移動
エドが笑わない
あの買い物の日、エドが倒れてからずっと。
確かに、顔は笑っている。
だけど、心からっていう感じがしない。
でも、聞いてしまったらまた思い出してパニックになるかもしれない。
そう思うと、怖い。
「フォス」
「わあ!」
「どうした?そろそろ、お昼でお腹がすいた〜、っていう頃だと思っていたんだけど…」
「あ、ああ!そうだね。お昼ご飯にしようか!」
私たちは、今、フレレに向かって馬車で移動中。
移動初日の今日のお昼のご飯は、いつも通り少し豪華で、私の作ったお弁当である。
中身は、ご飯、ハンバーグ、たらこパスタ、枝豆ととうもろこしのバター炒め、ミニトマトである。そして!エドにはおまけで、干し芋がついている!
食べて元気を出しt「こちそうさま」
「あれ?もう食べ終わったの?」
「まあ、お腹空いてたしね」
「あ、干し芋は?食べきったの?」
「あ〜今はいいかな?」
まただ
エドは顔だけの笑顔をしている
エドのこの顔を見ると胸がキュってなる
そんな顔を見たくない、そんな顔をさせたくないって考えるけどエドの抱えているものがわからない私には何ができるのだろうか。
「フォス?手、止まっているけど?」
「あ!ごめんごめん早く食べちゃうね!」
そして私も、顔だけの笑顔をする
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私は、楽しんではいけない。
私が楽しむと、私が壊れてしまいそうになるからだ。
私が私であるために、私が私を押さえ込むために。
私は笑顔の仮面を被る。
私を隠す、仮面を被る。
私を鎮める為に
私を沈める為に
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2日目、私たちはミノウタロスに襲われたが、全て私が対処した
エドが出遅れたためである。
カタナの呼びかけがあったにも関わらず、エドは出遅れた。
その日の夜ご飯の時、私はエドに干し芋を渡したが「今はいいや」とあの顔で言われた。
そして、私たちが馬車の中で寝ている時、エドがうなされていた。
エドを起こして、大丈夫かを聞くと、「大丈夫だ」とまたあの顔で言われた
聞かなきゃいけない。ギルドでのあの電話のこと、買い物をしていた時に何が来たのかを。
でも、どうやって?
その後は、一睡もできなかった。
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暗いところにただ1人
私は私を鎖で縛る
暗いところでただ1人
私は私に暗示をかける
暗いところでただ1人
私は私に呑み込まれる
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3日目、フレレの城壁がぼんやりとだが見えてきた
おそらく、お昼過ぎには着くだろう。
エドは、ずっとぼんやりしたままだ。
話しかけようにも、どう切り出せばいいのやら……
「フォス、そろそろかい?」
エドが急に話しかけてきた。
「ふぇあ!?あ、うん。多分お昼過ぎには着くと思うよ」
「そう、じゃあついたら、宿をとるのかい?」
「先にギルドに顔を出すよ。一応ここにきたのはギルドを通しての依頼だから……挨拶くらいしておくよ」
エドがゲッ、って顔をする。
よかった、これは本当の顔だ
「まあ、なんとなくそうなるだろうな〜とはわかっていたからいいけどさ。なるべく早く終わらせてほしいものだ」
「そんな事言わないの。行くよ」
こうして私たちは、フレレの街の入り口へ向かった。
町の入り口にて
「うわ〜すごい人の列」
フレレの街の入り口には長蛇の列があった。
フレレの街は栄えているというが、ここまでとはね
「人……」
エドは相変わらず、人混みが苦手だ。
「じゃあ、並んで待っていよう」
そう言って、並んでいると。
「すみませ〜〜〜〜〜ん!」
1人の小柄なおじさんがこちらに向かって走ってきた。
「あの!はあ…はあ…あなたたちは!はあ…はあ…『ルプスルチス』のおふた方で!はあ…はあ…よろしいでしょうか!?」
「え?まあ…はい…そうですが?」
「ああ〜〜〜〜!お待ちしておりました!ささ、こちらへ」
「えっと、あなたは?」
「あ!私としたことが、申し遅れました!私はこの街の副ギルドマスターをしております。ドミカという者です。ささ、ギルドマスターがお待ちですぞ!」
そんなこんなで、副ギルドマスター特権で、入り口で待つ人たちの列を無視して、フレレの街の中に入って行った。




