第6話 後編
マスクの女が凄まじいスピードで迫ってくる。
掲げられた鉈を見て、俺は咄嗟にロボットの腕で防ごうとする。
「うわっ!?」
刹那、割り込んだハチが真剣白刃取りで鉈を止める。
一瞬のずれも許されない神業だった。
斬撃を凌いだハチは淡々と言う。
「マスター、お下がりください」
ハチが身体を捻って蹴りを放つ。
マスクの女はひょいと躱すと、そこから回転して蹴り返した。
反撃を腕で遮ったハチは、短いモーションから殴りかかる。
女はこれも紙一重で避けてカウンターを繰り出した。
そこから両者の打ち合いが加速していった。
外骨格の効果で強化された目でも次第に追い切れなくなっていく。
実力は……ほとんど互角だと思う。
あまりにハイレベルなので俺には理解できなかった。
やがて炸裂音と共にハチと女が距離を取る。
互いに息一つ乱さず、負傷らしきものも見当たらない。
その結果に俺は驚く。
(嘘だろ、ハチが一撃で倒せないなんて……!)
今までに遭遇したモンスターは、いずれもハチが瞬殺してきた。
こんな攻防を見せたこと自体が初めてである。
(相手のハンターはB……いやAランクか?)
俺はマスクの女を注視する。
女はへらへらと笑いながら鉈を回していた。
「えへへ、いいねぇ。つよつよじゃん」
「何者ですか」
「答える必要あるぅ?」
「あなたはマスターに危害を加えようとしました。ですので目的と背後関係を洗い出し――」
ハチが話している途中、女が不意打ちで鉈を突き出す。
切っ先がハチの頬を掠めていった。
女は口を曲げて文句を言う。
「難しいお喋りはきらーい」
「そうですか。では続きは尋問で聞かせていただきます」
ハチは淡々と宣言し、凄まじいラッシュを叩き込む。
しかし女は鉈で上手く防御しつつ、さらには間に反撃を挟み込んでハチを吹っ飛ばした。
壁に叩き付けられたハチは片膝をつく。
その姿を女はここぞとばかりに嘲笑した。
「あはは、弱っちいねぇ。もうちょっと粘ってよ」
「…………」
ハチは無言で立ち上がると、こちらを見て謝ってきた。
「申し訳ありません、マスター……」
「いや、俺こそ任せきりにしてごめん。ここからは二人で連携して戦おう」
俺は勇気を振り絞り、前に進み出た。




