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ファンタジークエスト  作者: 里山
第一章 Girl・ミーツ・おっさん

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くえすと12 どうしてこうなった?

「そ、それじゃあ俺ももう寝ますね」

 そう言って客間に避難、もとい逃走を始めようとする俺を。

「少しお話いいですか?」

 テレレー逃げれなかった。お風呂上りの人妻がそう言って俺を何やら真剣な見ていたら逃げれないよね。決してエロティックな意味ではなく無下にしてしまうと俺の会社の椅子が無くなってしまいそうだからだ! そうそうコレも接待のようなものなのですよ? 決して留美さんから良い匂いが漂ってくるからとか透き通るような白い肌が火照った感じが艶かしいとかじゃないんだからねっ!?

「え、ええ大丈夫ですよ」

 まあホントのところは怖いよママンなんだけどな。よく考えろ童貞の俺にこの状況は怖すぎるいつ理性が飛ぶかわかったもんじゃない! そして理性が跳んだらクビも飛んでしまうのは確実、下手をすれば刑務所行きだ。俺今期のアニメの最終回見るまでは刑務所に入る訳にはいかないんだけどな……いや来期はあの作品の二期がそれに来月はあのゲームも。

「あの……」

「は、はいっ!なんでございましょう?」

 何やら変な思考ループに陥っていた俺を不審に思ったのか恐る恐る声をかけられた。

「実は今日のことは主人も知っているんです」

 はい、俺終わったー、はーいしゅーりょーでーす、てっしゅー。

「まあ流石にうちの会社の方とはまだ知らないのですが」

 まだだ、まだ諦めるような時間じゃないっぽい。

「それはこれから伝えようかと思うんですが」

 何を仰ってるのかわからないのですが。エロゲ的にはここで留美さんを押し倒して性奴隷にして喋らせない様にするんですね! そんな事ができたら魔法使いは目指さないです……

「ハハハハハ何でもするのでそれだけは勘弁して下さい」

 ガンッ! とテーブルに頭をぶつけながら頭を下げてみた。そう、奴隷にできないなら奴隷に成ろうそうしよう、幸い美女だ、いや美少女だ! ならば仕えるのに何も問題はないむしろ犬と呼んでください。

「あの、何をなさっているのかが良くわからないのですが?」

 あれ? おっかしいな凄くわかりやすい謝りかただと思うんだけど? あれかなハーフだから伝わりづらい? でもたしか生まれも育ちも日本って聞いたような? などと斜め方向に思考を巡らせていると、銀に輝く髪を滑らせ。

「ありがとうございます、小野さんには感謝しているんです私も主人も」

 と頭を下げられた……あ、つむじは左巻きなんだ、へ~っじゃねぇえええ、なんだこれはっ! 新手のドッキリか! あれだろ庭のほうから看板持った人が出てくるんだろ? そうだきっとそうに違いないと半ば現実逃避し始めた俺に。

「あの子ずっと無理してるんじゃないかって思ってたんです。昔はもっと無邪気に笑う子だったのに中学に入った辺りからあまり笑わなくなったというか笑ってもなにかあの子じゃないような笑い方で……」

「あ、あ~なるほど」

 思わず声が出てしまう。

「小野さんも気づかれましたか?」

「ええまあ、向こう、ゲームの中で初めてあった時もずっとそんな感じでしたよ、なんて言うか仮面をかぶっているっていうか演技してるっていうか、可愛い顔なもんだからゲームのキャラかと思いましたし」

「そうなんですか、初対面なのに直ぐに気づかれたんですね」

「ふ、コレでも二十八年生きてきましたから。色々あったんです、色々……しくしく」

 過去を思い出して何故か泣きたくなってきた。もうだまされないぞコンチクショウ。

「えっと、何があったかわかりませんががんばってくださいね」

 困惑しながらも俺にかわいいポーズ付きでエールをくれる留美さん何これ可愛い貰って帰りたい。

「主人とも話してやっぱり学校での人付き合いのせいかと思ったのですが、普通の学校に転校させるのも色々とあの子にとって不都合が有りそうでその……イジメとか」

 あ~まあこのレベルのお金持ちで更にあの可愛さならチヤホヤされるか妬まれるかのどちらかだろうな、そしてあいつの場合だと……妬まれそうだなぁ。なんにも考えずに男子と遊んでそうだもんなぁ、そんで女の子たちから嫉まれて不良グループに目をつけられて後はエロゲ的展開に……そこの君、何ダメ人間見る目で見てるんだい?

