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ファンタジークエスト  作者: 里山
第一章 Girl・ミーツ・おっさん

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くえすと10 そして二人は出会う

 五月頭のゴールデンウイーク、世間は連休中なのに私は仕事だった……まあ嫌なわけではないのだどね。

 私、双葉朱美(ふたばあけみ)の仕事は某通販会社の専務秘書兼運転手なのだけどもっぱら車に載せるのはそのお嬢さんだ。

 なぜかというと。

「娘に何かあったら仕事どころじゃない」

 と言う専務の一言によるものだ。最初は「何言ってるのこのおっさん」と思ったけど実際お嬢様に会ったことの在った私は直ぐに「まあ、あの娘じゃしょうないか」と思った。それほどまでに可愛かった。

 しかし、その可愛らしかったお嬢様もここ数年で随分変わられた。

 中学生になったばかりの頃は可愛い女の子と言う感じだったのだけど段々とお淑やかな美少女と言った風に雰囲気が変わられていかれた。まあ精神的に成長したのかと最初は思ったのだけど何故だか凄い違和感がずっと私につきまとっていた。

 それがこの日、五月六日土曜日、三日ぶりに会ったお嬢様を見た時その違和感の正体に気づいた。そう彼女は屈託なく笑っていた。この笑顔を見たのはいつ以来だろう。



「ふっふふ~んふっふふ~ん♪」

 鼻歌を歌いながら私は車に揺られる。

「お嬢様今日はごきげんですね」

 運転手の朱美さんが聞いてくる。

「わかっちゃいますか~? えへへ実は放課後お友達が遊びに来るんですよ」

 放課後というより委員会の集まりのために学校に向かっているから正確には違うのかな? とも思わなくはないのだけれど。

「伺っています。確か熊本から来られる男性の方なのですよね?」

「そうなのっ何年ぶりかの男友達なの! しかも学校以外だと初めてのお友達!」

「良く専務がお許しになられましたね」

「何をおっしゃるウサギさん、お父さんに言うわけ無いじゃないですか、お母さんしか知らないですよ。もちろん内緒にしてくれますよね?」

 うふふふふ、と邪悪な笑いと共にミラー越しに朱美さんの目を見る。

「はぁ、バレたときは私の援護してくださいよお嬢様、さすがに職を失いたくないので」

「大丈夫大丈夫もしそんな事になったらお父さんとは一生口聞かないって言いますから」

「それは死刑宣告と一緒ですよ。と言うか会社の業務に影響が出そうなのですが」

「キニシナイキニシナイっと」

 そんな会話をしていると学校前のバスロータリーへと到着する。

「じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃいませお嬢様」

 バムッと言うドアの閉まる音と共に去っていく車を眺め取り敢えずやらねばならないことを思い出し校門横の守衛さんの居る小屋を目指す。守衛さんに話を通しておかないと警察沙汰になりかねないのがこの学校のあれなところなのよねぇ。

「ごきげんよう」

 そんな挨拶をしながら私は守衛さんに声をかけた。


 

 

 

 



 殆ど走行音の響かない車内で現状を確認する、数日前ゲームの中で女の子と朝日を見た、そして何故か家に招待された、リアルの方の。そこまでなら、まあネトゲをやってる数百人に一人の割合くらいでは起こりうることなのかもしれない。俺には起こったことはなかったが。だがしかし「後から詳しいことメールするね」と言って送られてきたメールに待ち合わせ場所が書いてあるのはわかるとして往復の新幹線のチケットが付いているのはどういうことなんだってばよ! しかもグリーン車。

 まあ過ぎたことは置いといてだ、現在高そうなタクシー――はいやー? もちろんお代は支払われ済み――に揺られ待ち合わせ場所に向かってるわけだが……なんでソコを待ち合わせ場所に選ぶかなぁ、と何度目かのため息をつく。同じ質問をあいつにしたところ。

「その日委員会の集まりで学校行かなくちゃいけないのよ」

 うん、筋が通っているようで通ってないよね、別に他の場所でもいいよね? そうなのだ、待ち合わせ場所とは彼女の学校の校門前なのだ……ちなみに中学から大学までのお嬢様学校もちろん女子校。何これ新手のいじめ? と言ったら「女の子見るの好きなんでしょ?」とのことだ。いや好きだけどさ。

