第4話 前編
半日後、俺はハンター協会に呼び出された。
案内された部屋では黒スーツの人々が待ち構えていた。
たぶん協会の上層部だろう。
彼らの背後には護衛らしきハンターが数人いる。
纏う雰囲気から察するにAランク以上の強者だ。
俺は用意された椅子に座った。
同行していたハチも隣の椅子に腰かける。
黒スーツを着た女性が書類を見ながら俺に尋ねた。
「佐々木佑都さん。21歳のFランクハンターで間違いないですね」
「はい」
「隣の方は例の……」
『対異界機装兵KG-80A試作型、通称ハチです。親機は亜空間に収納中です』
ハチは毅然とした態度で応じる。
すると、黒スーツの一人が発言した。
「ハチさん。親機を見せていただくことは可能だろうか」
『マスターの許可次第です』
「きょ、許可するよ」
『承知しました。亜空間収納を展開します』
次の瞬間、俺の背後にロボットが出現した。
場が一気にざわめく。
上層部の人間は機体をじっと観察する。
「こ、これが……」
「確かに未知のテクノロジーで製造されているようだ」
どうやら鑑定系のスキルで機体を調べているらしい。
俺は何もできず待つ。
やがて観察を終えた中央の女性が本題を切り出した。
「さて、単刀直入に要求します。こちらのアーティファクトを協会に譲っていただけませんか?」
「それは命令ですかね……」
「もちろん違います。ダンジョン規定において、探索中にハンターが入手したアーティファクトは、本人の所有物となります。ですのでこれは我々からの要望ですね。法的な強制力はありません」
「だがしかし、Fランクの君にはこのロボットを使いこなせやしない。機体を協会に提供してくれれば、当分は困らないだけの資金を約束しよう。悪くない条件だと思うがね」
別の人間が挙手をしながら言った。
すかさずハチが真顔で反論する。
『機体とマスターの魔力は驚異的なシンクロ率です。使いこなせないという判断は誤りです。そもそもマスター登録は完了しているので、他者の操縦は認められません』
「ハチさん、協会には優れたハンターが何万人もいる。佐々木君はその……戦力レベルとしては非常に低い。シンクロ率がどうとか言っているが、彼以上の適役はごまんといるはずだ」
『繰り返しますがそれは誤った判断です。マスターはこの世界で最高峰の適合操縦者です』
ハチが断言すると、室内に気まずい沈黙が訪れる。
協会の上層部に容赦なく反論するなんて不味そうだが、ロボットを没収されるわけにはいかない。
ここはハチに頼るしかなかった。
やがて思案を終えた中央の女性が頷いて述べる。
「事情は分かりました。では話を変えましょう。佐々木さんには昇級試験を受けていただきます」




