おかえりが増える日
第15話は、“家族へ伝えること”と“結婚”をテーマに描きました。
今回は、
* 両親への報告
* 親友への報告
* 妊娠による変化
* 「結婚しよう」の言葉
など、“二人の人生が大きく進む瞬間”を描いています。
また今回は、
“安心優先”
というテーマを、妊娠後の奈々の変化にも繋げています。
このシリーズらしい、穏やかな家族の空気を楽しんでもらえたら嬉しいです。
夏の始まり。
窓の外では、蝉が鳴き始めていた。
奈々はソファへ座りながら、深く息を吐く。
「……緊張する。」
「奈々ちゃん今日それ何回目?」
悠斗が苦笑いする。
奈々はクッションを抱えながら顔をしかめた。
「だって今日はさすがに緊張するもん。」
今日は、両親へ報告する日だった。
⸻
テーブルの上には、小さな箱が置かれている。
中には、エコー写真。
奈々はそれを見ながら、小さく笑った。
まだ少し不思議だった。
でも最近は、
“本当に家族になるんだ”
という実感が、少しずつ増えてきている。
その一方で、奈々の身体は少しずつ変化し始めていた。
夜になると疲れやすい。
眠気も強い。
そして最近は、安心するとかなり気が抜けるようになっていた。
⸻
最初は奈々の実家。
玄関の前で、奈々はかなり固まっていた。
悠斗が小さく笑う。
「ぼくまで緊張してきた。」
奈々が吹き出す。
「悠斗くんもじゃん。」
でも、そのおかげで少し力が抜けた。
悠斗はそっと奈々の手を握る。
奈々も安心したように握り返した。
昔から変わらない。
不安な時ほど、
隣にいると落ち着く。
その感覚が、今もちゃんと二人を支えていた。
⸻
リビング。
少し静かな空気。
奈々のお母さんが、お茶を置きながら二人を見る。
「今日はどうしたの?」
奈々は一瞬悠斗を見る。
悠斗も静かに頷いた。
奈々は小さく深呼吸する。
それから、少し照れながら笑った。
「……赤ちゃん、できた。」
部屋が静かになる。
奈々のお父さんがゆっくり目を丸くした。
お母さんも数秒固まる。
奈々はかなり緊張していた。
でも、その直後。
お母さんの目が少し潤む。
「……ほんとに?」
奈々は小さく頷く。
その瞬間。
お母さんが泣きながら笑った。
「おめでとう……!」
奈々もつられて少し泣きそうになる。
悠斗はそんな奈々を見ながら、安心したように息を吐いた。
⸻
そのあと。
奈々のお父さんは少し照れながら咳払いする。
「……ちゃんと幸せにするんだぞ。」
悠斗はすぐ背筋を伸ばした。
「はい。」
その返事は、かなり真っ直ぐだった。
奈々はその横顔を見ながら、小さく笑う。
安心した。
本当に。
⸻
実家からの帰り道。
奈々はかなり疲れた顔で、悠斗へ寄りかかっていた。
「……つかれたぁ。」
「今日はかなり緊張してたもんね。」
悠斗が苦笑いする。
奈々は小さく頷く。
妊娠してからは、疲れるとかなり眠気が強くなる。
身体も少しずつ変わってきていた。
奈々は照れながら小さく笑った。
「……最近ほんと安心すると気抜ける。」
悠斗は一瞬奈々を見る。
それから優しく笑った。
「無理しなくていいよ。」
その言葉だけで、奈々はかなり安心した顔になる。
⸻
夜。
二人の部屋。
奈々はお風呂上がりにソファへ座りながら、大きく息を吐いた。
「……なんか今日どっと疲れた。」
悠斗は飲み物を渡しながら、小さく笑う。
「いっぱい頑張ったもん。」
奈々は嬉しそうに笑った。
それから少し照れながら、小さく呟く。
「……最近、夜ちょっと不安なんだよね。」
「不安?」
奈々は頬を赤くしながら頷く。
「寝ちゃうと、かなり深く寝ちゃうし……。」
妊娠してから、身体の感覚は少し変わっていた。
疲れるとかなり眠ってしまう。
安心すると、さらに気が抜ける。
だから最近は、夜も“安心優先”で過ごすことが増えていた。
⸻
悠斗は奈々の隣へ座る。
そして、小さく笑った。
「無理して我慢するほうが心配。」
奈々は少し安心したように笑う。
「……悠斗くんそう言ってくれるから安心する。」
その夜。
二人は寝室で並んで横になる。
静かな空気。
暖かい部屋。
奈々は少し照れながら、小さく笑った。
「……なんか最近、ほんと安心しきってる。」
悠斗が吹き出す。
「前からじゃん。」
「妊娠してからもっと。」
奈々も笑った。
⸻
部屋の照明が暗くなる。
奈々は毛布へくるまりながら、小さく息を吐く。
「……ねむい。」
「奈々ちゃん今日ずっとそれ言ってる。」
悠斗が苦笑いする。
奈々は半分眠そうに笑った。
「だって安心するんだもん。」
その声はかなり穏やかだった。
安心できる部屋。
安心できる人。
帰れる場所。
その全部に包まれて、奈々の身体からゆっくり力が抜けていく。
⸻
翌朝。
柔らかい朝日。
奈々はゆっくり目を開ける。
「……ん。」
かなり深く眠っていたらしい。
奈々は数秒ぼんやりしてから、小さく吹き出した。
「……めちゃくちゃ寝た。」
悠斗も目を開けて苦笑いする。
「奈々ちゃん完全熟睡だった。」
奈々は少し照れながら笑った。
「……最近ほんと安心しすぎ。」
でも、その表情はかなり穏やかだった。
不安がゼロなわけじゃない。
これから大変なこともあると思う。
でも今は、
“一緒なら大丈夫”
そう思えた。
⸻
後日。
美咲の家。
三人で食卓を囲みながら、奈々はかなり落ち着かない様子だった。
美咲が吹き出す。
「奈々、分かりやすすぎ。」
「だって緊張する……。」
悠斗も少し照れている。
そして奈々は、小さく笑った。
「……結婚することになった。」
数秒の沈黙。
そのあと、美咲は一気に笑顔になった。
「え、ほんと!?」
奈々が頷く。
美咲は目を少し潤ませながら笑った。
「よかったぁ……。」
その声には、昔から二人を見てきた優しさが詰まっていた。
⸻
帰り道。
奈々は悠斗の隣を歩きながら、小さく笑う。
「……なんか幸せすぎて変な感じ。」
悠斗も静かに笑った。
「ぼくも。」
奈々はそっと悠斗の手を握る。
悠斗も自然に握り返した。
安心できる人。
帰れる場所。
そして、これから増えていく家族。
夏の夜風は暖かい。
二人の“帰り道”は、
これからもきっと、
ゆっくり続いていく。
第15話「『おかえり』が増える日」を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、
“恋人”
から、
“家族”
へ変わっていく二人を描きました。
奈々と悠斗は、
ずっと「安心」を探してきた二人です。
そして今は、
“安心できる帰り道”
そのものを、自分たちで作ろうとしています。
また今回は、
妊娠によって少しずつ変化していく奈々の身体や、
「無理しなくていい」
と支えようとする悠斗の空気も大切に描きました。
これから二人が、
どんな家族になっていくのか。
またゆっくり描いていけたら嬉しいです。