「はぁ、どうしてこうなった」

 ――俺の名前は小野茂(おのしげる)28歳独身、彼女いない暦年齢、彼女と思っていたら違っていた人一人、もちろん童貞。そしてよく言えばぽっちゃり系、身長180センチで体重が95キロなので聞いただけだとゴツイ人なんだけど運動しないのでプニプニなのだ。昔は妹に「兄さんは運動すればモテるのに」と良く言われた。つまり今のままではダメってことですね、しくしく。それは置いておいて何でそんな俺があんな所を目指しているのだろうと期待半分戸惑い半分の気持ちでいっぱいだ。  

 そんなため息をついているとバスロータリーに車が停まる。運転手さんがパタパタと降りてドアを開け荷物をおろし「アザーッス」――略すとこんな感じの長いセリフを吐いて――去っていった。

「なんだろう逆に疲れた気も……」

 そう思いつつ校門を見る。見た感じ普通の学校の校門に守衛さんの待機所がくっついてるといった感じだ。まあ今の時代私立だったら大体こんな感じだ。

「ほう、ここがあの伝説の」

 そう伝説のセーラー服発祥の地! まあ正確には違うという意見もあるけどね。と感慨にふけっていると。

「どう見ても目立ってる……」

 凄く見られていた、流石に世の中休み中なのでそんなに人は居ないのだが部活やら何やらの生徒がこっちを見てヒソヒソ言っている……コレはマジデヤバイ、そう思った俺は事前に聞かされていたとおりに守衛さんの居る校門横の小屋に近づいていく。少し近づくと中から守衛さんらしき人が出てきた、流石反応が早いな男に対して。

「おはようございます、私小野と申しますが」

 そう名前を名乗ると。

「おはようございます、お話は伺っております、こちらでお座りになってお待ち下さい」

 と小屋の片隅のベンチを勧められる。

「ありがとうございます」

 そう礼を言ってベンチに腰掛ける。そこは汗っかきの俺には優しい木陰になっていて気持ちがいい、そしてその場所からも校門から出てくる生徒たちが見えるが先程のように「変質者じゃないのあれ?」的な視線は随分と減った、気がする。中には興味本位なのか、じーっと見てくる女の子たちもいるけどね。

 うーむ、たしかにコレはいい場所だ流石俺の相棒お前のチョイスは間違ってない! などとリリィに対して賞賛の声を上げる。上げたは良いのだがあの世界のリリィを思い出しふと不安にも思う。あの世界では顔と身長あとは足の長さなど動きに関する部分は大体皆リアルの寸法だと思っていいのだが体重についてだけ誤魔化しやすいのだ、具体的に言うと増やす方は重心のバランスが取りづらく成ったりぶっちゃけ当たり判定が増えたりするので太らせる奴は少ない、偶に女性で胸を無駄に大きくして剣が触れないとか言ってる人もいたりする、だけど俺にも言えることだが痩せる方、つまり体重を軽くして当たり判定を減らす方はメリットのほうが大きい。唯一デメリットと言えばリアルに戻ってきた時の自分の体の重さくらいだろうか。そう、つまり何が言いたいかというと、リリィも俺と一緒でぽっちゃり系なのではないかということだ! てかよくよく考えたらあんなスタイルの女子高生がそこら辺に居るわけ無いじゃんって話なんだけどな。でも化粧が濃いやつとか眉毛が無い奴とかだったらどうしよう、てかそもそもあいつの本名すら知らないんだけど……あぁ愛しの妹よ、お兄ちゃん怖いよう。とラブリーシスターに念を送っていた俺の耳に。

「ありがとうございます、それではごきげんよう」

 と守衛さんと挨拶を交わす軽やかな声が聞こえる。へぇ~本当にごきげんようなんて言ってるんだ~すげーなーなどと他人ごとのようにぼーっとしていると、目の前に肩までの黒髪で白のカチューシャ装備、眉毛はキリッとしているけど変に弄った感じはなく化粧もパッと見していないが透き通るような白い肌が眩しい超スレンダーな一人の美少女が現れた……あれ、どっかで見たことが? TVかな? 芸能人かな? 凄いなぁ流石お嬢様学校こんな人居るんだぁとぼーっと見つめていると。

