を言ってるのかねアックス君。間食とご飯は別物だよ?」

「もういい分かった俺が悪かった」

「それではお昼ごはんにしましょうか」

 頭を抱える俺を他所にイノリが提案するとラピスとリリィが肯定の返事を。

「食べに出る?」

「出る~!」

「私はいいわちょっとゆっくりしたいから」

 そして何やら疲れた顔でシオンがそんなことを言う、それに。

「そっか、じゃあ行ってくるね」

 珍しく理解を示してリリィがドアに向かって歩き出しその後ろをクリスが付いて行く。

 それに続きながらイノリが。

「では行ってきますね」

 そしてラピスが。

「ゆっくりしてるといいわ」

 最後に俺が。

「えっと、あいるびーばっく!」

「馬鹿なこと言ってないで早くして下さい兄さん」

 最近酷いなわが妹よ……しくしく、と嘆きながら後ろでにドアを閉め先を行く皆に合流し街に出る。

「でも以外でしたリリィさんはシオンさんを無理にでも引っ張り出すと思ったんですけど」

「ん~なんか一人になりたそうだったし」

「イノリ、こいつは意外とこういう事には敏感なんだぞ?」

「兄さんも敏感になってください」

「失礼な俺はもっと敏感だぞ」

「……」

「……」

「……」

「何で皆黙るんだ? なぁ」

「さて何食べよっか」

「軽い物がいいです」

「あっちに食堂があるみたいよ」

「なぁクリス俺何か変なこと言ったか?」

「がう?」

 意気揚々と食堂に向かう女の子三人のお尻を眺めながらクリスと一緒にテクテクとついて行く。雨降るかなぁ~。






「はぁ、何よあれ……」

 思い出すのはさっきの模擬戦まさに言葉道理の秒殺……リリィの弓を始めてみたときも驚いたけどそのリリィさえも瞬殺なんて……なんなのよあれ。もうわけがわからない。

「私って実は弱いのかなぁ……」

 ぼふっとベッドに横たわり天井を見つめながら色んなことを思い出す。

 さっきの模擬戦の事。

 ジェイルキャッスルの事。

 リリィの弓を見た時の事。

 デスゲームが始まった時の事。

 アックスに助けられた時の事。

 色んなPTを渡り歩いていた時の事。

 FQOを始めた時の事。

 初めてランキングで一位になった時の事。

 初めてライブをした時の事。

 初めてTVで歌った時の事。

 歌手になったときの事。

 高校の事。

 

 ……そういえば私別に…強くなんか……なかった…………。




「シ……お………シオ……い…ぶか」

 なに? だれ……わたし…もう。

「シオン~おーいだいじょうぶか~?」

「っ!」

「うぉぅ!」

「な、なに? どうしたの? ……あれ? わたし……ねてたの?」

「ああ、寝てたぞなんか泣きながら」

「え、泣きながら?」

 手で顔をぬぐうが既に涙は止まっていてそこには何も残っていなかった……あぁそっかゲームだもんね。

「それで何であんたがここに居るの? 他の皆は?」

「皆なんか服見てくるってさ、だから俺とクリスは宿屋に戻ってろって言われた」

「わふ」

「あっそ、なら私一人になりたいから」

 こう言ってもどうせ一人にしてくれないだろうと思いつつ言って見たが。

「んじゃ俺は風呂でも入ってくるから、クリスはどうする? クリスも居ないほうがいい?」

「え? いやクリスは居てもいいけど…」

 あれ、こういう時って男は言い寄ってくるもんじゃないの? と思ったが昨日の夜の皆の声がよみがえる。曰く「あの人はおかしい」「兄さんは変」「アックスはね馬鹿なんだよね」そしてまとめるとこうらしい“人が良すぎる”

「じゃあなんかあったら呼んでくれ、それとコレ梅ケ枝餅ここに置いとくから食べたくなったら食べて、食べたくなかったら残しておいて大丈夫だから、むしろ残して置いてって言うのがリリィからの伝言」

