第6話 前編
地下鉄の通路を進んでいくと、前方に槍を持ったリザードマンが現れた。
そのリザードマンはやや大柄で、鱗の色も鮮やかだった。
たぶん通常個体より強いタイプなのだろう。
ハチが俺の前で素早く構えを取った。
「マスター、どうしますか」
「ここは俺に任せて」
俺はロボットを前に進めてハチを追い抜かす。
こちらの動きに反応し、接近してきたリザードマンが槍の刺突を放ってきた。
外骨格で強化された動体視力で見切った俺は、ロボットの拳の装甲で受け流す。
そして、体勢を崩したリザードマンの顎にアッパーを炸裂させた。
リザードマンの頭部は派手に爆散し、痙攣する身体があえなく倒れる。
そこにハチが駆け寄り、採取した魔石を俺に手渡した。
「こちらをどうぞ」
「ありがとう」
ダンジョン攻略は順調だった。
半日ほどの特訓により、俺はロボットで戦えるようになった。
ただのパンチでも威力が高いため、だいたい一撃で倒せる。
攻撃を食らっても丈夫な装甲があるので安全だ。
Bランクダンジョンのモンスターはちょうどいい練習相手となった。
(もう少し速く動けるのが理想なんだけどなぁ……)
魔石を機体に入れたその時、壁の一部がぶれて透明な輪郭が浮かび上がる。
その透明な何かが襲いかかってくるも、俺が反撃する前にハチの飛び蹴りが直撃した。
悲鳴を上げて転がったのは短剣を握るゴブリンだった。
どうやら透明化のスキルを持つ個体だったらしい。
すぐさまハチが追撃を加えてゴブリンを仕留める。
「お怪我はありませんか、マスター」
「うん、大丈夫。油断しちゃってごめん」
「今の個体は魔力反応も薄かったです。反応が遅れたのは仕方ないかと」
今みたいに、俺の戦闘経験や操縦テクニックでは対処が難しいモンスターが現れた時はハチの出番である。
彼女は俊敏な動きで鮮やかにモンスターを討伐してくれる。
ロボットの子機であるハチは、スピードに特化した代わりに攻撃力は親機に劣る。
それでも十分な破壊力を秘めていることに加え、モンスターの弱点をピンポイントで狙い打つことでカバーしていた。
総合的な性能は親機が上なのだが、まだまだハチの力に頼らなくてはいけないのが現状であった。
俺はリザードマンの死骸を亜空間に仕舞う。
その間、ハチは魔力を使った周辺の地形探知を行っていた。
数秒の探知を終えたハチは俺に報告する。
「マスター、この奥に迷宮の主がいます……ただ、その前に不審な反応を発見しました。魔物ではない存在がこちらに接近中です」
「魔物ではない……? 一体何なんだろう」
その時、前方の天井が轟音を立てて崩れた。
土煙と共に落下してきたのは、不気味なマスクで顔を隠した女だ。
ジャージ姿の女は、金色と紫色の髪を揺らし、手には血に染まった鉈を持っている。
(おかしい。このダンジョンは立ち入り禁止のはず……)
俺が警戒しながら相手を注視する。
女は手を振りながらこっちに走り寄ってきた。
「やっほー」
気の抜けた声を上げた次の瞬間、女は殺気を全開にして斬りかかってきた。