「おまたせいたしました、小野茂さんですよね? それでは行きましょうか」

 へ? とあたりを見回すが、もちろん俺しかいない、そもそも俺の名前を呼んでいる。え、俺? と自分を指さすと美少女が顔を近づけつつこう言った。

「なにぼーとしてるのよ。私よリリィよ、見ればわかるでしょ顔一緒なんだから」

 とその仕草に似つかわしくない言葉が聞こえた。

「え、あれ? お前リリィ?」

「咲百合ですわ、茂さん」

 と、目が笑ってない笑顔が返ってきた……ごめんなさいだってあっちとは髪型も色も違うんですものおほほほほ。

「えっと咲百合……さんはえっと、え?」

 思考が追いつかずキョドってる俺に。

「いいから行きますわよ、ここでは目立ちますから」

 言うとそそくさと歩き出す咲百合を追いかけようと荷物を持ちつつ周りを見てみると。

「おおぅ!」

 なんかすっごい注目されてる。なので逃げるようにバタバタと後を追うとバスロータリーに立っている咲百合が目に入る。蒼いセーラー服が眩しいな! やっぱりいいな!

「お、バス通学なんだ、そうだよな学生時代はこうでないとな!」

 そうそうバスの中で出会う少年と少女そして二人は惹かれ合う! とかいう妄想をしていると目の前に一台の見るからに高そうな車が止まる、そしてトランクが開くそして。

「荷物はトランク」

 そう一言言って咲百合さん――たぶん俺の友達――が優雅に後部座席に滑りこむ……えーまじでーと思いつつトランクに傷を付けないようにそーっと静かに荷物を入れ後部座席を覗きこむと、ぽむぽむと自分の隣の席を叩く咲百合さん――たぶん相棒――が居た。

「おじゃましまーす」

 そう言いつつゆっくりとなるべく咲百合から離れて腰をおろしバムっとドアを閉めベルトを閉めると。

「それでは出発します」

 と艷やかな声が運転席から聞こえた、おおう女の人なのかと一々びっくりしていると。

「何おっかなびっくりしてるのよもう」

 呆れた声が横から響く。

「いやだってさ女子校だし」

 弁明してみた。

「なら何で私見ても動揺するのよ」

 論破された。

「ふ、それはお前が可愛いからさ」

 おだててみた。

「あんたは可愛いもの見たらびびるのか」

 つっこまれた。

「あーいえばこーいう」

 ごまかしてみた。

「お前が言うなっ!」

 さらにつっこまれた……だってどう考えても違う世界の人なんだもん怖いよう。それに車内に無駄にいい匂いがしてるんだけど何この匂いなどと若干変態チックな動揺の仕方をしていると。

「てかさ何でそんなにドアにくっついてるの? 外の景色でも見たいの?」

 やっぱりつっこまれた。流石は相棒容赦がないぜ。

「いや俺汗だくだったから汗臭いかなぁ~と」

 などと恐る恐る言ってみる。だって女子高生からするとおっさんの汗の臭いなんてもうアレなんだろ? 化学兵器的な感じなんだろ? だって妹がそう言ってたもん「兄さん汗臭いです私以外の女の人だったら確実にセクハラで訴えるレベルですよ?」って言ってたもん。

「はぁ? 汗臭いのくらいで怒らないわよ、逆にコロンとかつけまくってたら車に乗せなかったけどね」

「嫌いなの?」

「軽くつけるのはいいのよ、ただね何事も付け過ぎるとダメね。まだ汗臭い方がわざとじゃないだけ遥かにマシよ。ってかそんなに匂わないわよ?」

「え、そう? じゃあ遠慮無くよっこいしょっと」

「やっぱり邪魔だからすみっこいって」

 ふぇ、いじめるの? ねえいじめるの? とつぶらな瞳で訴えかけると。

「冗談だからそんなキモい顔しないでよ」

 いじめっこはそう言って頬をポリポリかいてる。

「うふふふ、あ、失礼しました、私お嬢様の運転手をしている双葉朱美といいます、お嬢様がそんなに楽しげに話されているのが嬉しかったもので」

「あ、はじめまして小野茂といいます、えっとサラリーマンです、趣味は「あんたはお見合いでも始める気か」えーでもー双葉さん綺麗だしー胸大きいしーってお前ほんとにあっちより胸が「死ねこのクソ野郎」ゴヒュッ!」

 あの……リアルはその…ね…痛いんだよ? ほんとに、だからリアルっていうんだよ?

