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フトゥルム  作者: MG
始まりの刻 〜魔物〜
18/27

刹那

 物心着いた時から私は、病弱で、ずっとベッドの上にいた。

 ベッドの横にある窓からは、いつも子供たちが楽しそうに遊んでいた。

 私は、羨ましいとは思わなかった。

 なぜなら、これが日常だったからだ。


 ある日、窓から外を見ていると、1人の男の子が窓に寄ってきた。


 「ねえ、君。なんで外に出ないの?」


 私は、この時、何て答えればいいのかわからなかった。

 困った顔をした男の子が、


 「君は、桜っていう木を知ってる?」


 急に、そんなことを言ってきた。


 「知ってるよ。だって、私の名前、サクラだもん。でも、本物は見たことない」


 「え⁉︎そうなの?もったいないな〜。あのね、桜の木はね、すっごく綺麗な、君のほっぺたみたいなピンク色の花を咲かせるんだ〜」


 この時、初めて外に出ている子供達が羨ましいと思った。






 私には、お気に入りの絵本があった。

 題名はもう忘れてしまったが。話しかけてきた男の子、ファルススがくれた絵本だ。


 お話の内容は、世界をめぐる冒険者が、世界で一番綺麗な花を咲かせる、幻の木を見つける。というお話だ。


 この時から、私は、冒険者になりたいと夢見るようになった。






 少し成長して、体も少し強くなった頃、ファルススと、ヴェレナと一緒に外にいることが増えた。

 でも、まだ遠出はできず。桜の木を見にはいけなかった。


 その時、私は、強くなりたいと思っていた。

 だから、両親に我が儘を言った。

 「強くなるために、特訓をさせて」と

 もちろん両親は、体がまだ弱いから、長い間動けないよ。と言ってやめるように諭した。

 その時に私はこう言ったらしい

 「なら、全て一瞬で勝負がつくくらいに強くなる」と





 さらに数年後、特訓の成果は、実を結んでいた。

 この時、すでにファルススとヴェレナは研究所に行っていた。

 私には、武の才能があったらしい。

 剣  弓  槍  柔

 他にも、武器を持っても持たなくても、宣言通り、全て一瞬で勝敗を決めることができるまで成長していた。


 この時の二つ名は「瞬速のサクラ」だったそうだ。





 さらに時がたち、私は故郷を出て、バーシスの街に来た。

 夢だった冒険者になった。

 そこで、私の速度に磨きがかかった。

 短時間の戦闘しかできないが、全て完璧に獲物を仕留めることができる。

 Aランクに最も近いBランク

 「刹那のサクラ」

 これが私の冒険者としての評価だった。





 ある夜、依頼を終え、街に戻ろうとした時、なぜか、森に入っていった。

 危ないとわかっていた。だけど、森に入らなければならない気がしたからだ。

 そのまま、森の中を進むと、開けた場所に出た。そこで見たのは、



 月光に照らされた、満開の桜だった。



 私はこの時、初めて桜を見た。

 気づいたら、ボロボロと涙を流していた。

 空には、天の川が流れていた





 この次の日、私は冒険者を引退することにした。

 体が弱いのに、今まで無理に体を早く動かしていたから、ガタが来た。

 そんな理由だ。

 でも本当は、桜を見たときに、


 もう君は弱くない


 そう聞こえた気がしたからだ





 その後、私は冒険者ギルドのギルドマスターに抜擢された。

 なぜだかわからない。でも、期待に応えようとした。




 そして今、私のギルドマスターとしての最後の大仕事を任された。

 おそらく、この一撃で、私の体はいよいよダメになるだろう。

 だがしかし、これは、これだけはやらなければならない。



 やるよ、ファルスス

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