先輩はスカウトする
「実は特異的超能力対策係は人員が不足しててね、あたしを含めても3人しかいないの。そこで今回被害者の和哉君をスカウトしよっかなぁって、考えてたわけ」
「なんですかそれ!いきなり過ぎません!?」
うろたえる和哉に稗畑先輩は動じずに続ける。
「最近は件数も増えてきて、近いうちに大きな闘争が起こるって情報もあって、少しでもいいから人員が確保したいなぁって」
稗畑先輩は困ったような表情を作って、片目だけ開けて和哉に向けている。
「そんなの、風紀委員会の中で募集すればいいじゃないですか!一般人の俺に頼む話じゃぁないでしょう」
「風紀委員会の中ではあたしたちの係って、あんまり評判良くないんだよねぇ。なんて言うの、大した根拠もないオカルトに何金払ってんだ。的な感じ」
「あたりまえでしょう!さっきの話を聞く限り、まともじゃありませんよ!」
稗畑先輩はそんなことを言う和哉をしり目に、下敷きに挟んだ用紙とボールペンを取り出して。
「まぁまぁ、そんなこと言わずにここにサインを」
「え、ああ、すいません。って、何書かせようとしてるんですか!?お茶を勧めるみたいに勧誘しないでください」
下敷きボールペンセットを返された先輩は、何故かさらに口元を引き上げた。
「あ、そういえば、確かあの時に猪苗代錐香さんに似た人がいたような」
和哉はぴくっと肩を震わす。
「錐香さん様子がおかしかったなぁ。たぶん洗脳されてたなぁ」
またぴくっぴくっと肩がふるえる。
「まだ、上層部にはこのこと連絡してないんだよねぇ。あれ、和哉くんのお母さんて、どんな人だったっけなぁ。えぇっと、風紀委員会のぉ、上層部のぉ、風紀会長だったっけぇ?」
そう、俺の母さんは風紀委員会の風紀会長さんなのである。猪苗代和子、ランク4の超能力者で、『六角障壁』という空間移動を応用した空間的障壁を生み出す力を持つ。近年では、その能力から『風紀委員会の最後の砦』の異名を持つ。しかも、これが切れるとマジで怖くて、以前ある生徒に『ばばぁ』って言われただけで、街にクレーターができた。その少年はそれ以来、母さんに絶対服従らしい。
「一応、協力してあげようと思ってたんだけどなぁ。どうしよっかなぁ」
拒否権はすでになかった。