 などと俺が死線をさまよっている横で。

「本当にお嬢様と仲が宜しいのですね」

「もう朱美さんやめてくださいよ、別に仲良くないですよ」

 などという会話がなされていた……だれかポーションくださいHPがやばかとです。

「ん? なになんか飲みたいの? んじゃコレ上げる」

 そう言ってアームレストをパコッと開ける。え? そんなとこに飲み物入ってるの? なにそれ凄い。

「ありがとさすがは相棒」

「はいはい」

 いいからいいからとジャスチャーされ、こきゅこきゅと値段の解らない缶ジュースを飲む、何故わからないかって? 無地の缶なんだよ! でも超うめーし何これ何処で売ってんの? と聞こうとしてやめた、どうせ高そうだし聞くとやばそうだし。

「しかしお嬢様、専務にバレたときはほんとにお願いしますよ? 専務が出張の時に自宅に男性をお連れしたなんてことがバレたら確実にクビですから」

「だいじょぶじょぶ、まっかせっなさーい」

 そうナイムネを張る咲百合を見ている俺の脳に何か今スルーしてはいけない言葉があったきがすると警告が発せられた、それはもうデフコンワンレッドアラートである。

「まてまてまて! 専務というのはお前のお父さんだな」

 うん、と頷く咲百合さん十六歳

「そのお父さんが居ないと申したか?」

 ええ、と頷く朱美さん…幾つなんだろ?

「え、何どういうこと? ドッキリ?」

「え、あんたお父さんに会いたかったの?」

「いやいやいや滅相もございません」

 そっかーお父さんいないのかー……え? それほんとに俺行っちゃっていいの? 俺騙されてるんじゃね? ダイジョブなの俺? 実はコイツ闇の組織の娘で人身売買とか臓器売買とかそういうのじゃないのコレ? とそこで気づく。

「そう言えば苗字なんて言うんだ?」

「へ、わたし? 五ノ宮だけど?」

 ふ~ん、ぱっと思い出せるそっちの人たちの名前にはなさそうだなぁと思い、はて? と思い当たるものがある。

「なんか英語に訳すと俺の勤めてる会社名に似てるな」

「へぇ、なんて会社なの?」

「フィフスパレスコーポレーションっていう知る人ぞ知る通販メーカーでな意外と俺も高給取りなんだぜ? お前んちには負けるけどなー」

 そう言ったら反応がなかった。まあそりゃねこのゴージャス空間を満喫してる人的には俺なんて庶民ですよー、といじけて残っていたジュースを飲んでると。

「それ……うちの会社」

 え、なにこのジュース作ってるの?

「なにが?」

「あんたのお勤め先」

 ふーん、こきゅこきゅkゴヒュゴホゲホ!!

「あぁぁ汚いなぁもう」

「いやまてどういうことだってばよ、だって専務って」

「うんとね、元々はウチのお父さんとおじさん、あー社長ね、が小さい会社から始めたんだけど」

「いや自分の会社の成り立ちくらい走ってるけどって、あーそうか社史に書いてあった。株式上場するときに元の名前じゃなんかよくある名前だから他の名前から取ったって」

「うん、それが私のうちの名前なのよ」

「へ~……あのさ俺が泊まってることがバレるとさ俺ってひょっとして失業?」

 とはてなエモが出そうな勢いで首を傾げつつ横と前に座る二人に疑問を投げかける。

「………」×2

 ねえ、何で何も答えてくれないの? ねぇ誰か答えて?

「か~え~る~お~う~ち~に~か~え~る~」

 半泣きでそう言う俺の言葉は最後まで無視され続けた……

一話あたりが長すぎることに今さら気付き分割することにしました。


いやぁ文字制限があるなんて……

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