↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/14

第4話:日常と影の蠢き


 事件の翌日。


 秋葉原の空は、昨日の陰鬱さが嘘のように抜けるような青空が広がっていた。


「アカリちゃん……! ほんとうに、本当にありがとう……っ!」


『アングラ堂』のカウンター越しに、ホタルが私の両手をぎゅっと握りしめ、涙ぐんでいる。それだけで、その後の結果は聴くまでもないだろう。



「昨日の夜にはね、あんなに酷かったSNSの炎上が嘘みたいに落ち着いたみたいなの……。変な動画も消えちゃったみたいで、凸電もピタリと止まったんだ!」


「ふふ、よかったじゃない」


「あの……店長さんも、本当にありがとうございました! ウチの吉岡店長もぜひお礼したいと言っています!」


「え? う、うん……それは良かった。まぁ、今回一番活躍したのはアカリちゃんだから、そのお礼は彼女に渡してくれると助かるよ、ハハハ……」


 店長が苦笑いしながら、私の肩をぽんぽんと叩く。

 

 うっ、店長ゴメン……。


 その意図を察して、私はホタルがお礼に持ってきた紙袋を見つめて微笑む。


「お代は、この手作りお菓子だけで、充ぅ分!」


 紙袋の中の手作りクッキーをひとつ摘んで、それを店長の掌に握らせると、

彼は誤魔化すように頭をかきながら一息に頬張る。


「んーむ、そうだねェ。いやぁ、このお菓子おいしいなぁ。ハッハッハ……」


 だが、逆に恐縮してしまったホタルは「今度また別でお礼させてください!」と

何度も頭を下げながら、晴れやかな笑顔で帰っていく後ろ姿を私は見送った。


(でも…よかった……本当に……)



 守りたい人を助けたい……。そんな当たり前なことが、少し前の私には出来なかった。でも、今の自分にはそれがある。大切な居場所と、大切な友達を守れる強さが私にはあるんだ。


 だから、もっと早く、もっと強くならなきゃ……。


 そう思うだけで、胸にじんわりと心地よい達成感が広がるのを感じる。


 お金の大切さは身に沁みているけど、こういうのも全然悪くない。


「これも店長のおかげ……って、いけない! 店長、そのレトロゲームのフィギュア、残カルマのチェック忘れてた! そのまま飾っておいても平気かな?」


「ん? まぁ、悪いカルマは浄化され、ただの可愛いジャンクになってる様に見えるから大丈夫じゃない。 まぁ……『カワイイお土産』を何でも集める趣味は、ちょっと悩ましいけどね。あまり、変なモノは持って来ちゃダメだよ?」


「だって、カワイイからもったいないじゃないですかっ! 店長だって、

推しのグッズばかり増やしてるし、人のこと言えないんじゃないですかねぇ……」


 反論する私に、店長は「イヤイヤ、推しのグッズはだねぇ…」と、

よくわからない理論でまた返してくる。


 怪しげで、ユルくて、けれど温かい、これが今の私の日常……。




 だが、そういう幸せな時に程、流れはカオスに向きはじめる――


 店長が奥の作業場へと戻り、再び店番をする為に一人になった店内で

スマホを眺めていた時だった。


――ピロンと耳に残る通知音が鳴り、

 一通のニュース速報のポップアップが画面に表示される。


『【速報】都内複数の店舗に対し、同一犯による大規模な捏造炎上攻撃が相次ぐ。

実行犯は『拡散グループ』の仕業か?』


 思わず画面をスワイプして記事を開く。

 

 そこに記載されていた手口、そして使われているハッキングなどの特徴。


「…嘘……」思わず息が止まった。


 その歪んだSNS投稿のテキストや癖。悪意の撒き散らし方。

 

 それは――数年前、私の家族を地獄に突き落とし、

人生を全て壊した『あの炎上事件』の実行犯と、まったく同じ手法。


「また……動き出したの……?」


 手の中のスマホを、指が白くなるほど強く握りしめる。

 

 

「抑えなきゃ……」自分の意思を遮るようにドクン、ドクンと鼓動が止まらない。

 厭な冷や汗が頬を伝い、忘れたい過去の暗いモノが湧き出る感覚。


 平和になった筈の秋葉原の街に覆う、新たな波乱が産声を上げたのだ……。



第4話目エピソードのひと区切りです!

次回は緩急をつけて、アカリの日々貧乏生活とマッタリ回の予定です( *¯ ω¯*)ノ


※ご感想やレビューも、お待ちしております~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。