「はぁ……わかったわ」

「んじゃな」

 ぱたんとドアを閉め行ってしまうアックス。

「ホントに自分に自信がなくなるわねこんな可愛い女の子がこんなに弱ってるのに放置だ何て……まあわたしが一人にしてって言ったからなんだろうけど」

「がう?」

 ベッドの横に座ってわたしの事を見ているクリスを撫でながら色々と考える。

 これからの事……何をすべきか……答えは簡単、特訓あるのみ。

 歌やダンスだってそうだ、地道な積み重ねがすべてを支える土台となる。


 じゃあ私はこの世界で何をがんばった? 詠唱速度? アレンジスキル? そんなものは今までの積み重ねと閃きでしかない、なら足りないのは実戦経験。対人戦の、それも強敵と戦い。幸い近くに色んな武器の強敵が居る。ならばあとは簡単頼むだけ……でも私なんかが頼んでも受けてくれるだろうか……足手まといと思われてるんじゃないだろうか? 断られるんじゃないか……そんな不安が頭をよぎる。

 

 そう、私は皆が思ってるほど強くない。まあどう思ってるかなんて知らないけど、いつもいつも逃げていた勉強から学校から現実から、でも今度は逃げない私から向かっていってみせる。

 と決意を固めベッドから立ち上がりクリスを伴って歩き出す。

 ドアを開けそこに誰もいなくて思い出す。

「お風呂とか言ってたわね……流石にそこまでは」

 一瞬お風呂に押しかけようかとも思ったがそれにはなにか違う勇気と決意が必要そうなので諦めようとした時。

「あーいいお湯だった」

 そう言ってシャツと短パン姿のアックスが濡れた髪の毛をガシガシと掻きながら現れた。

「ちょ、ちょうど良かったわ、聞いてほしいことがあるの」

「お? 復活したのか調度良かった俺の頼みをまず聞いてくれ」

「え、な、何?」

 出鼻をくじかれ動揺する私に。

「温風出してくんない?」

「……はぁ………〈うぉーむういんど〉」

 投げやりな私の詠唱によって暖かい風がアックスに吹き付ける。

「おーきもちいいなぁ……われわれはうちゅうじんだー…あれ? 普通だな」

「あんた馬鹿なの? アレは扇風機の羽に声が当たってるのよ」

「なん……だと?」

「羽なしの奴だとならないでしょ?」

「いやうちにそんな高価なもの無いし、リリィのうちにも……あれ? なんか部屋の隅っこにあったスピーカーみたいなのって」

「多分それよ風を循環させてエアコンの効率を上げてるんでしょ」

「知らなかった…ずっとスピーカーだと思ってた」

「はぁ、もうそんな事いいから私の話を聞いて」

「はーい」

 そう言って椅子に腰掛けるアックスはテーブルの向かい側にどうぞどうぞと着席を促してくるので仕方がないから座ることにする。

「そ、それであなたに……あなた達にお願いがあるのだけど」

 その言葉にクビを傾げて続きを促すアックス。

「私に戦い方を教えて欲しいの」

「いいよ」

「え、いいの?」

「え、だめなの?」

「いや良いのなら良いのだけど……そんな簡単に引き受けてくれるとは思わなくて」

「いや良くわからんが引き受けるも何もさっき自分でもラピスに言ってたじゃんそういう事は教えておけって」

「……あれとは違うでしょ」

「なんで? 仲間なんだろ?」

「……」

 うぐぐぐ、何なのよコイツなんでそんなに簡単に……と今までのコイツの言ってきたことが思い浮かぶ。

「何、ひょっとして私の事を信じちゃってるわけ?」

「おう、俺は信じてるよお前が俺を信じてくれている限り」

「なっ、何よそれ口説こうったって私は芸能人なんだからその手の言葉は聞き飽きてるのよ!」

「なん……だと? これって口説き文句なのか……だから皆余所余所しくなるのか……特に男が」

 あれ? 何やら複雑な顔でブツブツ言い始めたわね? というかひょっとして今の本気で言ってたの? 何こいつ頭おかしいんじゃないの?

