先輩は『超能力ではない力』を語る
「あたしが言う『超能力ではない力』というのは、超能力発動時の『暗黒物質影響力を持たない力』のことだよ。超能力の定義は、能力発動時に暗黒物質に影響していることだよね。言ってみれば、単に定義から外れている力だよ」
「でも例外もいましたよね。『暗黒物質』、あれは暗黒物質そのものを媒介とした超能力です。使い方によっては暗黒物質の変化をほぼゼロにして超能力を発動できたはずです。その『超能力ではない力』も計測できないだけで、実際は暗黒物質影響力を持っているのかもしれません」
「うんうん、よく勉強してるねぇ。さすが理系科目だけ数えたら学年トップの和哉君だ」
和哉は佐伯高校二学年の中では中の下くらいの学力を維持している。理系科目だけを見れば超最強なのだが、文系科目が超最悪なのでそんな感じなのだ。
「見方を変えてみよう。あらゆる超能力者は1つの超能力のみを行使するよね。その1つの力の使い方を変えることで能力の多様性を確保していることが多いんだけど、それでも使える力は1つに限られるよね。でも、奴らは1つの力のみを行使するとは限らない。奴らの使う力は世界の力なの」
「っは?」
和哉は、初めて稗畑先輩の話が意味不明な単語を述べたように思った。
「超能力者が自らの力を行使する者ならば、奴らは世界そのものの力を行使する者。超能力者が自らの1つの力を行使するのに対し、奴らは世界の多様な力を行使する。故に奴らの行使する力は1つとは限らない」
「……なんですかそれ?まるで漫画の中の設定ですね」
「そうかな?そんなこと言ったら、超能力だってそうじゃない?」
「根拠は?科学的根拠はあるんですか?」
和哉は物事を科学的に考える傾向がある。特に物理学は彼の得意とするところだ。
「ないよ」
「そんなの……」
「信じられない?科学なんて世界を見る一つの手段でしかないよ。科学ではこの世界のできた意味は分からない。誰にでも再現できることだけがこの世界のすべてではない。世界は多角的に見るべきだ。覚えておくといいよ」
さっきまでのふざけた稗畑先輩に哲学を語られようとは、俺もまだまだということか。
「まぁいいです。それで、あれは何だったって言うんですか?」
和哉が言う『あれ』とは、和哉と美月を襲った脚の短い機構や細い人影のことだ。
「あれは式神の一種なんだよ」
稗畑先輩は、またふざけた表情に戻る。
「式神って、あの陰陽師とかの式神ですか?」
和哉はさっきよりも、さらに呆れて信じられないというような顔をする。
「そう式神。中でも五行思想を模した式神で、この世界を構築する五行をもって五行を打つことを目的に術が組まれていたね」
「あの、真面目に言ってます?」
「真面目だよ。大真面目。あたしはそういうのを相手にするプロだから」
和哉は『はぁ』とため息をついて話の開始を促す。
「式神を使うのは君の言うとおり基本陰陽系だ。陰陽術は『超能力ではない力』を行使する中でも日本で生まれたものの代表的存在なんだよ」
和哉は自分の知らない世界のことを半信半疑どころか、無信全疑で聞いていた。




