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第6話:怪しいジャンクと、私の居場所


 昨日の『スーパーオニオン』でのお祝いお茶会から明けた、翌日。


 早朝の秋葉原は昼間や夜の喧騒が嘘のように静かで人が居らず、軽いジョギングには最適だ。


 元々体操をやっていたから、身体の柔軟性には自信があっても、それを保つとなるとそれなりの努力は必要だったりする。


 日課の走り込みとストレッチを終えた私は、お店のちょうど裏にある古く小さな倉庫の扉のカギを開ける。そこは元々お爺さんがひとりで営んでいた昔ながらの不動産屋の跡地を店長が借り受けたもので、ここが私の仮住まいとなっている。


 店長は「まぁ元々倉庫だし、福利厚生の一環かな」と言って、お給料からほんのささやかな天引きで家賃としてくれているので、その点は頭が上がらない。


 もちろん、店長には自宅が別にあるので、同居という訳では無い。どちらかと言うと「弟子と師匠」といった感じが、私と店長の関係に一番しっくり来るかも知れない。


「ここも、だいぶ慣れたなぁ……」


 お店に入らない在庫のジャンクや、店長の推しのグッズが雑多に保管されている中。フラつく間仕切りを置いて、僅かな空間だけど、私のパーソナルスペースとなっている。敷き布団も無いから、ベッドは元々放置されていた古いソファーだ。


 店長から教わっている瞑想と剣の鍛錬を熟した後、本当に申し訳程度でついているシャワーを浴びて、汗を流す。

 

 お金が無くて普通のコスメは買えないし、100円均一で買った優秀な相棒達で、軽くメイクして下準備完了。昔から肌は強くて荒れないのが、とても有難い。


 ホタルにもらったシュシュで、ちょっとアップめにした髪をサイドで留めて、

倉庫の扉を閉め、雑居ビル地下にある我が職場――『アングラ堂』に出社だ。



 今日も今日とて、店内は怪しい雰囲気と静寂に包まれている。



「ふぅ…… やっぱり『アングラ堂』の匂いは落ち着くなぁ……」


 レジカウンターの奥で、軽く両腕を伸ばして掃除道具を手に取る。


 店には、何に使われるのかも分からないレトロな電子パーツの独特な匂いや、古書独特の埃っぽさ、そして棚の奥で微かに唸りを上げる謎の真空管アンプの隣に、フィギュアが置いてあったり、まさにアンダーグラウンドを煮詰めたような空間。


 それを手慣れた手つきで、パパッと拭き終える。


「よし、開店準備完了……と」


 店の入口の札を『Open』へと裏返し、レジをセットしながら横へ目をやる。


 そこには、昨日の事件の後に『裏アキバ』から持ってきた『手のひらサイズのゲームカセット』がちょこんと飾られている。


「あれ、何か書いてある……」


 カセットのタイトルを見ると『メックマン4』と小さく書かれていて、金色なピカピカな感じからちょっと特別感を感じる。カルマが浄化されたただのジャンク品だけど、どこか愛嬌があってカワイイ。


 うーん、私も店長のこと、あまり言えないかもなぁ……。


 しばらく戦利品達を眺めていると、ドアベルの涼やかな音とともに、店長が大きなダンボール箱を抱えてドタバタと入ってきた。


「アカリちゃ〜ん! 見て見て! 今朝のネットオークションで、すっごい掘り出し物を競り落としちゃったよ〜!」


「……はぁ。またそんな物買って……今度は何のジャンクですか?」


「甘いよアカリちゃん! なんとこれ、80年代に一部のマニアの間でのみ流通していたと言われる、伝説の『思考検知機能付きのゲーム機』のプロトタイプなのだよっ!」


 ドヤ顔でダンボールから取り出されたのは、黄ばんだプラスチックに無数の謎のメーターとダイヤルがくっついた、どう見ても怪しさ満点の機械だった。



「……これ、絶対にただの怪しいゴミですよね。一体、いくらしたんですか?」


「えっ? たったの三万円だけど……」


「三・万・円!? 今月の私の食費より高いじゃないですか! 早く棚にしまってください! 誰も買いませんよそんなのっ!」


「えぇ〜っ!? すっごくロマンがあるのに〜!」


 ハタキを手に「シッ、シッ」と追い払う私と、大切そうに怪しい機械を抱えて奥へ逃げていく店長。バタバタと巻き起こる、いつもの無駄で不毛なやり取り。


(……まったく、呆れたオタクおじさんめ)


でも、と私は胸の中でそっと呟く。


 昨日、吉岡さんに「ウチで働かない?」と冗談めかしく言われた時、店長は「困ります」とすぐに即答してくれたことは嬉しかったかも。



「ふふっ……」


「んー? アカリちゃん。今、笑った?」


「笑ってません。ほら店長、棚のホコリ拭いてください。お給料分はちゃんと働いてもらいますからね!」


「うーん、厳しいィ! アカリちゃんは今日も実にクールだねぇ〜!」


「うるさいです」


 ジトーっと店長を睨み返しつつ、私は在庫のジャンクを布巾で拭く。


 この怪しいお店と、頼りなくて不思議な店長がいるこの場所が、なんだかんだ言って私は好きなのかもしれない。そんな風に思う。


第6話目、今回はアカリの日常生活のお話です~!

残りは1日1話ペースくらいでアップ予定( *¯ ω¯*)ノ

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