「それであの子がゲームがやりたいって久しぶりに言い出したので、何か気分転換になればと思って主人も許したといっていました」

「なるほど、それで俺と出会っちゃったわけか……」

 あれ? でも俺感謝されることしたか? 笑うようになったのだってあの世界が楽しかったからじゃないのか?

「はい、ゲームをやり始めた次の朝、起きてきたあの子の顔は別人のように輝いてました、主人なんか何かゲームの後遺症で精神疾患でも患ったんじゃないかとあの娘に「何があったんだ? 変な奴にでもあったのか? 変なもの食べさせられたりとか変なこととかされなかったか?」とオロオロしながら聞いてました」

 色々思い当たりすぎて冷や汗がダラダラと出てきた……まさか「白濁した液体ぶっかけられちゃったのー」とか言ってないだろうな。

「それで「色んなとこに行っていろんなもの見てきたよ」って言ってコレを見せてくれたんです」

 そう言って二枚の画像ファイルを俺に見せるようにテーブルの中央に表示させる。それは森の中で佇む微笑んだリリィと朝焼けをバックに満面の笑みではしゃぐリリィだった。

「これ小野さんが撮られたそうですね」

「ごめんなさい」

 そう実はこの二つ見えてはいないんだがどちらもローアングルなのだ、ローアングルバンザイパンチラ最高!

「あの、さっきから何を謝られてるのか全くわからないのですが」

「え、いや癖なんでアハハハハ、それでこの画像に何か問題が?」

「いえ問題なんて、このすくりーんしょっと? っていうんですか? これを見た時主人と私は言葉を無くしました、まさか一晩でこんなにも表情が変わるなんて何があったのかと思ったら」

「思ったら?」

「彼氏ができていたなんて」

 ありのまま今起こったことを話すぜ……画像の話をしていたら彼氏が出てきた(以下略

「えっと良くわかんないんですけど」

「あぁ、ごめんなさい、この画像を撮ったのが男性の方だと聞いてついにゆりちゃんにも春がきたのかと思いまして。主人的には極寒の冬が来たようでしたけど」

「つまり、ゆりがこんな感じに笑うようになったのは俺のせいだと?」

 と朝焼けをバックに満面の笑みのゆりを指差しつつ。

「ええ、こちらの方も前までのゆりちゃんに比べるとぜんぜん違うのですけど」

 と森の方の画像をさしつつ言う。

「ん~多分ゲームの中だと感情が結構大げさに表現されるのも関係してると思うんですよ、それにあの世界では感情をダイレクトに反映させますから、それとどっちの画像も綺麗な景色が見れてはしゃいでるだけですよ」

「む、つまりあなたは頑なにゆりちゃんがこんな顔してるのはご自分のせいではないとおっしゃられるのですね」

 あれ? 何やら変な風になってきたぞ? しかし、むっとした留美さんも可愛いな。

「仕方ないですね、ではこれをお聞きください」

 そう言いつつ携帯型音楽プレイヤーを出してきた? 何故端末じゃないのだろうそして何故ヘッドホンなんだろうという疑問が出てきたのだが留美さんの“さぁ聞け直ぐ聞け”というなんともワクワク感に満ち溢れた顔――もちろん可愛い――に負けヘッドホンを装着しぽちっと再生ボタンを押すと。


「でねでねアックスがね弓の使い方教えてくれたらね……それでねアックスがね、ご飯おごってくれたんだけどそのご飯がさ……アックスと一緒にお馬さんに乗ったんだよすっごい速いの……」

 

 

