第7話 前編
マスクの女がわざとらしく首を傾げて俺を嘲笑ってくる。
「あれれー、二人がかり? 別にいいけど足手まといが増えても意味ないんじゃない?」
「黙りなさい。マスターに対する侮辱は万死に値します」
「ぷっ、なにそれ。主従ごっこ?」
女が口を押さえて噴き出した。
その反応でハチの殺気がさらに高まっていく。
今にも飛び出しそうなハチを横目に、俺は女に向けて呼びかけた。
「あの、勘違いしてるかもしれないんですけど、俺達は昇級試験中なんです。別に戦う気はなくて……」
「えっとさー、そっちの事情とかどうでもいいから! あたしは殺したいから殺すの」
マスクの女は鬱陶しそうに言う。
嘘を言っている感じはない。
ただの本心からの発言であった。
女は鉈を一回転させてから楽しそうに名乗る。
「あたしはミコト。よろしくねっ」
ミコトがトップスピードで斬りかかってくる。
それに合わせて動いたハチが斬撃を弾いた。
「排除します」
「いいねぇ、上等だよ!」
再びハチとミコトの攻防が繰り広げられる。
傍観していた俺は我に返り、ロボットの拳を振り上げた。
「お、俺だって……!」
「邪魔だよ、ザコザコ君」
横から繰り出した打撃に対し、ミコトは上体を反らしながら鉈を沿わせてくる。
絶妙な力加減で受け流された拳は、軌道がずれてハチの肩に命中した。
回転して飛んでいくハチを見て俺は狼狽する。
「うわっ、ごめん!?」
「はい、よそ見」
鉈の連撃が機体に叩き込まれていく。
火花が散り、装甲に大きな亀裂が走った。
あまりの衝撃に操縦性が揺れて、俺は反撃できずに呻く。
一方、ミコトは鉈を振りながら感心していた。
「わお、硬いねぇ。何の素材使ってるの?」
そんなミコトを駆け戻ってきたハチが容赦なく蹴り飛ばす。
ミコトは地面や壁、天井を激しくバウンドし、暗い通路の彼方へと消えていった。
着地したハチは俺に問う。
「マスター、ご無事ですか」
「ごめん、俺……」
「お気になさらず。相手はかなりの強敵です。共闘すべきと判断したのは間違っていません。むしろ単独で対処できなかった私の責任です。申し訳ありません」
その時、通路の奥からミコトの喚き声が聞こえてきた。
俺は息を呑んで戦慄する。
「あいつ、まだ戦えるのか……」
「マスター、聞いてください。私に考えがあります。実行にはマスターの協力が不可欠です。危険を伴いますが、尽力いただけますか」
真剣な眼差しを向けてくるハチ。
俺の答えは一つしかなかった。
「ああ、やる。作戦を教えてくれ」