「うーん……まあいいか過ぎたことは忘れよう」

 そう言って何かを吹っ切ったような顔をして。

「取り敢えず俺はお前のことを信じてるってことだ、まあイノリとリリィも信じてるだろうし、たぶんラピスも信じてると思う、流石に一日二日しか顔を合わせてないからまだ良く解んないけどな」

「何よそれ、それって信じてるか解んないってことじゃない」

「ふむ、じゃあ逆に聞くけど、お前良く一緒の部屋で寝れたなアイツらと」

「あ……それは」

「信じてなきゃそんな事出来ないよな、何しろ今はデスゲームなんだからそれこそ寝込みを襲うなんてだれでも考えつく」

 何も言い返せなかった……確かに一緒に行動し始めた時最初の頃は寝るのも怖かった気がする、でもリリィはあんなだしイノリもお姉ちゃんみたいで暖かいし……最近は何も気にしなかった気がする。それに昨夜だってラピスと対面したのは初めてだったのにリリィの幼馴染と聞いて無条件で受け入れていた気がする。つまり私はそれだけ信じているってことなのかな。

「アックスは私の事本当に信じてくれるの?」

「ああ信じるよ、但しもしアイツらを裏切った時は覚悟してくれ」

 アイツらか……ほんとに自分はほったらかしね。

「わかったわ、じゃあ私から一つだけいい?」

「どうぞどうぞ」

「真面目な話をしてる時は人の胸とか髪の毛とか見て“いいなぁ”とか“撫でたいなぁ”とか思わないようにして」

「そ、そんな事考えてませんよ? ホントダヨ?」

「そうなの? 頭ならなでさせてあげても良かったのに」

「考えてました! ずっと考えてました! だから撫でたいです!」

 ……ほんとにダメな人だな。

「でもなんでそんなに撫でたいの? いつもリリィとかの撫でてるじゃない」

 そうホントに隙あらば誰かしろの頭を撫でてる、昨日合流してから私も何度か撫でられた気がする。

「ん~ほら他の三人はどっちかって言うとペタってしてるだろ頭部分って」

 言われてみると、リリィはポニテだしイノリはお姫様カット、ラピスはカチューシャで止めて頭部分はたしかにぺったんこだ、それにひきかえ私の髪型はゲームじゃないと実現不可能な感じにふわっとしててもこっとしたロングの金髪だ……なるほどと何となく納得した私は。

「はぁ、しょうが無いなぁちょっとだけなら」

 と言って少し前かがみになったところ。

「え、いいの? わーい」

 と無邪気に若干腰を浮かせテーブル越しにぽむぽむと私の頭を撫で始めたところで。

「たっだいまー」

「いま帰りました」

「帰ったわ」

 と言う声が聞こえた、と思ったら。

「兄さん何をやっているんですか?」

「アックスが更に変態になった!」

「わたしの時より普通の格好ね」

「え?」×3

「いやちょっとまて、話を聞いて欲しい」

 言われてみるとTシャツのような物一枚と短パンの男が装備をほとんど外して薄手の上着とロングスカートだけという女の子の頭を撫でている図は色々まずそうだ、だけどラピスの言い分ではこれでもマシらしい。そのことについて何やらアックスが弁解し始めたけど。

