先輩はその事件を語る
「あたしの名は稗畑雲雀、君と同じ佐伯高校の三年生。そして、風紀委員会特異的超能力対策係所属の風紀委員でもある」
稗畑先輩はさっきまでの不自然な笑みから一変、真剣な表情で自己紹介をした。
「特異的超能力対策係っていうのは、まだ知られていない超能力や超能力ともあやしい案件を扱うところなの。つまり、あたしは分からない敵を専門に扱う風紀委員ってわけ」
風紀委員会とは、言うところの警察のような組織である。この街の行政機関の中でも超能力者の人数が多い10代の求人がある珍しい組織で総数約6500人弱、その半数以上は10代の超能力者で構成されている。特にランク3以上の超能力者が重宝され、和哉の友人の赤野徹もランク3の風紀委員だ。
「で、『諏訪燃料発電』に『超能力ではない力』を使う人物が関わることを事前に察知したあたしは、諏訪美月を見張っていたってわけ」
と、稗畑先輩は簡単に言ってのける。しかし、和哉の頭の中には疑問と疑惑が大量に発生していた。
「質問イイですか?」
「いいよいいよ。じゃんじゃん質問しちゃって」
「まぁ、『超能力ではない力』は後で聞くとして、なんで襲われていた俺たちを助けなかったんですか?」
稗畑先輩が風紀委員として助けることができなかったことは、徹から言われて知っている。だがそれでは、見張っていたこととの明らかな矛盾がある。見張っていたが助けなかった。この中には助けること以外の理由があるはずだ。
「うんうん、そうだよねぇ。気になるよねぇ。実は風紀委員は『諏訪燃料発電』の案件を察知していながら、手を付けないように圧力を掛けられていたんだよねぇ。そこであたしは考えたわけ。この案件に『超能力ではない力』を使う人物が現れたら、この案件では関係なくそいつを捕まえればいいってね。それなら直接的には『諏訪燃料発電』に関わってないし、手柄も事件も万事解決で一件落着。ハッピーエンドってね」
「それで?」
「確かに『超能力ではない力』は見れたんだけど、肝心のそれを使う奴が見つからなくてね、手を出せなかったのよ」
つまり、『諏訪燃料発電』には手を付けずにそこに関係している『超能力ではない力』を使うという人物を捕まえるために美月を見張っていて、実際に『超能力ではない力』は見つけたのだが、肝心の『超能力ではない力』を使う人物を見つけることができず、何もすることができなかった。なので助けることもできなかった。
正しいようで妙な違和感を感じる。人間の行動なんてそんなもんなのか?
「あなたたちをすぐに助けなかったことは誤ります。申し訳ございません」
稗畑先輩は組んでいた足をほどいて深く頭を下げる。
「はぁ……、では次に、なんで風紀委員は『諏訪燃料発電』に手が出せなかったんですか?」
「それは分からないよ。上からの命令だもの」
「ですよね~。じゃぁ、その『超能力ではない力』についてでお願いします」
稗畑先輩はニッと笑って再び足を組む。
「よろしい。では、話しましょう。あなたが見た者の真実を」




