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安心できる帰り道  作者: たい


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14/22

はじめての産婦人科

第14話は、“家族になる実感”をテーマに描きました。


今回は、


* はじめての産婦人科

* 小さな不安

* でも、それ以上にある安心感


を中心に描いています。


このシリーズではずっと、


「安心できること」


を大切にしてきました。


そして今、その安心感は、


“二人”

から、

“家族”


へ変わろうとしています。


少しずつ変わっていく二人の空気を、楽しんでもらえたら嬉しいです。

初夏。


柔らかい風がカーテンを少し揺らしていた。


奈々はソファへ座りながら、小さく深呼吸する。


「……なんか緊張する。」


悠斗はそんな奈々を見ながら、小さく笑った。


「ぼくも。」


今日は、はじめて二人で産婦人科へ行く日だった。


検査薬では陽性。


でも、ちゃんと病院へ行くのは今日が初めて。


奈々はお腹へそっと手を当てながら、小さく息を吐く。


まだ実感は少ない。


でも、


“何かが変わり始めている”


感覚だけは、少しずつ増えていた。



病院までの道。


奈々は悠斗の隣を歩きながら、小さく笑う。


「……なんか不思議。」


「うん。」


悠斗も静かに頷く。


付き合って、

同棲して、

一緒に暮らして。


その延長に、今がある。


でも、それでもまだ少し信じられなかった。


奈々は苦笑いする。


「わたし、ちゃんとお母さんになれるのかな。」


その声は、少しだけ不安そうだった。


悠斗はゆっくり奈々を見る。


そして、小さく笑った。


「一人じゃないよ。」


奈々の表情が少し柔らかくなる。


悠斗は続けた。


「ぼくも一緒に覚えていくから。」


その言葉に、奈々は少し安心したように笑った。



待合室。


静かな空気。


雑誌をめくる音。


奈々は少しだけ緊張した顔で座っていた。


悠斗は隣で、小さく手を握る。


奈々は驚いたように見る。


悠斗は少し照れながら笑った。


「……緊張してるから。」


奈々は吹き出す。


「悠斗くんもじゃん。」


「うん。」


二人とも、かなり緊張していた。


でも、不思議と怖くはない。


隣に相手がいるから。


その安心感が、二人を落ち着かせていた。



診察が終わったあと。


病院の外。


奈々はまだ少しぼんやりした顔をしていた。


悠斗が小さく笑う。


「奈々ちゃん、魂抜けてる。」


奈々はゆっくり悠斗を見る。


それから、小さく笑った。


「……ほんとにいた。」


その声は、とても静かだった。


でも、すごく嬉しそうだった。


悠斗も優しく笑う。


「うん。」


二人とも、まだ実感は完全じゃない。


でも、


“これから家族になる”


その感覚だけは、ちゃんと胸の中にあった。



帰り道。


奈々は悠斗へ少し寄りかかりながら、小さく笑う。


「……なんか安心した。」


「よかった。」


悠斗も静かに頷く。


奈々は少し照れながら続けた。


「悠斗くん隣にいると、やっぱ落ち着く。」


悠斗は少し照れながら笑った。


「ぼくも奈々ちゃんいると安心する。」


その空気は、昔から変わらない。


でも今は、

その安心感が、

少しずつ“家族”へ変わろうとしていた。



夜。


二人の部屋。


奈々はソファへ座りながら、小さく息を吐く。


「……今日は疲れた。」


「かなり緊張してたもんね。」


悠斗が苦笑いする。


奈々も笑った。


でも、その笑顔はかなり穏やかだった。


不安がゼロなわけじゃない。


これから分からないこともたくさんある。


でも今は、


“一緒なら大丈夫”


そう思えた。



奈々は小さくお腹へ手を当てながら呟く。


「……ちゃんと安心できる家にしたいな。」


悠斗は静かに奈々の隣へ座る。


そして、そっと肩を寄せた。


「きっと大丈夫。」


奈々は小さく笑った。


「うん。」


窓の外では、初夏の夜風が静かに揺れている。


二人の“帰る場所”は、

少しずつ、

新しい未来へ向かって歩き始めていた。

第14話「はじめての産婦人科」を読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、


“親になる実感が少しずつ生まれる瞬間”


を描きました。


奈々も悠斗も、

まだ完全に実感があるわけではありません。


不安もある。


緊張もある。


でも、


「隣に相手がいる」


その安心感が、

二人を少しずつ前へ進ませています。


また今回は、


待合室で手を握る場面など、


“昔から変わらない安心感”


も意識しました。


恋人になって、

同棲して、

家族になろうとしている今でも、


二人の中心にあるのは、


“安心できること”


なのかもしれません。

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