「あれはお前が“あなた(の装備が)硬すぎて(私の攻撃が)抜けないからちょっと(装備)脱いで”って言ったからだろ!?」

「何やってたさ二人共!」

 珍しく驚愕するリリィ。

「本命はラピスさんだったんですかっ!」

 なにか違う意味で驚愕するイノリ。

「その後二人で激しい夜を楽しんだわ」

 更に混乱を撒き散らすラピス。

「アレは激しかったな」

 何やらめんどくさくなったのか適当に流し始めるアックス。

「えーもう終わりーもっと修羅場ごっこしようよー」

「なんだよその修羅場ごっこって!」

「うんとね、ここで私が、あの夜のことは遊びだったの! って言ったりするヤツ」

「しねーし! アホかお前は」

「いやいやそれほどでも」

「アホね」

「アホ」

「リリィさん……」

「がうがう」

 そんな光景の中にいる私に何だかんだでもう馴染んでるんだな私と思ったのもつかの間。

「そだ、シオンの服買ってきたんだけど着てみて~」

「え? 服って私これで良いし」

「え~折角の魔女っ子なんだからさぁ、くっくっくっく観念しろ~」

「っちょまってたすけt」

 私の助けを呼ぶ声は虚空に響き私は寝室にさらわれベッドに横たえられる。

「ぬげ~そしてきろ~」

「観念したほうがいいですよ?」

「諦めたほうが早いわ、この子は一度決めたらもう終わりよ」

 装備は他プレイヤーに脱がせられないので自主的に脱がなければ装備変更もできない、だから抵抗するのは簡単だ……簡単だけど。

「私、一生懸命に選んだんだけどな……それに高かったし」

 と言う声に少し気持ちがぐらつくが。

「アックスのお金でしょ」

「ふ、あいつのお金は私のお金私のお金はもちろん私のお金よ!」

「素晴らしいジャイアニズムね」

「兄さん可哀想」

 つまりあの服はアックスのお金なのか、じゃあ着てみようかな……まて詩音なにが“じゃあ”なの? と脳内で何やら揉め事が起きていたが。

「なんなら私が着るわよ? 幸い私も魔女っ子の部類だし」

 とラピスが言い始める。

「おー! その手があったかむしろ適任? アックス喜びそうだね」

「私が着るわよ!」

 何やらそう宣言して服をひったくる私がいた。

「ほんと? わーい」

 と素直に喜ぶリリィと。

「へぇ」

 と意味深に微笑むラピスと。

「まさかここに来てホントに兄さんにモテ期が!」

 と驚愕するイノリ。

「べ、別にあいつのために着るんじゃないんだから! リリィ、そう選んでくれたリリィの為なんだからね!」




 俺の前から皆が去って十数分軽い部屋着を装備した俺は静まり返るテーブルで御茶を啜りつつ。

「暇だな」

「がぅ」

 それにしてもシオンは色々考えてるんだなぁまあ芸能人だし色々とあるのかもなぁ…っは! まさかあんなコトとかこんなこともか!

「大変なんだな芸能界って」

「?」

 そんな俺のつぶやきに「どうしたん?」と首をひねるクリスの頭をわしわし掻きつつのんびりしてると。

 ばたーん! と言う擬音が付きそうな勢いで女子部屋のドアが開き。

「ぢゃっじゃ~ん」

 と、どっかのパンツをよく見せる特殊な捜査官のような掛け声? を発しながらリリィがシオンの腕を引っ張りつつ現れる。

「どうよ!」

 盛られた胸を自慢げに張るリリィ。

「ほう、なかなかだな」

そこには某高校の制服のような服の上から魔女っ子帽子とマントを羽織ったシオンがいた。

「シオンならビームも出せる……かもしれない」

 淡々と解説するラピス……口調はお前の方があってるけどな。

「兄さん用に男子制服も買ってくればよかったですね」

「俺は脳内解説を常時垂れ流す人じゃないぞ?」

 と、好き勝手言ってる周りを他所にシオン本人はというと。

「ど、どう」

 ど、どう? DO? あーどう似合ってる? かな? ふう脳内ツンデレ翻訳機がなかったらヤバかったぜ。

「おー似合ってるぞ可愛い可愛い」

 と、褒めると。

「べ、別に貴方にほめられても嬉しくないんだから」

 なぁお前はどっかでツンデレ修行でも受けたのか? なんでテンプレ道理の受け答えなんだ? まあそれはさて置き。

「ところでアイアンクロー要員はいないのん? だれもメイド服着てないけど」

「あ」×3

「あいあんくろー? なんで? 魔法使いじゃないの?」

 と訳がわからないシオンが一人オロオロしてたのが可愛かった。


何時も道理にさくっと終わる戦闘シーン

そして主人公がご飯食ってるだけというなんともアレな状態

まあ何も考えずに書いてたらこうなるよね。


はてさて次の話はちゃんとアップできるかなぁ

地味にネタがなくて詰まってるというより……人増やし過ぎた感がすごい


番外編が始まったらネタに詰まったと思ってください……。

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