彼女を狙う者はその守護のもとにひれ伏す
屋上の死闘は爆発の連続だった。
稗畑雲雀が高速で錐香に突進を仕掛け、錐香は空間移動でそれをかわしながら、爆弾を稗畑雲雀に投下する。稗畑雲雀に対する爆発による効果は薄く、加えて錐香がテレポートする先を読んでいるのか、単に彼女の能力のたまものか、空間移動した先から連続追撃を加えてくる。つまりは、猪苗代錐香の完全な劣勢状態だ。
残りの爆弾も少ない、このままじゃ。
屋上にびっしり転がっていた円筒形の爆弾にも、残骸が目立ち始めた。しかし、状態を立て直そうにも、稗畑雲雀は壁を突き破って追撃を仕掛け続けるだろう。言うならば、玉将を守るために大量の持ち駒を投下して行くが、すげての持ち駒をとりつくされるまで勝負は決まらず、持ち駒がなくなった瞬間にこちらの負けが決まるようなものだ。負けの決まったゲームほど虚しいものは無い。
アハッ、でもそんなのも面白い。
錐香は連続空間移動の合間に円筒形の爆弾を複数個拾い集め、それを空間移動させる。しかし、今までの様に爆破が目的ではない。
円筒形の物体が一定空間内に等間隔に出現した。高速で追撃を実行する稗畑雲雀を中心に、空間を切り開いて出現した複数の円筒形爆弾は、稗畑雲雀の肉体を貫き、引き裂き出現を果たす。高速で移動していた稗畑雲雀はその速度を保ちながら、血肉を撒き散らし運動する。運等エネルギーを全く持っていない円筒形爆弾から進行方向逆向きのベクトルを受けた稗畑雲雀は、大きく減速し病院の屋上に落ちた。
「アハハハハハッ、だから言ったの。空間移動を舐めるからこういうことに……」
「うふふ、だから言ったじゃない。あたし強いからって」
錐香は後ろを振り向くこともできない。後ろから聞こえるのは紛れもなく風紀委員の稗畑雲雀だ。しかし、その稗畑雲雀は今目の前で、破けた人形のように血まみれになって転がっている。
「さて問題です。どうしてこんなにも長い間この中央区にある病院の屋上で爆発を引き起こして、あたし以外の風紀委員が駆け付けなかったと思う?」
「あァ?そんなの……」
「あなたたちの仲間の中には『状況偽装』がいた。だから、この重要施設の密集する中央区の病院で何が起きようと、風紀委員がすぐに駆けつけることは無かった」
錐香は空間移動でその場を離れる。しかし、場所を変えても屋上に倒れた稗畑雲雀は確認できるが、錐香がもともといたところに誰かがいることは確認できない。それでも、後方より声は続く。
「あなたはあたしがここに入れたこと自体に疑問は抱かなかったの?状況偽装の彼が超能力発動前の状況までは操作できないにしても、あなたは意識が戻ってすぐの今日の明け方にはここへの襲撃の準備を完了していたはず。それまでにあたしみたいな風紀委員が中に紛れていないかくらい、病院の中央で病院全体の状況を読んでいた彼女が感知できなかった意味を」
「まさか……」
「やっと気付いた?あなたたちの襲撃事件は始まったその瞬間から、解決済みだったの」
錐香は勢いよく空間的に強固となった腕を振るう。空気を切り裂く腕は、何もない空間を切り裂く。直後に錐香の意識は断絶した。