「ってなんですかこれっっ!」

「母と娘の内緒話?」

「いやそれは置いといて何でそれを録ってるんですかっ!」

「こう……イザという時用?」

 ダメだこいつ何を言ってるかわかんない。可愛い顔して何してやがるんだこの人妻は……

「あの、もしかして今も?」

「あらやだ、いつもですよ」

 こわいよう。いきなりサイコホラーになってきたよう……僕をどうするの?とつぶらな瞳を涙に濡らしていると。

「あの子も知ってるので別に大丈夫ですよ」

「へ? そうなんですか?」

「それにリビング以外ではやっていませんし、そもそもコレやりだしたのあの子ですし……」

 何その衝撃的な発言。

「あの子昔主人にお願いしたおもちゃを買ってきて貰えなかった事があるんです、その時主人が「そんな話は聞いてない」なんてこと言うから」

「あーそれで会話を録音する癖がついちゃったと」

「はい、それに楽しい思い出にもなりますしね」

 なるのかなそれ? と小首をかしげていると。

「なのであなた達の会話もそのまま主人に聞かせておきますね」

 いやああああああああああああああああ! やめてえええええええええええええ! という有名な叫びの表情を再現していると。

「そんなに悲観されなくても大丈夫ですよ、主人は人を見る目は確かですし何より娘に関わることですので娘にとっての最良の選択を取りますから」

 ふぅ、そっかぁよかったってよくねええええっ! 結局クビにするのが最良と判断される可能性があるじゃないかぁぁぁぁぁ。などとまた思考のループがメビウスの輪のようにつながり始めた俺の脳に。

「そんなに悩まれるなら一つだけクビにならない方法がありますよ?」

 ほうほう、それはそれは、何でございましょうか奥様。まるで執事のように姿勢を正して奥様の言葉を待つ俺。

「ゲームの世界でも現実の世界でもあの子にもう関わらなければ良いだけです」

「無理ですね」

「即答ですか」

「即答ですね」

「それは現実のあの子がこんなにお金持ちだからですか? それとも可愛いからですか?」

「いえ現実で関わらないでと言われたら“はい”と答えたかもしれません。ですがゲームの世界は別です、あの世界は現実のそういうしがらみが一切届かない世界で無いといけない、まあ確かにあっちの世界でもあいつは可愛いです、でもそれ以上に俺があいつに求めているのはあの純粋までの探究心というか何というか……まあ単純に一緒にいたら面白そうだなってだけなんですけどね。それが信じて貰えないなら……仕方ないですクビにでもなんでもしてください」

「あなたは仕事よりもゲームを取るの?」

 先ほどまでとは打って変わり冷めた表情でそう問いかけてくる。

「一社会人の前に俺はただのゲーマーですよ」

 はぁ、職探しでもするかなぁ。まあ今の少子化の時代選り好みしなければ色々仕事はあるしな。と、今後の人生設計を立てていると。

「ですってよあなた」

 …………へ?

「あなたってどなたです?」

「あらやだ、主人に決まってるじゃないですか」

 そう言いながら俺の後ろにあるTVを指さす……なにがでるかななにがでるかなテレテテッテッテレレレ♪そんな脳内SEとともにゆっくり振り向くと入社式で見たことのあるおじ様がどこかで見たことのあるお部屋に立っていらっしゃった。あ、あそこうちの支社の仮眠室だ~たしか出張とかでホテル止まるお金が勿体ないから近場の支社の仮眠室を使うんだよね~うちの会社って~へ~専務も使うのか~。

「こんばんはでございます専務。おじゃましております」

 ガタタタッっとソファーから腰を上げ回れ右して直立不動で一礼する。色々日本語がおかしいが俺の脳内データベースには深夜の専務宅でパジャマ姿の奥さんと二人っきりで話している時に突如専務と対面した時の挨拶の仕方なんて記録されていない。

「ほう、君が小野くんか。うちの妻と娘が色々とお世話になっているようだな」

「お世話だなんてそんな自分は何もしておりません」

 ダラダラと嫌な汗をかきつつ返答を返してはいるが何をしゃべっているのか良くわからない。

「まあ妻に何かしたらお前の命はないからそう思え」

「滅相もございません奥様には指一本足りとも触れようなどと思っていません」

「あら私ってそんなに魅力ないのかしら?」

 何やら後ろからそんな声が聞こえるが無視だ無視! てか何を言ってるんだこの人は!

「ほう、流石女性関係は真っ白なだけあるな」

 えっとどういうこと? てかさっきから何見てるの、ねえ?

「あのう何故そのようなことを知ってらっしゃるのでしょうか?」

 わからない事はお偉いさんにでも聞くそれが俺のジャスティス!

「ふむ、私にもちゃんと聞いてくるか、報告書道理だな」

 なんのっ! ねえ何の報告書なのっ!

「さっきからやけに詳しいですけどあなた何を読んでますの?」

 ナイス留美さん僕が求める質問をより的確についてくれる! そこにシビれる憧れるかはわかんない!

