エピローグ
―エピローグ―
肩の先には鈍い痛み。
目の前には、すでに動かなくなってしまった愛する人。
「……」
それをぼんやりと見つめながら、僕はただただ、時が来るのを待っていた。
どれくらいそうしていただろうか。遠くから大勢の足音が聞こえてくる。
「時雨っ! ――!」
冬歌の息を飲む音が聞こえて、僕はゆっくりと振り返った。
そこには冬歌、隊長、それに多くの隊員が、僕を見て固まっている。そうして隊長が、意を決したように口を開いた。
「……お前が、やったのか」
隊長の低い声に。
――頷く。
「そうだよ」
そうして、笑って。
「全部、――全部ね」
「春告まで、お前……」
信じられないと言うようなみんなに、僕は笑った。
「……ほんとに、バカな女だったよ」
「な……」
「近づけば簡単に気持ちを傾けて、言いなりになってさ」
どうにか、自分にすべてが向くように。
彼女と同じように演じていく。
「僕がこんなことしでかしても、自分が守るなんて言っちゃってさ。こんな風に最後には殺されるなんて知らずに。それは君たちもそう」
一度彼女を見てからそう言って、僕は彼らの方に銃口を向けた。
「「っ!」」
その瞬間、全員が僕に銃口を向ける。
「邪魔をするなら、君たちも百合愛と同じ道になる」
「時雨」
「凜道、銃を下ろせ」
「嫌だ」
「凜道っ!」
「だめだよ」
隊長が怒鳴っても、なにをしても、僕の意志は変わらない。
だって。
「英人だよって言ってあげなきゃいけないから」
冬歌に笑えば、すべてを察した彼はぐっと歯を食いしばる。今にも泣きそうな顔の冬歌に、少しまたこみ上げるものがあったけれど。僕はなんとか微笑みをくずさなかった。そんな僕に、ほかの隊員は狂気を見出したんだろう。ハンマーを起こす音が聞こえて、僕はまっすぐに彼らを見据えた。
いくつもの銃口、そしてたくさんの、怒りの目。その中で、
最期に、思うのは。
これまでの、僕らの日々のことだった。
百合愛と冬歌と三人で他愛ない事で笑って、怒って、泣いたこともあった。いつからか傍にいてくれることが当たり前になった二人との日々は、幸せで。
兄のようにいてくれた冬歌を尊敬していて、追いつきたくて。ずっと恋焦がれていた百合愛は、姉のようにふるまってくれることもあれば、ときどきそれが背伸びをして見えたのもかわいくて。
叶うのなら、この先。百合愛と恋人になって、冬歌に「よかったな」って頭を撫でてほしかった。三人で変わらず支えあって、たくさん笑いあいたかった。けれど、もう。
この、僕らが生きる世界じゃ難しいから。先に、――。
「――ね」
「っ」
冬歌に笑って、向けられた銃口たちを見る。
その、すべてが。しっかりと僕に向けられていた。
きっと、誰一人外さない。
わかって、少しだけ手を強く握った。
「――……」
そのときに、一瞬だけ声が聞こえた気がした。それに、頷いて。
大丈夫、恐くなんてないよ。
心の中でそう返す。
だって、
「……ほんとだよ」
――この向けられた銃口の先に、君がいるのだから。




