第9話 後編
俺はハチと共に街中を歩く。
ロボットが隣を歩いているのでやたらと目立ち、通行人の注目を集めている。
遠慮なくスマホを向けられて写真を撮られているので居心地が悪い。
本当は機体を亜空間に仕舞うべきなのだが、内部にミコトがいるのでそれができないのだ。
ハチ曰く、亜空間収納には生物を入れられないのだという。
便利機能の思わぬ弱点が発覚した瞬間だった。
周囲からの視線に晒されながらも、ハチがそれに反応することはない。
彼女はダンジョンにいた時と同じ態度で俺に尋ねる。
『マスター、この後の予定は決まっていますか?』
「もっと別のダンジョンに潜りたいけど……ちょっと休みたいかな」
『過度な鍛錬は悪影響を及ぼします。試験直後ですし、ここは休息を入れるべきでしょう』
その時、少し遠くから悲鳴が爆発音が聞こえてきた。
俺達に注目していた通行人も足を止めて騒然とし始める。
「な、何だ!?」
音の方角から人々が走って逃げてくる。
彼らは血相を変えて叫んでいた。
「ダンジョンブレイクだ!」
「モンスターが来るぞ! 逃げろーっ!」
それを聞いた通行人達も大慌てで逃げる。
俺は息を呑んで音の方角を見つめる。
ダンジョンブレイクとは、モンスターが地上に溢れ出る現象だ。
発生条件は未だ壊滅されておらず、唐突に起こるので災害の一種とされている。
「……ハチ、行こう」
『休息は後回しですか』
「ああ、皆を助けるのが先だ!」
俺は機体に乗り込み、現場へと走り出した。
ハチも素早い動きでついてくる。
ダンジョンブレイクが発生したのはショッピングモールの駐車場だった。
時空の歪みから溢れ出すモンスターに対し、ハンター達が連携して戦っている。
あちこちに怪我人が倒れており、現場は混乱している状態だった。
「酷いな……」
『空気中の魔力濃度が上昇中……早急に解決しなければ被害は拡大するものと思われます』
「俺達に太刀打ちできるかな」
『魔物の等級は推定Bランク上位です。問題ないでしょう』
ハチは毅然とした態度で言う。
少なくともミコトと戦った時よりマシなのは間違いない。
覚悟を決めた俺はロボットを操縦する。
「行くぞ!」
『かしこまりました』
そうして俺達はダンジョンブレイクの終息に動き出した。