「あぁ、小野くんの調査報告書だよ、勤務態度や女性関係上司の意見や同僚や部下の意見などだ」

 なぜそんな物がっ! なんだこれは一体何が起こっているんだ? 仕事先がバレたのは今日の午前中のはずだ、速攻で専務に連絡が行っても今日俺の部署はほとんどの人間が休みのはずだ、だからそんな資料が作られるはずはない……ならなぜっ!

「何故そのようなものがあるの?」

 と、さすが留美さん結婚して下さい! あ、なんでもないです。

「ふむ、そのことは置いておいて小野くん」

「はい」

「先程の言葉は真実かね」

「どの言葉かわかりませんが自分は嘘が嫌いです」

 騙されると悲しいから騙すのも嫌なのだよ俺は。まあ精神的にキツイからとも言う。

「なるほど、では月曜日出社したら荷物を片づけ給え」

 え、それは、そういう事ですか。いやまあ、そりゃね、しくしくしくしく。

「あなたっ!」

 おおうびっくりした、急に留美さんが怒りのオーラを纏って叫びだした、まるでアライグマが威嚇するように。かわええなぁなどと現実逃避をして傷心の傷を癒す俺月曜から無職。

「それはどういう事かしら? 事と次第によってはただではおきませんよ」

 ごごごごごごご!(誤変換じゃないよ?)という感じで怒ってる留美さん。あぁ、ぷりてぃー可愛いなぁ最後にこんな光景が見れて幸せだなぁ。

「まあ待ちなさい話は最期まで聞きなさい。お願いだから聞いてくれ」

 おお専務が押されてる。ひょっとしてすっごく怒ってるのかな?

「わかりました、最後まで聞きます」

 むっとした表情のまま専務を睨む留美さん本人的にはヒグマとかがこう「ガルルルルルル」って感じなんだけどどう見てもアライグマが「ぅぅぅぅぅぅぅ」って感じです。

「小野くんさっきクビにでもなんでもして下さいと言っていたな」

「はい」

 力なく頷く俺。

「その言葉に甘えて君には本社に来てもらうとしよう」

 ん? クビになる時って本社に行かなきゃなんないの? 初めてだからよくわかんないんだけど? と小首をかしげていると。

「君は再来週から本社勤務と成る」

 へー? 良くわかんないので留美さんを見る、留美さんもはてなエモが出そうなくらいに小首をかしげてるすごいプリティー、気を取り直して専務を見る真っ黒な髪の毛だな、あぁ成る程これがゆりに遺伝してるのかほうほう。じゃない何を現実逃避してるのだ俺は。

「専務、話が見えないのですが? 自分はクビではないのですか?」

 そう問う俺に。

「誰もクビなどとは言ってない」

 あーうん。確かに言ってないな。

「それにこれは元から決まっていたことだ、後は小野くん、君の承諾が欲しかっただけなのだがどうにでもしてくれとさっき言っていたので了承は得たと考えたのだが」

 よし全くわからない、えっとつまり? と困惑顔をしていると。

「つまりだ、私の今回の支社の視察には君の人となりを調べることも入っていたのだよ咲百合とのことは関係なしにな」

「え?」×2

 俺と留美さんの声が重なる。

「今度支社を増やすに伴った大幅な人事異動が本社で行われるのだがそれのプロジェクトに必要な人間が少しばかり足りなくてな、今から育てるのは時間がかかりすぎるしそれで近場の支社から引っ張ってこようという話になったわけだそこで君に白羽の矢が立ったわけだよ」

「立っちゃいましたか」

「そうだ。君は自分を過小評価するようだが君の評価は素晴らしいものだよ、無遅刻なのは言わずもがな仕事は人並み以上に素早く終わらせ、なおかつ先月の熊本支社の大幅人事改革のプロジェクトも成功させている。これこそ今私が求めている人材だ」

「ねえねえ小野さん、そんなにすごい人なのあなたって」

 なにやら留美さんがこそこそ俺に聞いてくる。

「いやよくわからないですけど、たしかに今年度の人事異動は凄い量だったんで押しに押して先月末までかかっちゃたんで怒られるかなと思ったら何やらご褒美ってことでゴールデンウィークまるまる休みもらえたんですようちの部署」

