先輩は式神を語る
「陰陽術は、古代中国の自然哲学や陰陽五行説を取り入れた日本独自の呪術のことなの」
稗畑先輩はふざけた表情で日本宗教を語り始めた。
「世界各地にも似たような呪術体系は多いんだけど、このほとんどが『超能力ではない力』ってわけ。でも、呪術には名前も無いようなものも多いから、必ずしも宗教と関わっていることもないかな」
この人は世界中のオカルトをすべて『超能力ではない力』としているのか?それもなんだか偏った見方のような気がするし、そもそも存在そのものも怪しい。
「和哉くんが遭った式神は、陰陽五行説をもとに式神そのものの五行的特性を変化させることですべての五行に対して優位になる術式が組んであったの」
先輩の宗教的専門用語のオンパレードに、文系科目最悪の和哉の頭の上には『?』がいくつも降り積もっていた。
「簡単に言えば、ゲームのキャラクターのタイプを自分に有利になるように好きに変化させられる式神だったみたいな感じ。分かる?だから火の式神には、金を模した電撃は効かなくて、ただの水でも大いに効いたのだけど」
和哉は心の中で、先輩の言うことは何も理解できないだろう、と思った。
「陰陽師は神や荒御霊などを式神に降ろして使役していることが多いのだけど、あれは五行が変化するただの自動人形みたいなもので、式神というより傀儡に近いのかな」
「分かりました。じゃぁ次に……」
「あの式神には日本古来の……」
「もういいです!」
和哉は話を続けようとした先輩の話を切った。
「えぇぇぇ~、これだけの説明じゃぁ、まだあの式神を理解したことには……」
「しなくていいです!次の質問です。先輩はどうして俺の質問に答えてくれるんですか?」
先輩のふざけた表情が、一瞬驚いたような顔になった。しかし、先輩はまたふざけたような表情に戻る。口元が大きく引き上げられるのを和哉は見た。
「ふぅぅん、やっぱり頭いいねぇ。国語12点が嘘みたいだよ」
「なんでそんなことを!?」
「だって、あたしは君をストーキングしてたから」
「え!?まさかあれってマジ!?」
先輩は、うふふ、と笑う。また冗談か。
「じゃぁ、本題に入ろっか」