「へー」

 と良くわかんないやって顔で頷く留美さん超ぷりてぃー。

「旦那の前で人の妻といちゃつくとは聞いた通り図太い神経を持っているな小野くん……」

 その言葉にずびしっと背筋を伸ばし直立不動に成る俺まじ社畜。

「まあそんな訳だから再来週から頼むよ」

「で、ですがそのような事を急に言われましても、住むところとかもありますし」

「社宅がある」

「社宅って……」

 えーと、と思い脳内検索をかける。あれか! 前に資料で読んだ気がする。

「あのそれって一軒家ですよね? たしかうちで建てたモデルルームをそのまま使ってるっていう」

「そうだが」

「いやいやいや自分独身ですよ? 一人で一軒家って」

「家族を連れてきたらいいじゃないか」

「家族いませんよ? 報告書に書いてないですか?」

「いや報告書には偶に妹話を始めると止まらないのがたまにキズと書いてあるが?」

「あ~そうですね流石に戸籍までは調べてませんか」

「どういう事だね」

「両親は昔事故で無くしまして唯一の肉親の妹も一昨年……」

 その言葉を聞いた専務は目を細め留美さんは口に手を当て驚きを隠せないでいたけどその表情もプリティーです。まあ妹は留学してるだけなんだけど……間違ってないよな? そもそも大学生の妹を連れてきたら学校どうするんだよ。

「そうか、それはなんと言ったら……」

「いえいえ気にしないでください」

 ホントに気にしなくていいのにな、などとボケ~と思っていると。

「あなた、うちに下宿してもらうのはどうかしら」

 そんな留美さんの言葉に、お前は何を言ってるんだ? と言う視線が専務から留美さんへ放たれる、いや俺もそう思ってるけど。

「幸いうちには空き部屋がありますし」

 ぽむっと手をたたき何かに納得したようだが男二人は全く納得しておらず。

「いやいやいやそれなら一戸建てでもなんでも一人で住みます」

「そうだ今まで一人暮らしだったんだからたかがマンションの一室が一戸建てに成ったからといって不自由はないむしろ快適なはずだぞ?」

 と全力で回避を試みる男二人。あれ? 何かよく解らなくなってきたぞ?

「小野さんはこの家がお嫌いなんですか?」

 なんか良くわからない質問きたぁあああああ! え? 何これどう答えればいいの? と専務の方を盗み見る。おおう目をそらされたっていうかカメラからフレームアウトしたぞ?

「あの専務? どうすれば……」

 そう聞いた時ピリリリリっと俺の端末が成った何このタイミングで? いや間を開けるにはチャンス!

「あ、すみません急用かもしれないんでちょっと失礼します」

 そう留美さんと見えない専務に断って部屋の片隅で端末を見ると知らない番号からだ。取り敢えず小首を傾げつつ電話を取る。

「はい小野です」

「私だ」

「誰だ」

「その家の主だ」

 ……なにしてんすか専務。

「どうしてこの番号を?」

「報告書に載っていた」

 なるほどねー。

「それで自分はこの状況をどう乗り切れば宜しいのでしょうか?」

「もう私にはどうすることもできん諦めてくれ」

「いや、でも専務はそれでいいんですか? 一つ屋根の下に何処の馬の骨とも解らない男が住むんですよ? 奥さんと娘さんがいる家に」

「私が好き好んで了承してると思っているのか! だがなあの目はもう無理だ……あの目に反論しようものなら……絶交される」

 ダメだこいつ早く何とかしないと……

「えーと、ではここに住んじゃっても良いのでしょうか?」

「やむをえまい、そうしないと私が死んでしまいそうだ」

 いやあなたが死んだら会社が結構ピンチに成っちゃう気がするんですけど、え? なに俺の住むとこで会社の命運決まるの? どういう事なの?

「はぁ、わかりましたではそのようにします」

「何だうちの家に住むのがそんなに不服なのか?」

「いえいえいえいえいえ滅相もございません大変喜ばしいです、はい」

 その言葉を聞いたかわからないが、ぶつっと電話が切られるとTV電話の方に専務が現れ視線で「さっさとしろこの糞虫め!!」と言っている。

「おまたせしました留美さん、この話ありがたくお受けします」

「まあ、それは良かった」

 花のように可憐な笑顔を見せる留美さんを見つつ、どうしてこうなったんだろうなぁと、そう遠くない過去を振り返ったりもしたけど俺はきっと悪くない……と思う。  

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